《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-19:小人の技

西ダンジョンの未踏エリアは獨特だった。

広場みたいな円形になっていて、天井は真ん中に向かってすぼまっていくお椀を伏せたような形。

壁は氷に覆われていた。り口は霜が下りているくらいの薄さだけど、奧にいけばいくほど、氷は分厚くなっていくみたいだ。

天井に目を向ける。

無數の文様が刻まれて、星のように瞬いている。本當の夜空みたいだ。

「……魔法陣ですね」

フェリクスさんが、唖然としていた。

3人分の白い息が天井へ消えていく。

「部屋全を魔法語(ルーン)が覆っています。意味までは判然としませんが……高度なことは間違いない」

金貨からロキの聲がする。

『僕は魔法が得意中の得意でねぇ。ボスのゴーレムも元々はダンジョンに備わった防機構。上のルーンは、ダンジョンを守る仕掛けさ』

こういうの、幻想的っていうんだろうか。

圧倒されながら、僕らは部屋を進んでいく。僕らの足音が、だだっ広い空間に響いていた。

々と大変な目にもあったけどねぇ……これを教えてくれた者達には謝してるよ』

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ロキが思い出すように呟いていた。

やがて向かい側の壁がうっすらと見えてくる。そこはり口よりも氷が大きく、天井の半分まで凍てついている。

氷の奧には、いくつも通路があったようだ。でも、どれも氷で塞がれている。

明な氷には、魔も一緒に閉じ込められていた。ゴーレムやオーク、それに魔法を使うタイプのゴブリン。みんなボス層へたどり著く前に見かけた魔達だった。

封印の氷に阻まれて、これ以上は先へ行けそうにない。

僕はコインへ問いかけた。

「……ここに、大事な何かがあるんですか?」

西ダンジョンに來たのは、次の目的地を決めるためだ。

確かにすごい空間だと思う。けど、今のところヒントになりそうなものはなかった。

こつん、と足に何かが當たった。

「古い武はあるけどな」

ミアさんが僕が蹴ったものを拾い上げる。鎧の一部だったみたいで、氷のを薄青く反していた。

同じような武が未踏エリアには散していて、當時もここが戦場だったことを教えてくれる。

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ロキが笑う。

『大丈夫さぁ。いざ、道を開こうっ』

その時、背後から不思議な音が聞こえた。

巖と巖がこすり合わされ、軋むような。

直後に悲鳴が響き、どすんと轟音。

『敵だな』

地面も揺れる。

トールの聲に、僕らは頷きあった。

「出ましょう!」

フェリクスさんの合図で、ボス層へ駆け戻る。

「ぐあっ!」

すれ違うように誰かが吹き飛ばされてくる。

その人は凍てついた壁に打ちつけられ、気を失ったようだ。頭からが流れ、持っていた槍は折れている。

フェリクスさんが唸った。

「スギン!」

一緒に潛ったの戦士団は、他に3人。みんな見張りを買って出て、さっきのエリアに殘っていたんだ。

戦闘エリアに戻ると、目を疑ってしまう景があった。

「ご、ゴーレム……?」

また、あの魔法生

両足が床を踏みしめ、右腕を垂らし、左腕はまだない。周囲から土を呼び込んで今まさにを構築している最中みたいだ。

ゴーレムが右腕を未踏エリアへかざす。

すると、金屬音が連鎖した。さっきの空間に散らばっていた武がゴーレムへ押し寄せる。

は太古の武を全に埋め込み、帯びる魔力を一気に強めた。

「オ、オ、オオオオ……!」

きともびともいえない、ゴーレムの聲。

いつの間にか完全な人型になっている。がっしりとした四肢に、武で鎧われた。頭は円筒形で、兜でも特に重厚な――グレートヘルムという種類によく似ていた。

目には青い炎。

がひりつく威圧は、明らかにさっきのアイアン・ゴーレムより格上だ。

「申し訳、ありません……!」

見張りの戦士団は、2人が倒されて、殘る1人は怪我人を庇っている。

自由に戦えるのは僕とミアさん、そしてフェリクスさんだけだろう。

「さがっていなさい」

フェリクスさんが指示する。

頭に神様の聲が響いた。

――――

ミスリル・ゴーレムが出現しました。

――――

ボス層に現れた、さらなるボスだ。

自分でも混しているのがわかる。ボス層に2目が現れるなんて聞いたことがない。

「……ゴーレムでも、上位だな」

ミアさんは鎖斧を構える。じゃらりと鎖が揺れた。

ベテランのこの人は、もう狀況の分析に移ってるんだ。

「リオン、落ち著きな」

「は、はいっ」

「よし。こいつはレベル30の冒険者が、パーティーで挑む相手だ。しかも、ただの魔じゃなさそうだ」

ミスリル・ゴーレムはこっちを見つめている。出方を伺っているようで、単純に突っ込んできたボスとは大違いだ。

「単なる魔ではない、というのは同意です」

フェリクスさんが引き取る。細い目をさらに細めて、敵を観察しているみたいだ。

「倒したボスが復活したようには見えない。気になるのは、さっきを作っていたように見えたことです」

僕は<狩神の加護>、『野生の心』を使う。

人間でいうとお腹の位置に真っ赤ながあった。さっきのゴーレムよりも斷然大きく、も強い。

あれがゴーレムの中樞部――核なのだろう。

フェリクスさんが言う。

「……『ゴーレム核』を、使われましたか」

こんな時だけど、不思議な単語が気になった。

ゴーレムへ短剣を向けたまま、僕はフェリクスさんへ問いかける。

「あの、それは? 普通の『核』とは違うんですか?」

「迷宮で産出するレアアイテムのことです。ゴーレムの核そのもので、灰にならずに回収された場合は、その名の通りゴーレムを作ることができます。もちろん魔法使いの技量が必要ですが」

ゴーレムはゆっくりと腰を落とす。

人間でいえば油斷なく構えた姿勢ってところだ。迂闊な接近は、命取り。

「ええと……さっきのアイアン・ゴーレムのような存在を、人が作れるってこと?」

「はい。そのアイテムを使えばね」

ごくっとが鳴った。

でも、納得もする。魔法は現代でもあるし、魔法でく魔なら、確かに今でも再現できるのかもしれない。

「核を起すると、周りの質がゴーレムを作り始めます。巖や土、あるいは武の鉄板を寄せ集めて、即席の魔法生を作るわけですね」

頭に浮かんだのは、子どもが作るような泥人形だ。

目の前にいるゴーレムは、周りにあったもので作られた人形ってことなのかな。

ただその材料が、迷宮の土や巖だけじゃなくて、太古の武であっただけで。

「逆に言えば、『ゴーレム核』さえあればどこでもゴーレムを生可能ということです」

フェリクスさんの言葉が確かなら、急に出てきたのもわかる。

金貨が震えて神様の聲がやってきた。

ウルとシグリスが話している。

『……小人の技に似ているね』

『似ている、ではなくそのものでしょう。彼等の作品が発掘されているのですね』

小人……? 神話時代にいたっていう、他の種族のことだろうか。

フェリクスさんは頭を振る。

「……だが、なぜここにっ」

「さてね!」

鎖斧を回すミアさんは抜群にシンプルな考えだった。

「ばらして調べればわかるかもよ?」

『はっは! 俺もミアに賛だ!』

トールも雷鳴みたいな笑い聲。

ゴーレムの一歩が地面を揺らす。振り上げられた拳に、僕らみんなは散開した。

「避けろっ」

ミアさんがぶ。

ソラーナが太みたいに元気づけてくれた。

『大丈夫だ! 君達は、負けない!』

スキルを発した。問答無用で『黃金の炎』。

「っ」

踏み潰そうとする足は、まるで柱だ。

くぐって回り込むのに中が冷や汗を流す。

これだけ重量がある相手だと、風霊は効果が薄い。なら――!

「みんなで一斉にやりましょう! 核は、腹部です!」

フェリクスさんが頭に炎魔法。ミアさんが斧で足を打つ。僕は、核がある部分を切りつけた。

同じタイミングの攻撃は、衝撃だけでも大きいはずだ。3つの部位を襲った衝撃に、ゴーレムのがぐらりと揺らぐ。

「みんな、離れてっ!」

――――

<スキル:雷神の加護>を使用しました。

『雷神の鎚』……強い電撃を放つ。

――――

ダメ押しの一撃。

トールのスキルを使って、僕は電撃をにたたきつける。

落雷が相手の中樞まで穿つように。

『金屬に、雷かっ! ふふ、考えたな』

ソラーナの聲が聞こえる。

でも僕が地面に降りても、ゴーレムは立ったままだった。一瞬だけ揺らいだ目のも、すぐ元通りになる。

「ヴ、ヴオオ」

振り下ろされる拳。

仲間のところへ飛び退きながら、僕は聲をあげてしまった。

「効いてないっ!?」

「……ミスリル、なるほど」

フェリクスさんは口を歪める。

「ミスリルには対魔法効果があります。つまりは、魔力による攻撃が効きにくい」

ミスリル・ゴーレムはさっきの攻撃をものともしていない。唯一、ミアさんの攻撃で足がし欠けていたけれど、きに支障はないみたいだ。

「よく見てください。全が薄くっているでしょう」

「本當だ……」

「あれが、いわば魔力による攻撃を防ぐ、鎧です」

握った短剣を見下ろす。

<雷神の加護>は、オークでさえ一撃で倒せてしまう攻撃だ。威力は、フェリクスさんが使う魔法と比べてさえ、大きな違いはないと思う。

それでも通用しないっていうなら――。

「普通の、攻撃じゃ、ダメって、こと……?」

し息がれている。すでに何度も神様のスキルを使ってボス層へやってきた。もしこんなところで倒れたら、最悪は……全滅してしまうかもしれない。

『俺がいくか? 封印解除すれば暴れてやろう』

トールの言葉。首を振るのが、今の答えだ。

切り札だけど、それを切るのはまだ早い。

「ステータス!」

頭に浮かぶ僕のスキル。

1つで足りないなら、力を合わせればいい。

能力『二枚舌』の組み合わせなら、ゴーレムの鎧を貫けるものがきっとある!

――――

リオン 14歳 男

レベル19

スキル <目覚まし>

『起床』 ……眠っている人をすっきりと目覚めさせる。

『封印解除』……いかなる眠りも解除する。

[+] 封印を鑑定可能。

スキル <太の加護>

『白い炎』 ……回復。太の加護は呪いも祓う。

『黃金の炎』……能力の向上。時間限定で、さらなる効果。

『太の娘の剣』……武に太の娘を宿らせる。

スキル <雷神の加護>

『雷神の鎚』……強い電撃を放つ。

スキル <狩神の加護>

『野生の心』……探知。魔力消費で、さらなる効果。

スキル <薬神の加護>

『ヴァルキュリアの匙』……回復。魔力消費で、範囲拡大。

『シグリスの槍』……遠隔補助。魔法を宿す投げ槍。

スキル <魔神の加護>

『二枚舌』……2つの加護を組み合わせて使うことができる。

――――

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