《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-20:雷の槍

神様からいただいた、いくつものスキル。

組み合わせられるのは二種類だけ。でも相がよければ、互いの効果を強めあい、とんでもない力を発揮する。

それがロキの<魔神の加護>がもたらした能力『二枚舌』なんだ。

「ヴォオオ!」

ミスリル・ゴーレムの咆哮。

鎖斧のうなり。魔法の炎。

「リオン、何か考えがあるみたいだなっ」

応戦しながら、ミアさんが聲を張ってくれた。

「やってみな! しぐらいなら、壁になってやれるよっ」

にっと力強い笑みは、僕の背中をバシッと叩いてくれたみたい。

勇気が沸き上がる。フェリクスさんも微笑みを浮かべて、そんなミアさんのカバーにってくれた。

これが、パーティー……か。

「シグリス……新しい能力があったよね?」

閃きが、生まれかける。

ミスリル・ゴーレムが目のを僕へ向けた。

「うわっ」

危険を察知されたんだ。

距離をとる。れ違いにミアさんがまた前衛を引きけてはくれるけど、長くは任せられない。

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魔法を弱める障壁があるから、フェリクスさんの炎も効果が薄い。このままだとミアさんの負擔が大きすぎる。

『……シグリスの槍、ですか?』

「う、うん! あれ、魔法の効果を遠くまで屆けられるんだよね?」

『はい。回復効果や、スピード上昇などの補助効果を、投げ槍に載せて遠くの信徒へ屆けるのです』

空にいる神様が、遠くの信徒を守るための力だったのかもしれない。

「もし、『槍』としても使えるなら――」

僕が話した作戦に、神様はみんな驚いていた。

いっそ驚愕した、っていう反応が近いかもしれない。

『ほ、補助用だって言いましたよね!? た、確かに槍は槍ですけど……』

シグリスが特に聲をあげている。

ロキとトールは冷靜だった。

『可能だねぇ。それをできるようにするのが「二枚舌」だ。トールはどう……?』

『……前に出て、戦っている戦士はリオンだ。戦士が言うなら異論はねぇ』

決まりだ。

僕は仲間に聲を張った。

「ミアさん、フェリクスさん!」

ゴーレムが巖を放り投げてくる。橫に転がりながら、僕はんだ。

「ゴーレムのき、止められますかっ?」

「策があるのですか?」

「はい!」

ゴーレムが攻撃を本格化させる。丸太みたいな指で僕に無數の巖を投じてくる。

當たれば背骨が折れるだろう。

必死に避けるけれど、土煙で一瞬、方向を失う。

それでも聲を出し続けた。

「ごほっ……きを止めるだけでいいんです! 大きな一撃を狙います!」

土煙に、赤い

探知しなければ死んでいた。手を組み合わせての叩きつけが、地面にめり込んだんだから。

「うっ!?」

飛び退いても砕けた巖が飛んでくる。いくつかの小石が頬を切った。

ルゥの手甲がなければ、顔を庇った腕もボロボロだった。

ゴーレムの聲が空気を震わせる。

「フォ……フォフォ……」

まるで笑いだ。歪な巨が無力な僕らを嘲っている。

父さんからはのない魔法生って教わった。こんなゴーレム、本當にいるんだろうか……?

「リオン、逃げな!」

ミアさんの鎖斧がゴーレムの右腕をからめとる。

「でかい一撃だってっ? 言うじゃないか」

<斧士>の能力『不』だ。その場で踏ん張るというシンプルな効果だけど、鎖斧と組み合わせれば、相手を拘束する技になる。

ゴーレムも簡単にはけない。

「オオオォ!」

「へっ、なら放してやるよ」

ゴーレムがさらに力を込めたところで、ミアさんはスキルを解いた。踏ん張りすぎていたゴーレムが、バランスを崩して膝をつく。

すぐに立て直してくるけれど、3人で集まる隙には十分だった。

作戦を告げる僕に、仲間は顔を見合わせる。

「――だそうですが。ミア、どうですか?」

「こっちは余裕。あんたこそ、足引っ張るなよ戦士団」

そう言いあってから、2人は僕へほほ笑んだ。

「了解だ」

「こちらもです」

ミアさんが前衛、フェリクスさんが後衛。

僕の攻撃が通ると信じて、仲間がトドメを預けてくれた。

「オオオオ……!」

唸りをあげるミスリル・ゴーレムを、僕らは睨み返す。

一瞬の直だ。

破ったのは、奔る鎖だった。

「投擲はこっちも得意なんだよっ」

鎖斧が舞い、ゴーレムの頭に絡みつく。振りほどこうとした手をフェリクスさんの炎が襲った。

「頭を下ろしな!」

ギシッ。

鎖が軋む音がエリア全に響き渡る。ミアさんはもう一度、『不』で相手を押さえこもうとしているようだ。

ゴーレムのびで地面が揺れる。目に宿ったが猛烈に輝き、魔力を総員しているのがわかった。

「ヴォオオオオ!!」

「ちょ、ちょっと無理か……?」

ミアさんの聲が震えたところで、魔法が割り込む。

「土葬(グラフト)」

ミスリル・ゴーレムの足元で床が崩れた。

が膝まで土に沈み込む。フェリクスさんが顎をなでると、ミアさんは笑いかけた。

「……やるじゃないか」

「あなたもね」

ゴーレムは両腕を使って這い上がろうとしていた。魔法への耐なのかそれとも宿した力の強さなのか、だんだんと全が抜け出てくる。

「……ゴーレムは、直立した時に最も効率よく全を守れるように裝甲されています。つまり、腰を曲げた狀態では……!」

フェリクスさんの小冠(コロネット)がきらりとした。

ゴーレムのを守るのは、太古の武による鎧。未踏エリアから取り込まれたものだけど、を前に曲げているせいで背中側に隙間ができていた。

狙える、今なら。

「いきますっ!」

――――

『シグリスの槍』……遠隔補助。魔法効果を槍にのせ、屆ける。

――――

それは補助のための力。たとえば『白い炎』のような回復効果を、投げ槍にこめて遠くへ屆ける。

――本來なら。

『古代、シグリスの仲間、ヴァルキュリアたちはそれぞれの能力を持っていました。この槍もその一つ。魔法効果を遠くの戦士へ屆けるものですが……』

今の僕には、神様同士の力を組み合わせることができる。

――――

<スキル:雷神の加護>を使用しました。

『雷神の鎚』……強い電撃を放つ。

――――

頭がくらくらする。

本來は補助魔法をこめるところに、雷をこめる。

雷撃が充填された槍だ。

<魔神の加護>の真骨頂、加護と加護との融合。

ミスリル・ゴーレムは今にもから出てきそうだ。もう時間はない。

『……いいか? これがダメなら、今度こそ、絶対に俺を封印解除しろよ。神に頼るのは恥じゃない』

トールが念押し。

ソラーナが勵ます。

『いや、君ならやれる。焦らず、正確に、しかして勇気をもって、だ!』

槍を、投じた。

「やぁ!」

ミスリル・ゴーレムに向かって槍が突き進む。『黃金の炎』による能力向上もあって、槍は鎧の間、らかい部分に突き刺さった。

ミアさんが斧を解くと、ゴーレムは両腕をついて倒れる。

「ヴオオ!」

魔法を遠くに屆けるための『シグリスの槍』。

ミスリル・ゴーレムの魔法障壁を突き抜けて、切っ先が核の近くに屆いているはずだ。

でも終わりじゃない。

槍に宿っているのは、トールの雷。

雷は刺さった槍を伝って、もう弾かれることはなく、ゴーレムの中樞へと送り込まれた。四肢から雷が迸り、ゴーレムは黒煙をふいた。

『はは、まるでチ(・)ュ(・)ウ(・)シ(・)ャ(・)だねぇ! ヴァルキュリアよっ』

『……私の槍、こんな使い方した人、初めてです』

ロキが笑う。

自分でやっておいてなんだけど、すごい効果だ……。

「ヴオ、オオオ……!」

土でできたが崩れ、取り込んでいた武も弾けるように散らばっていく。

「オオ……!」

下半はもう崩壊している。

ゴーレムは腳部を置き去りにして、上半だけで僕の方へ這ってきた。

ばした手が震えているのは、怒りなのかもしれない。頭にある青いは明滅しながらも、僕の方を、いや――

「金貨を、見てる……?」

そんな気がする。

古代の巨人が、神々に屆かぬ手をばしているような。

『……この気配』

ソラーナの聲がした瞬間、ゴーレムは完全に停止した。上半も崩れて、巖と土の塊へと戻る。

むき出しになった赤黒いオーブは、もう力を失っているようだった。

靜まり返ったボス層。

呼吸を落ち著けて、僕は口を開いた。

「勝ちましたね」

「ええ! お見事ですっ」

フェリクスさんが肩をすくめ、ミアさんと手を打ち合わせる。

ぱんっと爽やかな音が鳴った。

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