《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-24:悪者の影……?

城壁が夕焼けに染まっている。

その外側の賑わいに、僕は圧倒されてしまった。

アルヴィースへ向かう途中地點の街、カルマル。

壁の外にある店の群れ――『城外市』は、確かにもう一つの街だった。

ずらりと並んだ出店。あちこちから味しそうな匂いがやってくる。や魚が焼ける音に、旅で疲れたが一斉に食を思い出したみたい。

目移りしてしまう。

前を歩くミアさんが振り向いた。

「こっちだよ」

迷子になったら大変だ。人込みをすり抜け、ミアさんのフードを追いかける。

カルマルに到著した後、僕達は広場に馬車を停めた。今はフェリクスさん達を見張りに殘して、しだけ外を歩いている。

「ええと……」

周りをキョロキョロしてしまう。

一応、こっそりとアルヴィースに行くわけで。目立つ行は控えるようにフェリクスさんに言われていた。

でも、好奇心がうずうずしてる。

フードを被っているのを免罪符に、僕はカルマルの城外市を探索した。

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「みんな、壁にらないんですね。もう夜になるのに……」

王都の朝市と大差ない。今は夕方だけど。

ミアさんは慣れた足取りで雑踏をすり抜けていく。

「ま、それが城外市だからな」

出來合いのスープやパンを買って帰れば、夕食の準備は不要になる。旅立ち前の消耗品だって、出発を前にした人なら割高だって手がびる。

ここでお店を出しているのは、そういうチャンスに目ざとい人ばかり。

ミアさんは燻製(ベーコン)の串とか、りのパンとか、オススメ品を次々に買った。

店決めも、値段渉も、全部早い。

「…………か、完全に買い食いですよね?」

「おっと、あんたもどうだい? ここのはうまいぞ」

ミアさんから串を渡された。

貓みたいに笑ってて、きっと口止めも兼ねている。

「初めての旅が、ずっと馬車に缶詰なんて嫌だろ?」

塩のきいたおの匂い。

ミアさん、僕を元気づけようとしてくれてるのかな。

僕は先輩冒険者の好意に甘えてしまった。アルヴィースはまだずっと先だし、張するのは早いかもしれない。

「あ、おいし……」

団子が口でほろほろと解れる。

塩気の後に、ちょっと爽やかな風味がやって來る。果が刻んであるのかも。

たちまち一串食べてから、ぐしっと口元をぬぐった。

「わっ……」

風がやって來て、フードが外れてしまう。

川が近いと風も強いのかな?

慌てて被り直して、ミアさんを追った。

「で、でも、魔とかみんな心配じゃないんですか?」

「そりゃ……」

ミアさんは足をとめて、納得した顔をした。

「そうか。あんたは王都から出たことがなかったな」

「はい……」

「王都とカルマルの間じゃ、魔が出たなんて聞かないね。そうじゃなきゃ、外で畑とかできないだろ?」

「それは……」

それもそうか。

野盜も心配だけど、こんな冒険者だらけの街を襲うようなこともないんだろう。

だから壁の外側でも意外と安全なのかも。

「それと、覚悟だね」

「……危険は、承知ってこと?」

「ああ。馬車が大勢通るなら、壁の中より外の方が稼げる。そういうリスク承知の連中が、ここに店を出したり、代々住んだりするんだよ」

ミアさんは肩をすくめた。

「あとは……なんだかんだで、オーディス神の封印をみんな信用してるのさ。1000年この國はそうやって守られたんだから」

歪んだ口元はきっとこう言っているんだろうか。

あたしらは例外だね――なんて。

「そう……ですね」

実際、僕も父さんがいる間は迷宮の仕組みとか、魔の危険とか、自分で考えなかった気がする。

オーディス様なら大丈夫、なんて信じきっていたんだ。

その時、僕はの右側に気配をじた。能力『野生の心』によるものかもしれない。

僕に近づくような不自然な足音と、荒い呼吸。

「っ」

的に、ばされた手を摑んでいた。

相手はぎょっとしたみたい。

「なんだお前――」

凄んでくるけれど、手は離さない。

さすがに僕でもわかる。

これは、スリだ。

背丈は僕よりもし高いくらいで、大人にしては小柄だ。だけど目つきは鋭くて、鼻の頭に傷がある。

「放せ……」

右手は明らかに、僕のポケットにびようとしていた。

神様の金貨がった、上著の右ポケットへと。

お腹に力をこめて、睨み返す。

「なんのご用ですか」

「ちっ」

手を払われた時に、コインケースと上著を結んでいる紐をひっかけてしまった。

ケースがポケットから飛び出て、慌ててキャッチする。になっている金貨が、夕日を浴びて輝いた。

男の目が金貨に見開かれる。

……しまった。王都の貧しい區畫にも、こういう目をした人はいた。

「おい、あんた!」

ミアさんが近寄ってきた。

男はをひるがえして舌打ちする。

「まったく、ダセェ紐なんてつけやがって……!」

頬がかっとなる。

「待てっ」

夕暮れの人混みに、すぐにその男は紛れてしまった。

神様の能力『野生の心』を使えば、荒々しい足音が遠ざかっていくのがわかる。

でもその音は急に小さくなった。

「今の人……」

多分、スキル<盜賊>や<斥候>を持っているんだと思う。

を隠す技があるっていうから。

「……油斷したな。大丈夫かい?」

「はい……」

「すまないね。買い出しくらいならと思ったんだが、余計なトラブルに巻き込んじまった」

眉を上げたり下げたりするミアさんに、僕は首を振った。

王都でもどこでもスリはあるし、さすがにここまで予知するのはミアさんだって難しいと思う。

ふと、父さんが言っていたことを思い出した。

――冒険者は旅を思い切り味わう。

それは『出會いを大切にする』という意味もあるけど、警告でもある。

旅では、どんな出來事があるかわからない。

だから些細なことも味わう――よく噛んで、噛みしめて、味する必要があるんだ。

「……まさか、ね」

微かな騒ぎと違和があった。

あの人、僕に真っ直ぐ向かってきたような気がする。

まるであらかじめターゲットを決めていたみたいに。

僕はしずれたフードを直す。言い爭ったせいか、ちょっと髪が見えてしまっていた。

「……戻りましょう」

「だな。フェリクスには、きっちり知らせておくよ」

見上げる城壁は、さっきよりも長く深い影をばしていた。

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