《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-27:弱さと強さ

年の言葉で、スキルの効果が発揮された。

――目覚ましっ!

目に見えない力が、世界を覆う封印に抗う。

リオンに封印解除された神々は、それぞれの能力で狀況を正確に認識した。

雷神の戦略眼で、魔神の察で、狩神の知で、戦乙の共で。

最も避けるべきはパニック。広場の後ろには城外市があり、住民が城壁に殺到すれば事故で無用な死者が出かねない。夜というのも尚悪い。闇は恐怖を煽るから。

王都の東ダンジョンのこともあり、魔の來襲という想像は簡単に住民を恐慌させるだろう。

「僕がやろう」

特に示し合わせることもなく、魔神ロキがまずいた。

「夢を守る霧よ《ルーナ・エオルフ・ラグ》――」

ゴーレムの軍勢と広場を隔てるように、闇の霧が立ち込めた。

ゴーレム達と僕らの間を塞ぐように、真っ暗な霧が生み出された。まるで黒いカーテンをさっとひいたみたいだ。

頭に神様の聲が響く。

「リオン」

「ロキ……?」

「とりあえず、ゴーレムの姿は霧で隠した」

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の戦士団も辺りを見回している。神様の聲を聞くのに、慣れていないんだろう。

すでに広場は騒がしい。冒険者が騒ぎを聞き付けてじっとしているはずがない。

「加勢はありがたいが、人目があると今度は俺らがきにくいのでな」

トールの聲だ。

狩神ウルが引き取る。

「……というわけで、戦士団。しばらく、霧の外で加勢を足止めしてほしい」

戦士団がどよめいた。

「そ、それは……!」

「心配ない。時間は5分ほどでいい」

トールが頼もしく切り上げて、それでもう聲はしなくなった。

霧からは何も聞こえない。『野生の心』や『黃金の炎』をもってしても、戦いの気配、臭いさえ遮斷されている。

神様は、人知れずにゴーレム達と決著をつけてしまうつもりなんだ。

フェリクスさんが眉間に皺を寄せ、額の小冠(コロネット)を押さえた。

「戦闘で使えるようなゴーレムは、生産も、売買も厳しく管理されているはず。なぜ、短期間でこんなに……」

広場から冒険者が次々にやってきた。

「おいどうなったんだ!?」

「霧で、見えないが……」

「魔が出たのかっ?」

冒険者の多くは戦いが起きていることさえ気づいていない。

カルマルという街に決してパニックを起こさせない――トール達はそんなつもりなのだろう。

「……神様」

自然と背筋がびる。

「ぼ、僕も行きますっ」

ミアさんがにっと口を引き上げ、フェリクスさんは後ろに聲を張った。

「後は頼みます」

「こ、この狀況で……!?」

「足止めなど、どのように……」

「落ち著きなさい。魔法の失敗、積み荷のトラブル、偽裝に使える材料は十分のはず。さぁ!」

フェリクスさんを待って、僕達は霧へ飛び込んだ。

「っ」

霧が濃い。一歩進むだけで、方向覚を失ってしまいそう。

「リオン!」

ソラーナはもう小さな人形サイズではなくて、僕と同じくらいの、の子のサイズだった。

白い手が僕の腕を握る。

「こっちだ!」

「……うん!」

ソラーナが僕を導く。

みんな一緒に霧を抜け出すと、神話の世界だった。

空中で金槌を振り上げるトール。赤髪がなびき、短柄のハンマーには雷が駆け回っている。

対するは、両腕を差させ構えるゴーレム。

トールも巨だけど、ゴーレムはさらにその2倍はあった。

「はぁっ!」

鎚がゴーレムの腕にめり込んだ。

腕が砕け、上半が吹き飛ぶ。

崩れるゴーレムを踏みつけて、巨神は次の獲を狙う。

「オオ、オオ……!」

唸りながらゴーレムは拳を繰り出す。トールが左手で払うと、拳は腕ごと弾かれた。衝撃に膝をつくゴーレム、トールはその頭を摑んで引き上げる。

手で雷が弾けた。

ゴーレムは全から煙をあげ、瓦礫の山に戻る。

「……すごい」

まるで人の形をした雷雲だ。

攻撃の余波に足がすくむ。瓦礫が飛んでくるのを、ソラーナが魔力の防壁で防いでくれた。

巨神の笑いが聞こえる。

「はっはっは」

トールは鎚を投擲した。

離れた位置にいたゴーレムが、數まとめて吹き飛んだ。鎖でもついているみたいに、鉄槌はトールの手に戻る。

「……まるで渦だな」

ミアさんが舌をまいていた。

「魔神ロキが霧で囲って、多分、ウル神が真ん中にゴーレムを追い詰めている」

その中心にはトールがいて、近づく傍からゴーレムを打ち砕く。なるほど、確かに渦だ。

これ、もしかして僕らは必要ないんだろうか。

全部を神様に任せて――なんてつい弱気になってしまう自分を、首をふって叱る。

『共闘』って、言ってくれたじゃないか。

「ウォオ……!」

衝撃に弾き飛ばされていたゴーレムが起き上がった。

僕は頭に飛び付き、核を狙う。

「こっちは任せてください!」

トールはしの間だけ、きを止めた。2メートル近い巨。金槌を右手に提げて言った。

「……ああ、ありがとうよ。お前はやっぱり、でっかいやつだな」

神様のが赤くった。僕のにも同じが宿るけど、それは一瞬で、すぐに消える。

「共闘か」

ソラーナがぽつりと言う。

神様は僕らを飛んでくる瓦礫から守りながら、続けた。誰かがしでも手傷を負うと、シグリスがたちまち治してくれる。

「トールもあれで……し変わったかもしれない」

神様の聲はし嬉しそうだった。

ちょっと変に思う。神様が、変わった?

「最強神とも呼ばれ、頼られることも多かった。個々が強いゆえに、神々が力を合わせることは滅多になかったのだ」

新手のゴーレムが現れる。でもすでに傷ついていて、核がむき出しだった。

僕は注意を引くだけにして、ミアさんの鎖斧に対処を任せる。

「終末では、そこを突かれたように思う。神々も決して結束してはいなかった。強さゆえに、弱さを見せられない弱さがあったというのかな」

し不思議なソラーナの理屈は、僕のにすっと染み込んだ。

「リオン、君と出會って……わたし達も変わったのかもしれない」

トールが飛び上がる。

最後の一に、凄まじい落雷が叩き込まれた。

ゴーレムの軍勢は壊滅だ。宣言通り5分もかかっていない。

戦神が雄たけびをあげている。

これが、雷神トール……。

自分よりも大きな敵に、ハンマーで立ち向かう、頼れる神様なんだ。

その強さに、僕は改めてとんでもないものを<目覚まし>してるってことを思い知らされた。

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