《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-29:小人の鍛冶屋サフィ

夜の鐘が鳴っていた。僕達は広場に馬車と見張りを殘し、こっそり城壁の中にれてもらった。

ゴーレムの存在は隠しきったけど、代わりに魔法実験をした不屆き者がいることになっている。だから目撃者や、どうしても不安な人は城壁にれてもらえた。

今は、オーディス神殿の一室を借りて、し休ませてもらっている。

街道に點々とあるオーディス神殿には、の戦士団に協力する人がいて、こういう時に助けてくれるみたいなんだ。

冷たい椅子にじろぎしながら、眠気を飛ばすというお茶を飲む。まだまだ意識を落とすわけには、いかないから。

鐘の音。日付が変わる。

1つ、2つ、と數えていると、フェリクスさんが部屋にってきた。

「ゴーレム核を運んでいた冒険者は、全員捕らえました」

僕はミアさんと視線をわしあった。

丸い機と、椅子が4つあるだけの小さな部屋。

そこにいる人(・)間(・)は、フェリクスさんとミアさん、そして僕だけだ。

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『他の種族』を含めれば話は違ってくるのだけど。

「荷馬車の出発地は、やはりアルヴィース。西ダンジョンにあったゴーレム核も、出どころはそこかもしれません」

そこでフェリクスさんは話を切った。

チラ、チラ、と視線がテーブルに落ちる。正確には、ちょこんと腰かけている、とてもとても小さな姿に。

「……ふぁあ」

その存在は、見せつけるように大あくびした。

くりっとした目は黒目がちで、パチパチと何度も瞬きする。高めに結った緑髪は左右にアーチを描いていた。

馬車で『封印解除』した、黒小人のの子だ。

「ねぇまだ? そろそろこっちも眠くなってきたんだけど」

背は小さい。

子――そんな言葉を思ってしまうほど。

「な、なによ」

見つめていると、その子はを尖らせた。

ハリモグラみたいにツンツンしてる。

「言っとくけど、馬車に乗ってたのは不可抗力よ? ていうかここどこなの? やたら寒いし目覚めたらなんか大バトルになってるし! あ、も1つ言っとくけど、あのゴーレムあたしと関係ないからね!」

ドバー、とバケツをひっくり返したみたいに言葉が溢れてきた。

僕らは目が點になったと思う。

フェリクスさんも椅子を引いて座ったけれど、何から聞くべきか判じかねているみたいだ。

「ええと……」

見れば見るほど不思議なだった。

立っている時、頭はフェリクスさんのベルトよりも低い。僕と比べても、お腹の辺りまでしか長がないんだ。

でも、チュニックの上には鍛冶屋さんみたいなエプロンをつけている。肩にかけているバッグは、ずっしりと重そうだ。

小さなに、力仕事に向いた裝備。

これが――黒小人(ドヴェルグ)?

「確認したいんです。僕達は、アルヴィース、いえ――アールヴヘイムへ向かっていました」

ごほん、と僕は大げさに咳払いしてみた。をジロジロ見るなんて、さすがに失禮だもの。

「僕はリオンといいます。こっちは、フェリクスさんと、ミアさん。何度も見てすみません。あなたは黒小人だと思うのですけど、初めてなので……本當か確認したかったんです」

冒険者として學んだこと。

話し合いはまず前提の確認から。

黒小人のは口を曲げた。辺りを眺めまわして、最後に僕の手に視線を落とす。

「いい籠手ね」

ルゥが作ってくれたものだ。

「ど、どうも……」

「でもの白いアーマーはフツウね。魔法防の染めなんでしょうけど、なんか配合がイマイチ。アタシなら同じ重さと値段で甲作る。コカトリスの革を丁寧になめしてあるのはお見事だけど、手間に見合うとはいえないわ」

の子は次々に話し始めた。

「そこの斧の人。最近は固いもの叩いてばかりでしょ」

ミアさんが眉を上げた。

にっと小人のの子は笑う。

「そろそろ斧の強度に力が勝るわ。アタシならもっと剛くて粘りがある鋼にしてあげる。安心なさい、噂みたいに怖い代償とかないから。んで、あなたは――魔法使いかぁ。鉄の武持ってないの?」

一気に語って、黒小人は長く息をはいた。

「あ~、幸せ。ようやく落ち著いて、武見れたわぁ……!」

おさげを左右に振ってから、その子は腕組みする。

「喜びなさい! 鍛冶屋を求めて來たのなら、まさにアタシが黒小人よ! 名前はサフィ!」

ふん、と小さなで椅子の上に立つ。

それでやっと、僕らよりも頭の位置がちょっとだけ高くなった。

「アールヴヘイムの、十鍛冶のうちが1人!」

堂々とを張って、うんうん頷いている。

「いやー、なるほどね。アールヴヘイムに來たのか。そうやって、鍛冶屋を求めて來る人間って多いのよねぇ。そうならそうと早く言ってくれればいいのに!」

黒小人――サフィさんは安心したみたいだ。

もしかしたら、ここがアールヴヘイムの近くだって思っているのかもしれない。実際は、アルヴィースまで馬車でまだ4日かかる位置なのだけど。

サフィさんは首を傾げる。

「あれ、でもあなた達……神様がいなかった? い、いや、まさかよねぇ……」

ポケットで金貨が震える。

『リオン、わたしからも事を話そう』

「うん……」

たぶん、この人にはいろいろなことを話さなければいけない。

「……なによ、急に黙って」

僕は革で作られたコインケースを機に置く。サフィさんが目を細めた。

「いい小ね」

を見つけたみたいに、サフィさんは座り直した。

「一番かも。デザインは不思議だけど――使う人のことを考えて、長持ちするように作られてる。気持ちがこもってる、いい道だわ」

が溫かくなった。

小人の証がもしあるのだとしたら、この道への思いれなのかもしれない。

スキルを起き上がらせる。

「目覚ましっ」

金貨がまばゆいを散らす。

ソラーナ、シグリス、ウル、ロキの4神が部屋に現れた。みんな本來の大きさで現れたから、部屋がちょっと狹くなる。

立つところがなくて、ソラーナはふわりと浮いていた。

「……あれ?」

一番大きい人が足りない気がする。

「トールは?」

「…………暴れすぎだ。魔力を使いすぎて、小さな姿でも出てこれない」

ソラーナが遠い目をしている。

突然現れた神様達に、サフィさんはぽかんとしていた。

「これ、神? なんで、こんなところに集まってるのよ。た、太神?? はぁ~?? そうよ戦爭は、魔との戦いはどうなったのよ」

「まだ続いている」

そう言って、ソラーナは金髪を揺らした。

「正しくは、一度負けた。そして今、再開したというところなのだ」

神様は今の狀況を話す。

神々が負けかけて、封印が世界を覆ったこと。

サフィさんは呆然としていた。

「アールヴヘイムから、救難信號ってこと? ていうか、せ、1000年後ぉ……?」

緑髪の下で眉がピン、ピン、と跳ねていた。

な、なんだか……サフィさんはとっても賑やかだ。

「え、ええええ!?」

部屋に聲が響いて、フェリクスさんが防音魔法を二重にした。

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