《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-32:鉱山街アルヴィース

ガタンと馬車が揺れて、僕は眠りから起こされた。

窓を塞ぐカーテンからうっすらとれている。

座ったままでが軋んでる気がした。ちょっと全をポキポキ鳴らしてから、カーテンを開く。

馬車は峠に差し掛かっていた。窓から街を――鉱山街アルヴィースを一できる。

そこは巨大な山を背負った都だった。

あちこちで立ち上る煙を朝日が照らしている。まるで街がきらきらした雲を生み出しているみたい。

鉱山は巨大な壁のように、街の後ろに立ちはだかっている。稜線の東側は平地の森へ、西側は川へとつながっていた。川は一部が街へと流れ込んでいて、これが王都へつながる水運の源流なのだろう。

初めて見る、王都以外の大都市だ。

「なんとか朝に到著できましたね」

いつの間にか、僕は窓にくっついていたみたい。

フェリクスさんの言葉には笑みが混じっていた。

「これ以上はみようがない、最速のペースです」

僕は顎を引く。

ちなみに客車にいるもう一人、ミアさんは座った姿勢でまだ寢ていた。揺れても起きないあたり、この人の旅慣れはスキルの領域じゃないかって思う。

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がまだちょっと痛い。夜もできる限り休まずに進む、強行軍だったから。

「奴隷商人の先手をとるため……ですよね?」

フェリクスさんは首肯した。

途中の街でゴーレム騒を起こした後、僕達はアルヴィースに向けて急行した。

ゆっくり行く場合は王都から6日はかかる。でもの戦士団は夜通し駆けたり替えの馬を使ったりして、4日で到著していた。

前の日、つまり昨日はさすがに馬車を止めて休んだけれど、それがなければとてもけなかったと思う。馬車旅って座ってるだけなのに疲れるんだ。

「カルマルでのゴーレム騒は、表向きは魔師の仕業になっています。しかし、奇妙に思う者はいるかもしれません。また、ゴーレムをけ取る予定だった発注者は、どうしたって不審に思うでしょう」

逆に言えば、とフェリクスさんは言葉を継いだ。

馬のいななきがして、また馬車が揺れる。

「それらの報が直接アルヴィースに伝わるには、し時間がかかる。よくすれば5日、短くとも3日は安全に探索や準備ができるはずです」

ミアさんが肩を回しながら起きてきた。貓みたいにあくびする。

「ふぁ……3日だと短いね」

「でしょうね。アルヴィースのダンジョンは、王都のそれとは違って特殊でもありますし……報収集している現地の味方とまずは合流しましょう」

フェリクスさんは肩をすくめた。額の小冠(コロネット)がきらりとする。

「冒険者の基本は、1(いち)に報と言いますから」

足元で何かがもぞっといた。

小さな手が僕のつま先を摑む。

「……朝?」

黒小人の鍛冶屋さん、サフィだった。

赤い指っている。

小人のの子は、目をまん丸にしてアルヴィースの方を見つめた。

「うそ……アールヴヘイム、ここ? 宮殿も、鍛冶場も、なんにもない……山の形は、似ているけど……」

反応はいつかの神様達と同じだ。1000年後の景に呆然としている。

ぶるっと金貨が震えた。

僕も同じように、が熱くなる。

「できるだけすぐに、ダンジョンにりたいです」

助けを求めてきた小人がいるなら、ダンジョンにれば何かわかるかもしれない。

「あたしもリオンに賛だね。期限があるなら早い方がいい。前報があてになるとも限らないだろ?」

フェリクスさんは真剣な目で認めた。

「もちろん。可能な限りすぐ、ダンジョンには向かいます」

ぐっとお腹に力をれたら、ぐう、と音がした。

……そういえば、朝ごはん、まだだった。

ミアさんがほほ笑む。

「くく、フェリクス。さっきの、冒険者の名句だよね? 冒険者は、1に報、2は――」

「…………2は補給ですね。ちなみに戦士団では3が鍛錬、4が信心」

鉱山街からは白い煙も上がっている。朝の煮炊きなんだろう。

知らない街だけど、ここにも『起こし屋』っているんだろうか――なんて考えてしまう。

フェリクスさんは言った。

「拠點にり、まずは食事ですね」

右ポケットで金貨がにわかに騒がしくなる。

『補給は大事だよな。リオン、をとっとけよ』

『栄養はしっかりと、ですね。野菜も食べるのです』

『前線だと食べられないから、食べられるうちに好きなもの食べた方がいいよ……保存、あと釘が打てるくらいコチコチに乾燥した干し魚……。ぅあ、ああ……!』

『お茶がないとロキは嫌だなぁ』

注文が多い神様……。

というか、みんなも大昔は食事したんだろうか。

『ごはん、か……』

ちょっと盛り上がる方々をよそに、ソラーナが不思議そうな聲を出している。

そうこうしているうちに、馬車はアルヴィースの門に辿り著いた。

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