《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-33:冒険者の基本

馬車は市門を抜けて、大通りにる。あちこちに鍛冶場があって、次々と武や鉱石を満載した荷車とすれ違う。

冒険者も多い。アルヴィースにはダンジョンがあるから、そこを目當てにする人なんだろう。

火炎をる魔が出るから、火に強い防や魔法を備えてる。鍛冶場が目立つのは、良質な耐火防が必要ってことも関係していると思う。

街中でも鉱山の存在は抜群だ。

そそり立つ壁みたいに見上げるしかなくて、何かの施設らしい煙がもくもくと上がっている。火山ってこんなじなのかな。

アルヴィースのダンジョンはこの鉱山と一化しているって話だ。

ドキドキして、目を見張る。新しい、全然知らない場所だから。

「到著です」

やがて者席から聲がした。

最初の目的地は街外れにある宿屋さんだ。

古びた看板に『踴る小人亭』と書かれている。降りていると、フェリクスさんが教えてくれた。

の戦士団には、あちこちにの協力者がいます。ここのご主人が、我々に宿と食事を提供してくれます」

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僕とフェリクスさん、そしてミアさんは宿屋で降りる。他の人たちはまた馬車や荷車に戻って、大通りへと出かけた。

そのまま報収集にるんだろう。

「ここにもオーディス神殿はありますが、敵がいるとすれば見張るでしょう」

「そうか……」

普通の宿屋さんに泊まるほうが、他の冒険者にも紛れられるってことか。あれだけ冒険者がいたんだから。

小さな宿屋さんで目立たない。そのうえ僕らに協力する間は、他の人を泊めることはないらしい。

ちなみに小人のサフィはというと――

「大丈夫?」

こそっと、フェリクスさんの背中に話しかけてみる。

「…………平気」

ぼそっとサフィの聲が聞こえた。

小人のは立っても僕のお腹くらいまでしかなくて、大きなリュックであればすっぽりと収まる。

サフィをれたリュックをフェリクスさんが背負う形になっていた。

「それが、不思議なほど軽いのです。小人は足音がしなかったと古い書にありますし、この軽さが原因かもしれません」

「あ~でもなんかリンゴの匂いする! ちょっとこれ食料袋だったでしょ!? 香りづけされる燻製の気持ちが分かっ……」

「は、りましょう」

フェリクスさんの背中を僕とミアさんで押して、宿屋へ行った。

やがてご主人がやってきて、僕らを部屋に通す。朝食がまだだというと、にっこり笑って用意してくれた。

「お待たせしました」

出てきたのは、いかにも鉱山街といったメニューだ。

こんがり焼かれた芋に、よくあぶったベーコン、それに黒パン。玉ねぎとニンジン、そしてキノコが浮いたスープもついている。

お腹が鳴った。

僕とミアさん、そしてサフィはフェリクスさんのお祈りをジレジレ待ってから食べ始めた。

黒パンは、チーズやベーコン、そして野菜を挾んでから食べるらしい。鉱山に持っていくお弁當がもとになったみたいだ。

確かにそうした方がすぐに食べられそう。

挾む材には酢漬けの魚もあって、いろいろな組み合わせが面白い。

「はは、いっぱい食べたいところだが……ダンジョンに潛るとなると全部はムリだな」

ミアさんの呟きで僕は噛むのをやめた。

ダンジョンでお腹を毆られた時、食べすぎは大変なことになる。

し休んでから出発すれば問題ありませんが……立派な心がけです。実をいうとタダなので好きなだけ食べようと言い出すと思ってました。見直しました」

「あんた、あたしをなんだと思っているんだい」

ミアさんとフェリクスさんがいがみ合う。

サフィは興味深そうに黒パンで野菜だけを挾んで食べていた。

『……うまそうだな』

金貨からトールの聲が聞こえる。

『おい、封印解除してくれないか?』

「え、でも……」

『なにも壊さねぇよっ』

僕は神様達を封印解除した。みんな小さな姿で顕現する。

トール、ロキ、ウルは床に広がられた料理を珍しそうに眺めた後、料理をつまんで食べ始める。人形サイズなのに、あっという間にベーコンが3切れも食べられてしまった。

「「あっ……」」

僕とミアさんが同時に言った。

神様達は、焼き加減や抜きについて何やら言っている。

シグリスは呆れた顔で、大きな匙を取り出す。スープをかき混ぜて、を詰まらせるトールによそってあげていた。

(それ)、取り分けに使っていいんだ……。

「……ふむ、みんな食べるのだな」

小さなソラーナはふよふよ浮きながらテーブルを見下ろしていた。

「食べないの?」

「う、む……実は、わたしは『食べる』というのは初めてなのだ」

「え……」

「む、無論見たことはあるぞ! ただ、信徒は多かったが、一緒に食事をとるというのはなかったのだ」

ちょっと意外に思う。

でも、そういえば僕達家族の食事をみても、ソラーナは一度も『食べたい』とは言わなかった。

ロキが補足してくれる。

「神にもいろいろな考え方があるからねぇ。ソラーナの母君は、太神。そもそも魔力があれば源的に食事は不要だ。信徒とれ合うよりも、超然とした在り方を重視したんだと思うよ」

「へぇ……」

「教育方針というやつかもね」

ソラーナは珍しくモジモジしていた。金髪と瞳が左右に揺れている。

食べたいんだろうけれど、踏ん切りがつかないような。

「ソラーナ」

呼びかけてみる。

今まで気づかなくてごめんなさい。

ベーコンの切れ端と、チーズ、そして野菜をパンで挾んだ。

「……うーん、今のサイズだと、食べにくいかな」

僕がそう言うと、ソラーナは大きくなった。普通のの子のサイズになって、僕の隣に座る。

「ちょ、ちょっとの間であれば問題ないだろう。すぐに戻るっ」

よっぽど興味あったんだなぁ。

ソラーナは目をキラキラさせて、他の人のまねをしながらサンドイッチを一気にかじる。もぐもぐ噛んで、ごくりと飲んだ。

「お、おいしい……! これが料理かっ! 口が、すごく、幸せになったぞ!」

「よ、よかったね」

「うむ、うむ!」

ソラーナは噛んでは目を輝かせる。

ミアさんがよそってくれたスープを飲んで、やっと元の人形サイズに戻った。

「……こいつら本當に神様?」

目を細くしてサフィが首をひねる。

ロキはクスクスと笑った。

「知らないということは、長できるってことでもあるねぇ。ソラーナは僕らの間でも、まだ年若い神だ」

「……子供ってじだけどね」

「おお、小人よ! 君が言うのかい」

サフィは疑わしそうに神様達の宴を見つめていた。

ダンジョンに挑む前の、ちょっとの休息はそうしてに賑やかに過ぎていった。

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