《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-35:ルーンの力
アルヴィース・ダンジョンの探索層は、2階層目まで続いている。東ダンジョンよりも天井がし高くて、通路も広い。
ダンジョンの端は鉱山とつながっていて、今も當時の設備や、ゴーレム用の巨大武が出土するみたい。
僕は荷車や馬車――迷宮に馬がいるんだ――とすれ違いながら戦闘層へと降りていく。
やがて、3階層。
「まずは肩慣らしだね」
ミアさんが赤髪を揺らして、じゃらりと鎖斧を取り出した。
「ここには、火を使う魔でも小さい奴が出る。そいつらで慣れるといいだろう」
言い合ううちに、能力『野生の心』で地面の振を知する。
足音? いや、違う。何かが地面の中を進んでいるんだ。
「ち、地中から來ますっ!」
地面から、蛇のような何かが飛び出してきた。
土から生えた姿勢で鎌首をもたげる。
頭の位置には大きな一つ目。無な昆蟲の目に、僕らの姿が歪んで映っていた。
「ロック・ワームのだな」
ミアさんが教えてくれた。
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ちなみにフェリクスさんや、他の戦士団はし下がった場所で待機だ。まずは僕が迷宮に慣れる目的があるから、こっちが優先的に戦うことになる。
「気を付けろよ。小さいが、きちんと口からは炎をはく」
ごくっとを鳴らしたところで、地面がより大きく揺れた。
本能的に飛び下がる。
僕が直前までいた場所を、真下から何かが突き上げた。
「な、なに……!」
丸太だ、と思った。
地面から何本もの丸太が急に生えてきた。
けれども『それ』はぐにゃりとうねって、僕に頭を向ける。さっきと同じ――でも何倍も大きい赤いが、僕を見下ろしていた。
「……こ、こりゃ、ロック・ワームのだねぇ」
ミアさんが顔を引きつらせる。
さっき出てきたのロック・ワームはさっさと地面へと逃げていった。
「お、大きくないです!?」
「これ、6層くらいに出るやつなんだよなぁ」
僕は唖然とした。
アルヴィース・ダンジョンは全部で10階層。深部に出る魔が、いきなりここに來たってこと?
「キキキキ」
のロック・ワームが4。
ええと、この魔については父さんから聞いたことがある。
表面がゴツゴツしているのは巖のような外殻をまとっているから。その名のとおり、巖の蟲(ロック・ワーム)ってことだ。
口からは炎も吐く。
さらには地中に潛ることもできて、逃げても壁をものともせず追ってくるらしい。
「……厄介だな」
4つの口が、ぐばっと左右に開く。
「っ」
炎弾が発された。
反で橫に跳ぶ。
炎が耐火のマントをかすめ、壁で散した。
『リオン!』
「平気っ」
心配するソラーナに応じる。
炎弾は次々に飛來。回避に集中すれば問題ない。
けれど、なかなか攻撃へ移れない。
「……熱っ」
掠るだけでが焼かれる。火に対する怖さが、をすくませた。
大きく回避せざるをえない。
刃みたいにギリギリで避けてカウンター、なんてことがやりにくいんだ。
「目覚ましっ!」
霊シルフを呼び出した。
「わんっ」
突風が駆け抜ける。地面に落ちていた石が數個浮き上がって、ロック・ワームの目に命中した。
「キキキッ!」
目を潰された一がを振り回す。
こっちへ向けられた腹の部分に、ところどころ白い部分が見えた。
巖とは明らかにが違う。
これ、もしかして裝甲をまとっていないってこと……?
おさらいした弱點報がひらめいた。
「よしっ」
地を蹴って、前へ。
無事な個から炎弾が撃ち込まれるけれど、ジグザグに走って避けていく。
短剣に刻まれた『迅(ラド)』の魔法文字。緑に輝くと、風が刀にまとい、僕の背中を押した。
加速。
一気に、ロック・ワームの懐へ!
「ここだっ」
スライディングしながら相手の急所を切りつけた。
刃が相手のに沈みこむ。
手ごたえありだ。
勢いのままり、橫目でロック・ワームが地面に橫たわるのを見る。
傷ついた一は、そのまま灰になって消えていった。
「……いけるかい?」
ミアさんに片手をあげて応じる。修行は、継続だ。
「はい。弱點、わかりました」
力が強くなったようにじる。
レベルが20にあがったせいだろうか。
魔力も増えているとすれば、神様の加護も以前よりかなり使えるかもしれない。『黃金の炎』、『雷神の鎚』、『野生の心』、あるいはそれらの組み合わせ。
魔力量が増えたとすれば、取りうる手札も多くなる。
「キキキ……」
相手の數は、まだ3。
出方をうかがっていると、3ともが地面に引っ込んだ。
「下からくるよっ」
「なら!」
――――
<スキル:狩神の加護>を使用しました。
『野生の心』……探知。魔力消費で、さらなる効果。
――――
魔力を消費して、地中の痕跡を追う。赤いで丸見えだ。
次に出る場所は――僕の足元。
「やっ」
飛び下がって奇襲を回避。
魔達は唖然としたかもしれない。完全に読まれていたんだから。
ロック・ワーム達のは完全に上にびきっている。
「キキ……!」
苦し紛れの炎攻撃。
甘い狙いを余裕をもって回避し、左手でバランスを修正。両足でしっかり床を踏みしめてから、今度は僕の方から飛びかかった。
垂直にびたロック・ワームは2。
今の位置からは、丁度、両方が直線に並んでいる。
――――
<スキル:太の加護>を使用します。
『黃金の炎』……時間限定で能力を向上。
――――
『全力かっ!』
「うんっ」
ソラーナの聲に、トールが応じる。
『はは! 気前がいいじゃねぇか!』
最初は様子をみるつもりだったけど、一を倒して気持ちが変わった。
レベルも上がって、武も変わって、新しい迷宮。
全力でくとどうなるのか確かめてみたい。
「ふっ」
『迅(ラド)』の魔法文字(ルーン)による加速に、能力上昇が加わった。一歩で5メートルの距離を詰め、右側のロック・ワームを外殻ごと切り裂く。
手首を返して、狙うは左側。
強化された知能力が裝甲の隙間を教えてくれる。隙間にり込んだ刃は、水のようにほとんど抵抗なく敵のを両斷した。
後ろを振り返る。
1は崩れ落ち、もう1は真っ二つ。
どちらも灰になって消えていった。
「もう1、いたはずだけど……」
『野生の心』で探知した。
能力が強化されている今なら、多遠くへ逃げてもわかるはずだ。
「きゃああああ!」
ものすごい悲鳴。
殘り1が現れたのは、後衛――つまり、サフィを背負ったサポーターがいる位置だった。
リュックから小さな顔が飛び出して、涙目でんでる。
「なんでこっち來んのよぉ!」
サポーターの人はさすがに戦士団だ。
悠々と回避するけれど、サフィの目の前でロック・ワームの顎がガチン!とかみ合わされていた。
「~~~~~っ!!」
ひ、悲鳴が聲になってない……。
『……面白いから放っておかなぁい?』
『『『『ロキ!!』』』』
神様みんなにたしなめられる魔神様はともかくとして。
これもう、急がないわけにはいかない。
踏み出そうとしたとき、短剣のクリスタルが輝いた。
――わんっ。
風の霊、シルフの聲がする。
……短剣を振れってこと?
「サフィ、頭下げてっ」
風の刃が空中を駆け抜けた。
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