《12ハロンのチクショー道【書籍化】》プロローグ:誰かの走馬燈
2019/12/6 改訂
思えば、結構上手くいった人生だったかもしれない。
々4、5年前の出來事である筈なのに明瞭としないのは、このが人でなく馬だからなんだろうか。
馬。サラブレッド。
そう、俺は確かに人間だったはずだ。
日本の、関東に住んでいて、競馬が好きな、別にどうという事の無い男。どうしてか人としての名前を思い出せないが、確かに人だったはずだ。
何か大きなものを目の前にしていたと思う。それでなにやら大仰かつ偉そうな聲音で、『何をむ?』とか尋ねられた筈だ。
だから素直に『のケツを並べてパコパコ犯しまくる生活がしたい』と答えたような気がする。俺は若かったのだろうか。今となっては思い出せないが、生前が有り余っていたのかもしれない。
それで、どうなったんだったか。そう。気付いたらこう、ぬめぬめでぬるぬるで生臭いに包まれてて、こう、にゅりゅん! ってなったんだよ。暗いし寒いしなんかくせーし訳わかんねーしで喚こうとしたら、俺のから「ひひ~ん」だよ。まぁそれでも暫く訳わかんなかったけどね。
Advertisement
んでまぁ、ほら。馬だったわけよ。牡馬ね。落ち著いた頃にふと気付いたよ。
『のケツを並べてパコパコ犯しまくる生活がしたい』って、あぁ。なるほど種馬になれってことかってさ。あの偉そうな聲は俺の願いを部分的にだが葉えてくれたらしい。
あほかと思ったね。知ってるか? 種馬って春になると一日3、4頭に尾するんだって。それを春のシーズンの2~3ヶ月ずっと。人間に直すと羨ましい様な、恐ろしいような生活だな。出來れば人間のままそういう生活が送れるようになりたかったんだけども。
いやね、まぁ、たしかに俺はそう言ったけどね? 馬になる思わないだろ?
やけになりかけたりしたけども、走らない競走馬の行く先なんてもう食なわけよ。コンビーフとか用の飼料とかにね。死ぬのはご免だからそら頑張るしかなかろうぜ。
てことで頑張ったのよ、俺。最初牧場の人たちが知らない言葉で話すし金髪碧眼だったりとかしたから、馬になったついでに異世界転生でもしたのかと思ったよ。
したらねー、どうやらフランスだったらしいぞ。牧場のおっちゃんが読んでる新聞かっぱらって々調べてよーやく分かった時はほっとしたぜ。とりあえず俺の知ってる競馬と同じものだった事が分かったわけだし。
まー頑張ったね。調教も真面目にやったし、走り方も々工夫してみたりしたよ。
そしたら勝てるのね。人間だったころはあんま足速かったとか、そういうの無かったと思うんだけど、まーレースで勝つわ勝つわ。というか俺負けたことないしな。
なんで負けないのかって? 都合よすぎ?
そりゃあんた陸上部で鍛えてる奴とただ足の速い奴じゃどっちが速いのかって話よ。馬ってのはその馬が走りやすい走法で走るんだが、それが一番速い走り方って訳じゃないのよ。
ところが俺は速く走れる走り方ってもんを意識してやれるわけ。
気付いてからは楽勝じゃーんとか思ってたけど、やっぱ人でも馬でも才能ある奴はあるんだよな。俺でもそーとー必死にならなきゃ負けるような馬が結構いんのね。全部返り討ちにしてやったけどな!
まぁそれも過去の話よ。ちょっと意識飛んじゃう位今現在ヤバいしね。らしくもなく自分語りなんてしちゃってる訳よ。
ヤバイってか痛てぇ。腰んとこちょーいてぇ。
つかこれアレじゃね? さっきからやたら々考えられてるけど、死ぬ間際の走馬燈ってやつ? 走る馬が見る走馬燈って誰が上手い事言えってやかましーわ。
『――――ッ! ―――ッ!』
あーあージョッキーくんも泣いちゃって。落とさなかっただろ?
痛いのお前じゃなくて俺なんだからそんなに泣くなって。
あーやべちょっともー立ってられないわ。寢とこ。
こりゃ死んだな俺。腰だぞ腰。足ならまだしも腰いったら人でもヤベーよ。俺馬だぞ?
わーったわーった痛てぇんだからそんなんな。もーほらペロペロしてやるから元気だせ。お前これからも馬乗るんだろ? 予後った馬に一々泣いてたら切りねーだろ。こっちが引くほどドライにいけよ。
おーおーお迎えがきたわ。そういや予後不良ってどうやって処置すんだろ。五寸釘で額をガツーンとかだったら嫌だな。無難に注とか希なんだが。
あー、最後に牧場の皆に會いたかったなぁ。今日も見に來てたからスタンドには居るんだろうけど、もう間に合わないか。ごめんなミーシャ。一番取れなかったよ。
ごめんなジョッキーくん。怖い目にあわせてしまった。セルゲイのおっさんも、トレーナーのじいさんも、廄務員くんも、すまねぇなぁ。こんな幕切れで。
しかし、なんだ。
負けるってのは
こんな形でも
意外と、悔しいもんなんだ、なぁ――…………
鐘の音が鳴る。
低く、低く。
1度。
2度。
3度。
-----------------------
らしい容姿だった。話題に事欠かない問題児だった。人懐っこい馬だった。誰もが驚いた。誰もが笑った。速いだけではない。ネジュセルクルという競走馬は様々なを我々に與えてくれた。彼に悲劇は似合わない。いまでも、シャンティイの森に行けば廄舎の影からひょっこり顔を出すんじゃないか。トラックを走り回っているのではないか。全てが悪い冗談で、彼は元気で暮らしているんじゃないか。そんな事を考えずにはいられない。
それは、競馬に関わる者であるならば比較的ありふれた悲劇であった。しかし、それが凱旋門賞という晴れ舞臺、誰に憚る事の無い無敗の現役最強馬のに起こったモノであったこと。その事が當事者だけではなく、業界全へ悲劇の波紋を広げた。
腰椎斷裂骨折。本來ならば競走馬にされるはずの無い診斷。ネジュセルクルという競走馬が持つ特異な走りが予想以上の疲労を溜めていたためと思われる。
レースの映像と照らし合わせ推察するに(映像ではネジュセルクルは腰から先の力が抜けており、前足だけでを支えていた)下半不隨を予させる、走ることでしか命を繋げない競走馬として、どころかサラブレッドとして致命傷と思える、痛ましい故障だった。なくとも、擔當の獣醫はすぐさま予後不良と診斷し、処置を執った。
鞍上クリストフ騎手は馬運車にクレーンで吊られて行くネジュセルクルへ向かって何度も呼びかけ、関係者には鞭を振り回して抵抗した。錯していたと言って良い狀態だった。
彼らのタッグは新馬戦以前より始まっていたという。我々が考えている騎手と競走馬との関係より遙かに深い絆を結んでいたのかもしれない。
その深い絆故であろう。ターフを遠ざかる馬運車とそれを見送りロンシャンの芝に泣き崩れるクリストフ騎手。『慟哭』と名付けられたこの寫真は、サラブレッドと我々人間の関係について、今一度立ち返らせるような、深い絶と悲哀に満ちた一枚となった。
クリストフ騎手はこのレース以後、神的衝撃から立ち直る事が出來ず、騎乗を請け負っていない。
盟友が砕け散る生々しいは今もって彼を蝕み、三年経った現在も彼の騎手免許は更新されておらず、けた衝撃の大きさを語っている。
我々はネジュセルクルのような素晴らしい才能を再び見ることが出來るのだろうか。
クリストフ騎手の鮮やかな手綱捌きを見る日は來るのだろうか。
あの日、我々が失ったものは、あまりにも大きい。
海外の名馬列伝:ロンシャンの慟哭~ネジュセルクル~
ダノンプレミアムが負けたので投稿です(´・ω・`)
2019/12/6 こっそり改訂開始
【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜
※書籍化します! 10/1にKラノベブックス様で発売! コミカライズも決定してます! 史上最強の勇者である俺・ユージーン。 魔王を討伐した後、気づけば俺は貴族の息子・ユリウスとして転生していた。 どうやらこの世界の俺は、魔力ゼロの忌み子として、家から見捨てられていたらしい。 優秀な雙子の弟と比べられ、わがまま王女な婚約者を寢取られ、學校や屋敷の人たちからは無能とさげすまれる。散々な日々を送っていたみたいだ。 しかし別人に転生した俺は、それらを全く気にせず、2度目の人生を気ままに過ごすことを決意する。 このときの俺は知らなかった。 ここが勇者のいた時代から2000年後の未來であること。 平和な世界では、魔法も剣術も、すさまじくレベルが低下していたことに。 勇者としての最高の剣術、魔法、回復術、體術を引き継いだ狀態で転生した俺は、衰退した未來の世界で、自覚なく最強の力を振る。 周囲の悪評と常識をことごとく覆し、戀人や家族、そして俺を馬鹿にしていた弟からは嫉妬される。 けれどそんなこと全く気にせず、俺は今日も自由をただ謳歌するのだった。 ※書籍化に合わせてタイトル変更しました 舊「落ちこぼれの兄の方が実は最強〜史上最強の勇者、未來の世界へ転生する。優秀な弟に婚約者を寢取られ、家や學校からも無能と蔑まれてたが、前世の力を引き継ぎ気ままに生きてたらいつの間にか目立ってた」
8 75【書籍化】誤解された『身代わりの魔女』は、國王から最初の戀と最後の戀を捧げられる
【書籍化準備中】 秘密だけれど、ルピアは世界でただ一人の魔女だ。『相手の怪我や病気をその身に引き受ける』魔法が使える。そんな彼女は、初戀相手であるフェリクス王と結婚することになった。 彼のことを一途に思うルピアに、フェリクス王も魅かれるけれど……誤解から、彼女が裏切ったと考えて冷たく當たってしまう。 ルピアはそんな彼の命を救い、身代わりとなって深い眠りについた。 「……ルピア。君が私への思いを忘れても、私はずっと君を愛するし、必ず君を取り戻すから」 夫のことが大好きな妻と、妻のことがもっと大好きな夫の話。 あるいは、長い片思いで息も絶え絶えになった夫が、これでもかと妻を溺愛する話。
8 193【書籍化】厳つい顔で兇悪騎士団長と恐れられる公爵様の最後の婚活相手は社交界の幻の花でした
舊タイトル【兇悪騎士団長と言われている厳つい顔の公爵様に婚活終了のお知らせ〜お相手は社交界の幻の花〜】 王の側近であり、騎士団長にして公爵家當主のヴァレリオは、傷痕のあるその厳つい顔から兇悪騎士団長と呼ばれ、高い地位とは裏腹に嫁探しに難航していた。 打診をしては斷られ、顔合わせにさえ進むことのないある日、執事のフィリオが発した悪気のない一言に、ついにヴァレリオの心が折れる。 これ以上、自分で選んだ相手に斷られて傷つきたくない……という理由で、フィリオに候補選びを一任すると、すぐに次の顔合わせ相手が決まった。 その相手は社交界で幻の花と呼ばれているご令嬢。美しく引く手數多のはずのご令嬢は嫁ぎ遅れに差し掛かった22歳なのにまだ婚約者もいない。 それには、何か秘密があるようで……。 なろう版と書籍の內容は同じではありません。
8 81首吊り死體が呪う村、痣のスミレの狂い咲き
香壽は、ある村の家に養子として迎えられた。そして香壽は母親に許嫁の存在を伝えられる。 そんな中、村で首吊り死體が発見された。 それは『縄垂らし』の仕業か、それとも__。 小説家になろうでも投稿しています。
8 111學園事件証明
整合高校の七不思議にこんな話がある。 誰も知らない不老不死の生徒が存在すると… 根倉で性格の悪いただの生徒である和鳥 野津(わとり のず)は學校で起こった數々の事件を推理する…
8 162創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜
主人公のユリエルには、自分の知らない前世があった。それは1000年前、300年にも渡る戦爭を止めた救世の魔導師エリアスという前世。 彼は婚約者であるミラと過ごしていたが、ある日彼女は倒れてしまう。 彼女を救うため、エリアスは命を賭し、自らに輪廻転生の魔法を掛け、ユリエルとして転生した。 ユリエルは、エリアスの魔法を受け継ぎ、ミラとの再會を果たすため奮闘して行く!! 主人公最強系ハイファンタジーです! ※タイトル変更しました 変更前→最強魔導師転生記 変更後→創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜 內容などには変更ありませんのでよろしくお願いします。
8 129