《12ハロンのチクショー道【書籍化】》7F:夢のはじまり-4

各陣営の紹介が続く中、気の短いじっとしてられないウェブの住人達は速攻で飽きてそれぞれ競馬談義を始めていた。

『今年の忖度枠はどれかな』

『やっぱクエスじゃねえの』

『別に逃げ馬でもねーし枠いらなくね?』

がいらないというか外枠じゃなきゃどこでもいい』

『難易度低いな』

『先行勢が多いから半端に側とかだと挾まれてそのまま包まれるかもしれん』

『そういう話始めると1枠も結構ヤバイ』

『出の悪い馬だと逆に4枠くらいがいいとかあるしな』

『すまん競馬初心者で枠とか気にするの今回が初めてなんだがなんでだといいの?』

『たぶん後で司會から解説ある毎年やってるし』

『すげー簡単にいうとスタート直後にコーナーがあって、その上曲がる回數が多いから』

『ふーんじゃあ解説待っとくわ』

『おうそうしろ』

『改めて出走馬見ると逃げ馬多いな』

『そいつら的には枠がいいだろうな』

『S氏とかスタートいいし1枠引いたら勝ったようなもんだろ』

『劇場型競走馬サタンマルッコが無難に1枠引くわけないだろいい加減にしろ』

『雪は降らないだろ→ふった 雨はどうかな→當日大雨 出遅れんやろ→出遅れた 何故なのか』

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『むしろまた出遅れる説』

『忖度民ウキウキ』

「……――以上、出走16頭各陣営のご紹介でした」

『お、やっと終わった』

『やっと選か』

『待ってた』

『今年も選順→馬番か?』

『いつだかのスポーツ選手に引いてもらうやつ結構好きだった』

「有馬記念は中山競馬場、回り2500mを舞臺に繰り広げられます。

この中山2500m回り、かなり癖の強いコース設計になっており、スタート直後150mに最初のコーナー。そこから數えて合計6回コーナーを曲がり最後の直線ゴール前では急激な上り坂が待ち構えるテクニカルなコースとなっています。

大雑把に言って々を進めた馬の走行距離が2500mとして、外々を回らされる馬は2520m程を走る事となります。日本の競馬場では4回曲がるレースが基本とされていますが、この有馬記念では6回曲がるため、コーナーリングでの位置取りが他のレースよりも結果に影響しやすいのです」

スクリーンに投影される中山コースの走路。一般的なオーバルトラックからはみ出した位置からスタートし、すぐさま3コーナー。そこから側を走る青い矢印とその外を走る赤い矢印がぐるっとトラックを一周して最後の直線までを駆け抜けた。

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「當然各馬々を目指す訳ですが、ここで問題となるのがスタート直後150m地點にある最初のコーナー。ここまでの距離が非常に短いため、コーナーの側に近い枠の馬がコーナー侵までの距離で大きなアドバンテージを得ます。故に各陣営がこうして気合をれて有馬記念の枠順選會に挑み、我々はそれを面白がっているというわけです。

さてここで、肝心要、選方法のご説明にまいります。ステージ中央をご覧ください」

ステージ中央には半球狀のボウルにれられたカプセル、それが収まった臺座が二つ鎮座していた。

「すっかりお馴染みとなりつつありますが、片方のカプセルには出走登録馬の名前が。もう片方のカプセルには馬番號が。手順といたしましては、この後お呼び致しますスペシャルゲストに出走登録馬の名前がっている方のカプセルを引いていただき、その後各陣営の皆様をステージにお呼びして、馬番號のったカプセルを引いていただきます」

『お、いつものやな』

『変に凝ったやつはめんどくせーからな』

的じゃだめなん』

『狙いつける系は忖度が疑われるからNG』

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『まあ引く順番くらいは別にいいと思うけどな。実際三年前そういうアレだったしw』

「さあそれでは最初のカプセルを引いていただくゲストをお呼びしたいと思います。

昨年騎手生活を引退したこの方! 竹田幸四郎さんです! どうぞー!」

『コウシローwwwwwww』

『お前かよwwwwwwwwwwww』

『竹田弟wwwwwwwwwww』

『コウフォローさんwwwwwwwwww』

「幸四郎さん、この有馬記念にプロモーターとして參加。どんなお気持ちですか」

「いやぁ、騎手引退した時はまさかこっち側に來る事になろうとは思っても居なかったんでね。皆さんお前かよって思ってませんでした? 僕だってそう思いますよ」

『エスパー幸四郎』

『貴様見ているな』

「うーんこっちから見るといい眺めですね。特にね、兄ちゃん(竹田)の命運握ってるのかと思うとこう、ワクワクしますね!」

「大変お兄さん想いな幸四郎さんな訳ですが、さて。それではそろそろ運命のお時間にまいりたいと思います。幸四郎さん、ステージの中央へ。

さて、ここで改めて出走登録馬のご紹介をいたします。すみかさんお願いします」

「はい。ただいまスクリーンにも表示されていますが、こちらは現在五十音順で並んでいます。これらがこの後選された馬番ごとに並び替えられていくことになります。

では出走各馬をご紹介します。

ヴェルトーチカ

オリジナルランク

キャリオンナイト

クエスフォールヴ

グリムガムジョー

グレーターミューズ

コトブキツカサ

サタンマルッコ

スピーシーハイ

ダイランドウ

ボーンバンガード

マネルハネルミノル

モデラート

ラスリテイク

ロバーツ

ワンダースピン

以上の16頭でもって有馬記念の出場馬でございます」

張してきた』

『S氏1枠引いたら全財産ぶっこむ』

『実際1枠引いたらサタン負ける要素なくね』

『パンツ突っ込む』

『突っ込まれるのはパンツの中なんだよなぁ』

『くさい』

『すみかたん可い』

『マルッコ君のほうが可い』

『お寫奴』

「絶好枠1枠を引くのはどの陣営か! それでは幸四郎さん。まず一次選をお願いいたします!」

『引くぞ』

『こういうくじって先と後どっちがいいんかね』

『さんすうニキおしえて』

『俺は後。理由は席替えでクラスの好きな子の隣になったから』

『すきあらば自分語り』

『どうせその子泣いて再選だろ』

『確率的には同じだが、相手に決められるのと自分で決められるのの差があるわなw』

「はい……キャリオンナイトです!」

「でましたキャリオンナイト! それではキャリオンナイト陣営の皆様ステージへお越しください」

――キャリオンナイト。時々炸裂する豪腳で世代を賑わせた7歳馬。あわやと思わせたジャパンカップの再現なるか!?

『お、キャリオンか』

『こいつは後ろからだから枠とかどうでもよさそうだが』

『出が悪いから側すぎるのも考えだな』

「さて、くじを引くのは和田泉(わだいずみ)調教師か、八源太(はち げんた)騎手か」

「あ、八騎手が引くようですね」

「八騎手。トップバッターですが今のお気持ちは」

「あう、き、張しています」

「16番、全て空いていますが、狙う枠は、何番でしょうか」

「えと、あの、この馬、は、出があまりよくありませんから、包まれないような枠がいいです。はい」

『八君有馬初騎乗か』

『というかGⅠもこの間のジャパンカップが初騎乗』

『もじもじしてムカツクが自分が22の時もこんなもんだったわ』

『普通に張するだろこんなんww』

張しててもくじは引けるべ』

「それではどうぞ!」

ごそごそとカプセルを掻き混ぜて一つを取り出した八。

「…………ひっ」

「あーッ! 16番ッ! キャリオンナイト16番ーッ!」

『しろめをむいたはちげんたぁーッ!』

『wwwwwwwwww』

『1/16引くくじ引きの天才wwwwwwwwwww』

『才能才能&才能wwwwwwwwwwwwwwww』

『これは一生の思い出wwwwwwwwww』

『海老名の後継現るwwwwwwwwwwwwwwwwww』

「テーブル席で待つ各陣営もこれにはニッコリ。特に海老名騎手の笑顔が眩しい!」

「これで8枠が一つ減りましたもんね」

『そういう時に仕事をするのが海老名という男だ』

『トシオじゃだめだがウシオとなった海老名は無敵だ』

『まだ引いてすら居ないのにw』

「さあまさかの立ち上がりとなりましたが、続いてまいりましょう。幸四郎さん、お願いします!」

「はい……次は、この馬です!」

「サタンマルッコ! サタンマルッコの文字! 陣営の皆様ステージまでお越しください」

『S氏キター!』

『サタンきた』

『劇場型の本領みせてくれ』

『ここで15番埋めて海老名を助けて』

『テーブルで待ってるオーナーが張しすぎて顔白いんだが大丈夫なのか』

『いいかだぞ、いらんことするなよでいいからな絶対だぞフリじゃねえぞ』

『ノルマは3枠以1枠で確勝』

「サタンマルッコ陣営にお越しいただきました。さて、引くのは小箕灘調教師か、橫田騎手どちらでしょうか」

「んーやっぱセンセイ引きませんか?」

「え? いや橫田さん引くって話にしてただろ」

「オーナーの奧さんがなんかその方がいいって仰ってたので」

「あーじゃあ、引きます」

「おっと謎の信頼があるオーナー中川氏の夫人。小箕灘調教師、狙うはずばりどの番號でしょうか」

「外じゃなければ、といったところなんですが、まあ外なら外でマルッコと橫田さんがダービーの時みたいに何とかしてくれると信じます」

「いやぁ、有馬はちょっときついかなぁ……」

「と、橫田騎手も苦い表ですが、それでは引いていただきましょう。どうぞ!」

くじに手を突っ込む小箕灘。無造作に摑んだカプセルを開く。

「……1番ッ! 逃げ馬サタンマルッコ1枠1番の絶好枠!」

『勝ったwwwwwwwwwwwww通帳とってくるwwwwwwwwwwwww』

『勝ったわwwwwwwwwwwwwwww』

『金かりてくるわwwwwwwwwwwwwwwwwww』

『サタンマルッコ銀行開店ーーーーーー!』

『気分いいから今日は焼いこ前祝いだ』

『ツエwwwwwwwwwwwww』

『勝利確定wwwwwwwwwwwwwwwwww』

『預言者中川夫人wwwwwwwww』

『考えておくか、払戻金の使い道……!』

『このざまでPSプロぽちったわ』

『法則不発wwwwwwwwwwwwww』

『やっぱいくらなんでも毎度なんかやらかすわけねーべ』

「いや、凄いところを引き當てました小箕灘調教師。むしろ中川夫人の慧眼ズバリといったところなのでしょうか」

「あ、センセイ、オーナーが喜びすぎて気絶してますよ」

『S氏wwwwwwwwwwww』

『人間の方のwwwwwwwwww』

『完全にアヘ顔ダブルピース』

『ほぼいきかけてる』

『いやこれ意識いってますわ』

「絶好枠を摑み取り、本番へ向けて弾みをつけましたサタンマルッコ! それでは次の選へ行きます。幸四郎さんお願いします」

『いやーこりゃサタン勝ったな』

『どうせ5~6枠とか微妙なとこだろうと思ってたけど1枠サタンはさすがに逆らえない』

『府中ならとにかく中山なら負ける要素ねえだろこんなんw』

「ダイランドウです! 陣営の皆様ステージへおあがりください」

『ダイランドウか』

「須田調教師としてはどの番號を希しますか」

「ンーそうだなぁ、側が良かったけど、マルッコ君が1番にったからそことはし離れたいね」

「立場上は同廄舎となっている馬ですが、それはまたどういった理由からでしょうか」

「ダイランドウとマルッコ君は普段から仲がいいんですがね、競走するとなるとなんといいますか張り合うようなところがあってね。それがレースだとどうでるか分からないもんで。まあ最悪2500m逃げ切ればいいんでどこでもいいはいいんですけどね」

『さすが須田っちいうことが潔い』

『さすすだ』

『さすっち』

『今思い出したがサタンマルッコとダイランドウって寶塚の前に放馬した事あったな』

『張り合うってそういう』

『いうてあと14枠あんだからそんな近いとこあたらないだろ』

「引くのはどちらが……?」

「そらもう國分寺騎手ですよ。頼んだよ」

「アッ、ハイ」

『アッ、ハイ』

『國分寺なんなのその返事ww』

『面からは窺えないが実は張している説』

『國分寺メカ説』

「國分寺騎手がカプセルを取り出し、中から番號が書かれた紙を……!

1枠2番! 1枠2番にダイランドウがりました!」

『おっ、ええやんダイランドウ』

『走りきれるかどうかはおいとくとして逃げ馬にいいとこ引いたな』

『ええやん』

『あるんじゃね?』

『隣サタンだけどいいのか』

『隣S氏だぞww』

『ダイランドウもスタートいいからな。スタートから併せ馬みたいなことになるのでは』

「いやーやっちまったな恭介(きょうすけ)まあ本番なんとかしてくれ」

「いや、あの、え……う……あの、引きなおしたい、んですけど……」

「皆さんそう思ってくじを引くんですねぇ。それでは席にお戻りください」

『須田wwwwwwwwwww』

『須田の反応からするとこれは結構ヤバイやつかwwww』

『國分寺涙目wwwwwww』

『オロオロ寺wwwwwwwwww』

『劇場型競走馬サタンマルッコは健在だった』

『かぁーっ上げて落とすタイプだったかぁーっ! おれもなーっ!』

『てことはなに、サタンかダイランドウはどっちか下げて競馬すんの?』

枠なのに?』

『じゃあもう2頭で逃げろよ』

『なんかやな予してきた』

『いやさすがにレースでそんな引っかかるようにはならんだろ』

『ダイランドウの大闘がまたみれるんです?』

『金借りるのやめるわ』

『PSプロキャンセルした』

『焼やめてカップ麺にするわ寒いし』

『(なんとかなる)はずだった…………』

「さて、続いては――……

……――クエスフォールヴ4枠7番!」

『クエス7番か』

『まあいんじゃね。ると闘に巻き込まれる可能あるし』

『つーか枠二頭が前に吹っ飛んでいくから後ろの馬が二番手集団先頭で楽に競馬できる説』

『十分勝負できる枠だろ』

「続きましては……コトブキツカサ!」

「ついにやってまいりましたコトブキツカサ海老名とし……ウシオ!

コトブキツカサ陣営はステージまでお越しください」

『山場きたwwww』

『海老名さん、8枠空いてますよ』

『殘り6枠で2、4、5、6、7、8枠に空きか』

『とても8枠引きそうな流れ』

「さて、海老名さん。ついに來てしまいましたね」

無量です」

『いやそのコメントはおかしい』

『なにが無量だよw』

「當然くじを引くのは?」

「あ、私が引きます」

「海老名騎手と。それではどうぞ、引いてください」

コンセントレーションを高めて勢いよくくじに手を突っ込む海老名。摑み取ったカプセルを高々と突き上げそのまま中を取り出す。

そしてゆっくりと中の紙を広げて行き――

アッ、シャオラアアアアアアァァッ!!!!!

「雄たけびを上げた海老名ァ! 摑み取った番號は7枠14番ッ! 江田調教師苦笑いッ!」

「でも海老名騎手、ようやく8枠の呪いから解放されて嬉しそうです」

『すげーこえでてたぞwwwwwwwwwwww』

『海老名wwwwwwwwwwww』

『wwwwwwwwwwwwwwwwwww』

『これは名手海老名ウシオwwwwwwwwwwww』

『改名効果あったwwwwwwwww』

『7枠で喜ぶ奴はじめてみたぞ』

『調教師苦笑いで草』

『すまん今年一番笑した』

『7枠を取る海老名くんUCはよ』

「さて、選會はまだまだ続きます。幸四郎さんお願いします――……

▲▲▲

選會翌日。新聞各紙にて有馬記念の枠順が掲載された。

1-①サタンマルッコ

1-②ダイランドウ

2-③グリムガムジョー

2-④ラスリテイク

3-⑤スピーシーハイ

3-⑥オリジナルランク

4-⑦クエスフォールヴ

4-⑧モデラート

5-⑨マネルハネルミノル

5-⑩ボーンバンガード

6-⑪ヴェルトーチカ

6-⑫ワンダースピン

7-⑬ロバーツ

7-⑭コトブキツカサ

8-⑮グレーターミューズ

8-⑯キャリオンナイト

決戦の日は近い。

ウマ娘ロス(´・ω・`)

ダイランドウは二番目に考えた馬名だったんですが、ダイユウサクみたいなダイから始まる名前のうまってことで生まれました。ダイユウサク、名前かっこいいですよね

想でダイランドウのダイラントウを先読みされてどうしようかと思いましたが、まあ馴染みやすいってことでオールオッケー(白目

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