《【書籍化決定】読家、日々是好日〜慎ましく、天無に後宮を駆け抜けます〜》24.夏夜の宴 謎
◾️◾️◾️◾️ 僑月目線
○○○○ 明渓目線
◾️◾️◾️◾️
その船の船首の意匠はかなり凝ったである。木彫りの花が四個ついており、その二つの花は正面に向かって開いている。殘りの二つは花の左半分が水面に、右半分が船側に広がっており、橫から見た時にその花が開いている様に見える。花びらも、その縁の部分を除いてくり抜いておりかし彫りの様になっている。
これは、船が反時計回り周りに進む事を考えて、真正面、池の縁どちらから見ても、大の花が開いて見える様に考えられたものだ。
今、その花びらの一つに手をつきながら護衛をしていた武の話を聞いている。
船にいるのは、いつも東宮の護衛をしている武達だけだ。俺達を見た武は、始め明渓を訝しんだが、青周が何かを言うと納得した様に引き下がった。明渓はその事――俺が止められ無かった事――に対し、疑問を持っていないようだった。
聡いだから、今までの朱閣宮のやり取りから、俺が誰なのか気づいているのだろう。聞いてくればいつでも答えるつもりでいたが、その素振りは全く見せない。それならいっそこちらから話すかと思い、言いかけたらこの騒ぎだ。
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武の説明は韋弦のそれと同じで目新しいは無かった。ただ、先程の説明を聞いていない二人は眉をしかめながら、一言も聞きらさまいとしていた。
折れた矢を見たいと頼むとまだ船にあったようで、持ってきてくれた。矢はなくギザギザに折られており、よく見るとキリで空けられたような小さなが空いている。自然なではなく、明らかに人工的なだった。
その後は、実際に妃が座っていた場所と矢が突き刺さった跡を確認する。
「青周様、燈りが見えた場所から弓でこちらを狙えますか」
「距離はあるが、剛腕の持ち主なら屆く距離だ。狙いを打ち抜く正確も含めて考えると、軍部の中でも、これだけの腕を持つ者は片手で足りるだろう」
そして、その片手にこの男はっている、と思ってしまうのは明らかにやっかみだ。
○○○○
(どうして?)
船首には自分の背丈程ある燭臺が、花の飾りの間に立ててあり、それぞれの蝋燭はまだ燃えていた。そのの一つだけが、他のものより蝋燭が短く今にも消えそうになっている。
「あの、蝋燭は同時に燈されたのですよね?」
近くにいた武に聞くと、無言で頷いてくれた。ならばついでにとばかりに言ってみる事にする。
「あの椅子に座っても良いですか?」
「あちらの椅子は東宮妃ので、不敬にあたります」
「……そうですよね」
「俺が許可す」
明渓が後ろを振り返ると、いつの間にか青周がいた。
「……青周様がおっしゃるのでしたら」
警護の者が一歩下がり、青周が明渓を椅子まで連れて行ってくれた。
明渓は椅子に座り周りを見回した後、椅子から降りるとしゃがみ込んでその腳をっている。
「この椅子は固定されているのですね」
「あぁ、池の水面は穏やかだが、それ程大きな船ではないので、風の影響で揺れる事もある。その為お二人が座られる椅子は甲板に杭で固定している」
しゃがみ込んだまま、何やら考えこんでいる明渓に僑月が聲をかける。
「何が気になるんだ?」
「うん、気になるのは二つ。一つは、なぜか折れてが空いている弓矢、もう一つは短い蝋燭」
そう言うと明渓は今度は青周の方をくるりと振り向く。
「青周様は弓矢について詳しいですか?」
「それは弓矢のるという技的な話か?」
「いえ、弓矢の種類についてです。以前本で読んだのですが武様等が普段使っている弓は七尺(二一〇センチ)以上あり、矢の長さは三尺(90センチ)程ですよね。しかし十字矢(ボーガン)なら、本も矢もその半分程の長さと本で読みました」
明渓の質問の意図を理解したように青周は頷く。
「その通りだ。確かに十字弓(ボーガン)の矢と折れた矢は同じぐらいの長さだが、十文弓(ボーガン)の飛距離は短いので対岸からでは屆かないだろう」
「それは、対岸からった場合ですよね。船で近くから撃たれたのであればどうでしょうか」
そこまで説明して、今度は船首に向かった。燭臺の高さは明渓の眼線と同じ高さにあり、そのの一つ、今にも消えそうな蝋燭を指さす。
「この蝋燭だけ、他のものより短いです。蝋燭はその種類によって燃え盡きるまでの時間が異なります。例えばですが、この側に張り出した花びらに十字弓(ボーガン)を固定します。かし彫りの間に紐を通せば安定しますし、燭臺は高さがあるので下の方は暗く目立ちにくいでしょう」
船を飾り立て準備をしている間は人の出りも多いだろうし、東宮達が乗る前だから護衛の者もいない。紛れ込んで、燭臺に火が燈されたのを確認してから細工をする事は不可能ではないだろう。
「十字矢(ボーガン)を細工するついでに燭臺にも細工をします。蝋燭を抜き、燭臺の蝋燭を刺して固定する尖った部分に糸をつけます。そして、早く燃え盡きる蝋燭を刺しておきます。紐のもう片方は矢の後に空けられたを通した後、かし彫りに結びつけます。こうすれば、矢を弓に固定でき、蝋燭が燃え短くなった時に燭臺につけられた紐を焼き切り、矢が放たれます」
矢の後がギザギザに折れていたのは、弦に引っかかってより固定させるためだと考えられる。僑月が護衛から借りてきた矢を片手に明渓の話を聞いている。
「つまり、対岸の燈りは囮という訳か。確かにそれだと、折れた矢と蝋燭は説明がつく。しかし十字弓(ボーガン)と紐はどうするんだ?」
そこまで言って僑月自が気づいたようだ。
「処分するには、船に乗らなくてはいけない。つまり、犯人は船に乗っていた人という事か」
「うん、ただそれは、あくまでも可能の一つだけれど」
そこまで言ってから明渓はふと疑問に思った。どうして、狙われたのが香麗妃だったのか。それは、青周も僑月も同じようなので、そこまで言う必要はないかな、と口をつぐむ事にした。
船から詰所を見ると、手當てを終えた魅音と、魅音を乗せる為の籠が用意されていた。今から行っても、怒られるのは火を見るより明らかにだけど、とりあえず行かなくてはいけない。
(普通に宴を楽しめばよかった……)
そうぼやきながら、明渓は舟を降りて行った。
ジャンルを推理に変えました。
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