《【書籍化】これより良い件はございません! ~東京・広尾 イマディール不産の営業日誌~》第十九話 市ヶ谷で釣り験
男の意外と子どもっぽい一面を見てキュンとしてしまうのは、きっと彼にをしているからだよ。
そうと決まれば善は急げ。私は早速、水谷様にご紹介出來る件がないかを確認し始めた。
將來的に家庭を持っても対応できる。將來に亙って、資産価値が落ちにくい。が1人暮らししても安全。大手町は勿論、んな場所への通アクセスがいい。そして、予算4500萬円以下。
家族向けだと小さくともやはり2LDKはしい。となると、大55平方メートル以上にはなる。これを4500萬円以下でとなると、不産業界で重寶されるような都心6區の駅近はなかなか難しい。あるにはあるのだか、選択肢が非常に狹まる上に難あり件な事が多いのだ。
もちろん、中古件の販売価格の決定権は最終的にはオーナーさんにあるので、優良件を低価格で放出するのない方もいる。しかし、滅多にいないと言っていい。
私はやはり最初に水谷様にご案した件と同様に、しだけ都心部を外れた地域を探し始めた。都心部まで電車にし乗れば、選択肢は急激に広がる。ただ、そういったところは駅近を選ばないとマンション価格が下がりやすいので、注意が必要だ。
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「藤堂さん、今日この後って忙しい?」
イマディール不産の件報とにらめっこしていた私は、ふと斜め後ろから聲を掛けられた。いつの間にか桜木さんが自席の後ろにいて、こちらをみている。
「今日? お客様のアポは無いので大丈夫ですが?」
「よかった。じゃあ、裝工事を終えた件を確認しに行くから、一緒に行かない?」
「分かりました。ご一緒します」
私はすぐに頷いたが、心ではクエスチョンマークが沢山浮かんでいた。9月にり、私は自分1人で営業するようになり、桜木さんに同行することはなかった。なぜ今日はわれたのだろうと、私は首をかしげたのだった。
***
「今日行くところはね、番町だよ」
「番長??」
私は隣を歩く桜木さんを見上げて、小首を傾げた。『番長』なんて駅、聞いたことが無い。そもそも、『番長』とは、非行に走った年のボスを指す言葉のはずだ。まさか、あちら系の方がオーナーの件なのだろうか。
無言のまま眉を寄せる私を見て、桜木さんが説明を続けた。
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「番町っていうのは、千代田區の皇居の裏手の辺りのエリアだよ。千鳥ヶ淵周辺で、不産業界では最も資産価値が落ちない地域としても有名だ」
「そんなんですか? 初めて聞きました」
千代田區バンチョウ? やっぱり聞いたことがない。けれど、桜木さんが資産価値が落ちにくい地域と言うなら、きっとそうなのだろう。
「便利な地域な上に供給がないから、プレミアが付きやすいんだ。俺も、仕事始めて初めて『番町』の地名を知ったよ。占有面積100平方メートル以上の超高級件が多いけど、今日は36平方メートルの1Kだよ」
桜木さんが案してくれたのは、築14年の中規模マンションだった。半蔵門線の半蔵門駅から徒歩3分、他に、JR中央線、地下鉄南北線、新宿線、有楽町線が通る市ヶ谷駅にも徒歩10分かからない。とにかく、めちゃくちゃ便利な場所だ。共用部分の管理制も見る限りはしっかりしているし、エントランスは晝間はコンシェルジュ、夜間は警備員の24時間有人制だ。
リノベーションが施された裝は玄関から廊下にかけては大理石タイル、主寢室となる10畳の部屋には白いフローリングが敷かれていた。全的に白でまとめられており、清潔があり明るい雰囲気だ。
ちなみに、販売予定価格は36平方メートルに対して4380萬円となかなかのものである。新築時は4100萬円だったそうだから、なんと、値上がりしている。とは言っても、今この辺りの同スペックの新築を買おうとすると5000萬円近いので、それに比べればお手頃である。
「素敵なマンションですね」
私はもう1度部屋を見渡した。広い室はキッチンへ続くドアと廊下へと続くドアがついている。濃い木目調のドアは白いフローリングとよく合っていた。値上がりするのも頷けるような、本當に素敵なマンションだ。
「そうだね」
ホームページに掲載用の裝寫真を撮り終えた桜木さんも部屋を見渡し、表を綻ばせた。
「やっぱ、これを買うのは投資家ですかね。1Kだしハイクラスなビジネスマン向けの賃貸需要狙いかな」と私は言った。
「うーん、どうだろう。投資家も有り得るね」と桜木さんが答える。
桜木さんはそこで一旦、言葉を區切った。
「藤堂さん。マンションの価値は何で決まるか覚えてる?」
「えっと、立地です」
私の答えを聞いた桜木さんは満足げに頷いた。
「そう。マンションの資産価値には立地が1番効いてくる。ここは、日本有數のマンション資産価値が落ちない地域だ。だから、何年か住んで転売しても、殆ど値下がりしていない」
それを聞いて、私はハッとした。今まで、私は『マンションを買う』イコール『そこにずっと住み続ける』という固定観念を持っていた。マイホームは一生に1度の買いだと無意識に思い込んでいたのだ。
けれど、人気があってプレミアが付くような地域では、資産価値が落ちないから転売する、もしくは別の誰かに貸して不産収を得る選択肢もあるのだ。
これはもしかしたら、水谷様にご紹介したらいいのではないだろうか。私はすぐにそう考えが至った。
「桜木さん、ありがとうございます」
「ん? 何が?? 藤堂さんこそ付き合ってくれてありがとうね」
桜木さんはすっとぼけたようににこっと笑ってそう言った。この人、本當に仕事が出來るなぁ、と心してしまう。件を出る間際、桜木さんは腕時計で時間を確認した。
「もう5時過ぎだ。ってことで、帰社するのもなんだし、よかったらもう1カ所付き合ってよ」
「もう1カ所??」
「うん。いつも電車から見えて、1度の行ってみたかったんだ。あんまりの人は居ないかもしれないけど、きっと藤堂さんは食いつく気がする」
桜木さんがニヤッと笑う。いつも電車から見えて行きたかったとは、一どこなのだろう。あんまりの人向けじゃない? 私は食いつく?? さっぱり見當が付かなかった。
迷いなく歩く桜木さんの橫にくっついて市ヶ谷駅に向かった私は、その景を見て思わず歓聲を上げた。そこには私の予想すらしなかった施設があったのだ。
「桜木さん! 釣りだよ、釣り! 釣りしてる!!」
「うん、釣りだね」
興する私を見て、桜木さんはにこにこして頷いた。
なんと、市ヶ谷駅のすぐ脇を流れる川に釣り堀があったのだ。道路から見下ろすと、線路の脇を流れる川に四角い釣り堀があり、沢山の人が釣り糸を垂らしている。近所に住んでいるのか普段著姿のおじちゃんから、サラリーマン風の人、はたまたデート中のカップル達が皆竿を持ち、太公と化していたのだ。
「私、釣りしたことないです。やりたい!」
「やっぱそう言うと思った。俺も初めて」と、桜木さんが笑う。
付でお金を払うと釣竿と練り餌というタイプの魚の餌を渡された。基本的に時間制であることや、様々な注意事項の説明をけて、私達は釣り堀のエリアへと場した。
私は早速、瓶ビールをれる黃いケースを逆さにしたような椅子に座った。付で渡された練り餌を指で丸めて釣り針に刺すとそれを見よう見まねで釣り堀に垂らした。背後には中央線が時々走り、こんな都會で釣りとはなんとも不思議な覚だ。季節柄、しだけ涼しい、爽やかな風が頬をでた。
わくわくしながら待つことしばし。ぷかりぷかりと浮く浮きにを見守った。しかし、待てど暮らせど引きがない。私は恐る恐る、釣竿を上げてみた。
「あれ? 餌がない」
いつの間にか私の餌は無くなっていた。魚に食べられたのか、水で溶けたのかは謎だ。気を取り直してもう一度餌を付け、釣り堀に垂らす。やっぱり釣れない。
「釣れませんね……」
「魚、いないんじゃないか??」
「いや、あの人とかさっきからめっちゃ釣ってます」
私と同じく全く釣れずに口を尖らせる桜木さんは、魚がいないのではと主張しだした。いや、釣り堀で魚がいないのは有り得ないでしょうに。現に、釣り堀を挾んで対岸にいるおじさんはさっきから何回も釣っているのだ。
「うーん。きっと場所が悪いんだ。あっちに行ってくる」
桜木さんは痺れを切らしたようで釣りの達人のおじさんの隣に陣取った。それでもやっぱりお魚さんは引っ掛かってはくれなかった。
「くっそ! 絶対に次は釣る」
帰り道、桜木さんはずっと悔しがっていた。1匹も釣れなかった事がよっぽどお気に召さなかったようだ。竿がいけなかったのかもとか、餌を生き餌にすればいけるかもとか、ずっとぶつくさぼやいていた。かく言う私も1匹も釣れなかったけどね。でも、何よりも、ふて腐れる桜木さんがなんだかおかしくて、私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ」
「どうしたの?」
桜木さんが不思議そうにこちらを見て首をかしげる。
「いえ。桜木さんってすごい負けず嫌いだなぁと思って。意外と子どもっぽいところもあるんですね」
「え?」
桜木さんは目をぱちくりとしたあと、バツが悪そうに首の後ろに片手を當てた。よく見るとほんのり耳が赤い。
なんか、可いなぁと思って私は口元を綻ばせた。
魚は釣れなかったけど、桜木さんの意外な一面が垣間見られたので、私にとってはとても楽しい時間だった。
太公を知らない人は、自分で調べて本を読んでね。
私も2時間挑戦してきましたが、釣れませんでした。
でも、釣り名人は大量に釣れていた。なぜ??
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