《【書籍化】俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」》06.悪徳ギルドマスター、院長に制裁を加える
俺は大陸北西の港町【ウォズ】へとやってきた。
【古い友人】の話だと、デルフォイは善人で有名らしい。
街一番の大きな建、【デルフォイ孤児院】へとやってきた。
フレデリカ、そして孤児のユイとともに訪れると、院長室へと通された。
そこそこ待たされた後、
「おお、ユイ! 心配したのだぞぉ! どこにいたのだぁ!」
部屋にってきたのは、にやけ面が気悪い、中年男だった。
「わたくしはデルフォイ、ここの院長をしているものですぅ」
「アクト、冒険者ギルドのギルマスだ。この子を森で保護してな。送り屆けに來たところだ」
軽く探りをれるが、デルフォイは顔ひとつ変えなかった。
「これはとんだご迷を! このやんちゃ娘め、勝手に孤児院を抜け出してはいかんじゃないかぁ~」
ユイは怯えたように震えている。
「さぁユイ、こっちへおいでぇ?」
「その前にひとつ、あんたと渉したいことがある」
「渉? この子を保護し送り屆けてくれた禮金のことですかなぁ? もちろん! 支払いますよぉ?」
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俺は首を振って、魔法袋から書類を取り出す。
「この人売買の証拠となる書類を、おまえがいくらで買い取ってくれるか、その値段渉だ」
「人売買、はて? そんなことしてませんがぁ?」
「まあいい、その書類に目を通してみろよ」
デルフォイは俺が投げて寄越した書類を手に取り、目を走らせる。
さぁ……と顔が青ざめる。
「どうして……これを、貴様が持っている……? おまえが盜んで渡したのか、ユイぃ!」
彼はフレデリカのにギュッとしがみつくが、しかし、ハッキリと首を振る。
「うそをつけぇ! おまえが盜んだんだろぉ! でなければ、院長室の金庫に厳重保管している書類を、こやつが持っているわけがなぁい!」
「ユイは無関係だ。それは俺が作った偽だよ」
「偽ぉ!?」
揺するデルフォイから書類を奪い取り、突きつける。
「俺の鑑定眼は特別製でな。おまえがこの部屋で、人売買に関する書類に記載している【過去】を見た。あとはその容を、おまえが來るまでの間に、サラッと書き寫しただけ。大事な書類は今も金庫の中だよ」
「さすがマスター、悪事の証拠をたちどころに探し出し、渉材料にするとは」
俺はソファに深々と腰掛ける。
「正規の手続きを踏まない人売買は重罪だ。その証拠となる書類の容は、俺の頭の中にある」
「く、くそ……! い、いくらだっ?」
渉に乗ってきたな。
まあ人売買がバレたら即座に逮捕になるからな。
「この孤児院の土地と建の権利、あとは子供達全員の柄、でどうだ?」
「ふ、ふざけるな! そんなバカな渉、立するわけがなかろうが!」
「俺がその気になれば、おまえは一発でお縄につくんだぞ? さっきの條件くらい安いもんだろ」
「く、くそぉ……! 悪魔か貴様は!」
「その通り。どうする?」
「く、ぐぬぬ……くそ! し待っていろ!」
デルフォイ院長は棚から書類を取り出し、アクト・エイジに譲渡するサインをする。
「土地、建の権利、子供達の柄、すべて譲りけた」
「これで人売買の件は、黙ってるんだろうな!」
「もちろん俺は言わないぞ。俺はな」
がちゃり、と部屋のドアが開く。
「りょ、領主様ぁ!?」
ウォズの街の領主、【ウォズ】がやってきたのだ。
「アクト……またこんな悪いことしてるのか」
彼は苦笑しながら、俺に近づいてくる。
「ど、どういうことだ!?」
「どうもこうも、領主ウォズは俺の舊友だ。さてし訊いておきたいことがあるんだが」
さぁ……とデルフォイの顔からの気が引いていく。
「ま、待てぇ! 貴様ぁ! 契約違反だぞぉ!」
「ああ、俺が言えばな。……ユイ」
「は、はい……」
フレデリカから離れて、ユイが俺の元へやってくる。
「領主様に言ってやれ。このクソ院長が、おまえの友達になにをしたのか」
「い、言うなぁ! ユイぃい! 言うなぁ!」
デルフォイがユイに襲いかかろうとする。
「フレデリカ」
「意」
彼は疾風のごとく駆け抜け、足を払い、関節を決めて、院長を拘束する。
「ユイぃ! てめえ! 言ったら殺すぞぉ!」
びくんっ、と怯えるユイの肩に、俺は手を置く。
「安心しろ。俺がついてる」
「……はいっ」
ユイは領主ウォズの前までやってくると、力一杯言う。
「デルフォイさんは、あたしの大事な友達を、悪い人に売り飛ばした、悪い人です!」
ウォズはふむ、と考え込む仕草をする。
「わかった。騎士を手配し、その男を連行してもらおう」
「なぁ!? りょ、領主さまぁ! そんなただのガキの言うことを信じるというのですかぁ!?」
「ただの子供ならな。しかしこの子はアクトが連れてきた子。なら、信用に足りる人なのだろう」
「そんな……何者なんだ、その男は……?」
ウォズ領主は苦笑しながら、俺を見て言う。
「自稱極悪人の、お人好しだよ」
★
後日、冒険者ギルド【天與の原石】の、ギルマスの部屋にて。
ユイが俺の元へやってきた。
「アクト様! お久しぶりです!」
かつて暗い表でうつむいていた彼が、今は明るい笑みを浮かべていた。
「新しい孤児院の住み心地はどうだ?」
「最高です! 職員さんはみんな優しいし、ご飯もお腹いっぱい食べられるし、清潔なベッドで眠れる! 天國です!」
あのあと、デルフォイは騎士の元へと連行された。
領主(ウォズ)の立ち會いのもと、家宅捜索が行われ、悪事の証拠が見。
デルフォイは違法な人売買を行っていた罪で逮捕。
殘った孤児院の土地と建の権利、そして子供達の柄は俺が保護した。
権利書は売り払い、その金で、売り飛ばされた子供達を全員買い戻した。
あとは孤児達が暮らしていける、新しい孤児院を作り、そこでユイたちは生活している。
「あの……アクト様。ほんとうに、なにからなにまで、ありがとうございました!」
「気にするな。ちょうど町長が孤児院を建てたいって言ってたからな。あいつに貸しを作っただけだ。おまえのためじゃない」
ぽかん……とユイが口を開く。
「こういう人なんです、マスターは」
フレデリカが耳打ちすると、ユイが納得したようにうなずく。
「用が済んだら早く帰れ。友達とでも遊んでいろ」
「あの……実はひとつ、お願いがあってきました!」
ユイは背筋をただすと、深々と頭を下げた。
「あたしを、アクト様の、弟子にしてください!」
彼は真剣な表で言う。
「あたしもアクト様のような、強い人になりたいんです。もう、前みたいに、何もできずに泣いてるばかりの弱い自分が、嫌なんです」
「そうか。なら頼む」
「あたしのような小娘が、何ができるんだって斷ろうとする気持ちはわかります! けど、あたし頑張って……って、え?」
ユイが目を丸くする。
「い、今……なんて?」
「弟子りを許可すると言ったのだ」
困するユイに、俺は言う。
「俺の弟子になりたいんだろ? ならおまえを次期ギルドマスター候補として、育ててやる。不服か?」
「い、いえ……! ぜひ、お願いします!」
俺は立ち上がって、ユイに近づき、彼の頭をなでる。
「おまえはまだ子供だ。孤児院で気楽な生活を送ってれば良いを。こっちの世界に足を踏みれるのは、まだ早い」
「それでも……いち早くなりたいんです。あなたのような、最高のギルドマスターに!」
彼の強い決意のまなざしを見て、俺は確信する。
「おまえならなれるさ。俺と違って、良いギルマスにな」
「いえ! あたしはアクト様のような、悪徳ギルマスになりたいです!」
「変わったヤツだな、おまえ」
するとユイと、そしてフレデリカが、笑って言う。
「「あなたほどではありませんっ!」」
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