「【ルーナ】、てめえはもう勇者のパーティに要らねえんだ。出て行け」

そのはルーナと言った。

アクトのいる王國とは、別の國の勇者のパーティで【回復士（ヒーラー）】を擔當していた。

ダンジョン探索を終えて、街へと戻って、一泊した翌日。

朝食の席で、リーダーにして勇者バルカンから、突如として追放を言い渡されたのだ。

「そんな……どうして！　アタシ、すっごく頑張っていたのに……」

「簡単だ。てめえがパーティで役に立っていないからだよ。回復ならうちの【聖】のメアリーがいるからな」

勇者バルカンの隣には、満なの、妖艶なが座っている。

「メアリー加前ならいざ知らず、回復士の上位互換である聖がパーティにいるんだ。もうお前は要らねえよ」

「そんな……ひどいよ。今日まで一緒に、冒険してきた仲じゃない……」

ルーナとバルカンは同じ村出の、いわゆる馴染みというやつだ。

ふたりは共に冒険者となり、今日まで頑張ってきたのだ。

「馴染みのよしみでよ、今日まで手元に置いといてやったけどよ、実はおれとメアリー……昨日から付き合いだしてな」

バルカンはメアリーを抱き寄せると、白晝堂々と熱烈なキスをする。

「つーわけで、もうおまえは邪魔なんだ。悪いな」

別にバルカンを異として見ていなかったから、男を取られてショックとは微塵も思わなかった。

「でも……あんた大丈夫なの？　アタシがいなくなったらヤバいわよ」

「は……？　んだよいきなり」

「確かに治癒の力では、メアリーのほうが上よ。けど気づいてないようだけど、あんたたち弱すぎるのよ。だから補助魔法でアシストしてやってたのよ」

ルーナの告げた真実を……しかし、バルカンはぷっと笑う。

「なーにバカなこと言ってるんだよ。おれたちが弱い？　ざけんなよ」

「そーよぉ。バルカンはとぉっても強いじゃない。きっとこの小娘、噓ついてるんだわ」

「いや噓じゃないんだけど……」

ルーナは治癒（ヒール）以外に、腕力上昇などの補助魔法を習得していた。

「そもそも回復士がなぜ補助魔法を覚えるんだよ。治癒専門職だろ？」

「だからそれは、あんたが弱すぎるから、ゼロから補助魔法を覚えたんじゃない！」

「あーもう見苦しいなぁ！　ハッキリ言えよ！　おれのことが好きなんだろ！？　だから出て行きたくないから必死になんだろ！？」

まるで見當違いな発言に、ルーナは呆れてしまう。

「殘念だけどてめえみたいなガリガリのチビには1ミリたりとも魅力を覚えねえんだよ！　あれしろこれしろってガミガミうるせえしよお。その點メアリーは違う。人だしおしとやかだし言うことなしだ！」

それは自分にとしての魅力がないから、追い出すと言われているようなものだった。

長年付き添ってきた馴染みとの絆よりも、ちょっとばかり外見の良いとのを優先したのである。

……とてもショックだった。

「……わかった！　出てくわよ！」

涙を流しながら、ルーナは宿を飛び出す。

がむしゃらに走りながら、街を抜ける。

弱すぎる勇者の馴染みを支えようと、ゼロから補助魔法を習得した。

けどそれが、急にどうしようもなく、無駄な行為に思えた。

……結局、世の中見た目が全てなのだろう、努力は評価されないのだろうと、そう思っていた。

【彼】に、出會うまでは。

「ルーナ。俺の元で働かないか？」

彼は【天與の原石】と呼ばれるギルドで、ギルドマスターをやっているらしい。

「ゼロからそのレベルの補助魔法を習得するなど、余人には到底できないことだ。その努力は賞賛に値する」

ギルマスのアクトは、真っ直ぐに、自分の瞳を見て言う。

「貴様がしい。うちでその腕を存分に振るってしい」

「……でも、アタシ、チビだし、ガリガリですし、見栄えよくないですよ？」

「バカ言うな。貴様、人の価値が外見だけで決まるわけないだろ？　大事なのは使えるかどうか、ようするに中だ。貴様は、凄まじい可能をそのにめている……どうした、なぜ泣く？」

彼は深々と、頭を下げた。

「ありがとう……ございます……【ギルマス】。アタシ、ここで頑張ります！」

かくしてルーナは【天與の原石】所屬となった。

後に彼はメキメキと頭角をあらわしていく。

……一方で、ルーナの補助魔法に支えられていた勇者バルカンは転落していく。

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