《【書籍化】俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」》37.悪徳ギルドマスター、圧迫面接する

ある日のこと。

俺の立ち上げたギルド【天與の原石】のギルド會館には、たくさんの人が押し寄せてきた。

『フレデリカ、なんだこいつら?』

【ショートカット】の銀髪のメイド、フレデリカに、俺は尋ねる。

『彼らはギルド加者たちです』

『ほぅ。なぜこんなにたくさんいるんだ?』

『どうやら、先日魔族を倒した【彼ら】の活躍を、耳にしたのでしょうね』

なるほど、新聞にも載ったくらいだ。

興味を引かれて、門を叩いたのだろう。

『あんたがギルドマスター・アクトさんかい?』

ガタイのいい男が、俺に話しかけてきた。

『おれさまは【ヴェリン】。聞いたぜ、あんた人材育のプロフェッショナルなんだろ? ちょっとおれさまも強くしてくれよぉ』

ヴェリンを始めとした、ギルド加者達が、ニヤニヤ笑いながら俺に近づいてくる。

『俺は別に人材育をメインにやっていない。ここは被追放者たちの寄り合い(ギルド)だ。所屬があるヤツは帰れ』

だが、誰一人として出て行くものはいなかった。

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『すみまちぇーん、おれさまぁ、昨日ギルドを追い出されて、帰る場所がないんでちゅ~』

ヴェリンに続くように、自分も自分も、と加者達が言う。

『……マスター。こいつら、噓ついてます』

フレデリカが俺に耳打ちする。

聴覚に優れており、聲や心音から、噓を見抜けるのだ。

『……おそらくマスターの鑑定眼と育力が目當てです。強くなったら元のギルドへ戻るに決まっています』

やれやれ、有名になるのも考えだな。

『よし、では面接を行う』

『『『面接、だと?』』』

『ああ。さすがにこの大人數、全員を雇うわけにはいかんからな』

フレデリカに數えてもらったところ、加者はざっと數えて50名だそうだ。

『ま、確かにそーだなぁ。面接、いいぜぇアクトさん。じゃおれさまが一番な!』

ヴェリンが一歩前に出て言う。

そのとき、ドンッ……! と彼が隣にいた子供を突き飛ばした。

『あー……? んだよ、このヒョロガリ?』

倒れたのは、【金髪の年】だ。

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まだあどけなさが殘っている。

おそらく、人(15歳)してない。

『てめえもこのギルドにりたいってかぁ?』

『……はい』

ヒョロガリの年は、小さくうなずく。

『ぎゃははっ! 無理無理! てめえみたいなガリガリのチビ助に、冒険者がつとまるわけねーだろバーカ!』

ヴェリンがヒョロガリの金髪を、暴に摑みあげる。

『大人しくママのところへ帰れガキぃ』

ぶんっ、と年を投げ飛ばす。

俺はその子を抱き留める。

『ケガないか?』

『……はい』

俺は年を下ろすと、ヴェリンをにらむ。

『これ以上騒ぎを起こすようなら、面接をけさせないぞ』

『はーいちゅいまちぇーん。……ちっ、おれさまよりガキの分際で、えらっそうに』

ヴェリンの言葉はしっかりと聞こえていた。

フレデリカから氷の魔力をじたので、ポン……と肩を叩く。

『やめろ。時間の無駄だ』

『……はい』

俺は加者達を見渡して言う。

『では、これより面接を始める』

『はいはーい! おれさま一番がいいでぇすぅ~』

ヴェリンが憎たらしい聲でそう言う。

『いや、面接はこの場で、全員同時に行う』

『『『はぁ~?』』』

する加者達。

俺は彼らを一瞥し……うなずく。

『そこの年以外、全員不合格だ。帰れ』

『え? おれ……ですか?』

金髪のヒョロガリの年が、戸いながら言う。

『そうだ。これにて面接は終了。解散』

『ちょっ! ふざけんなよおい!』

ヴェリンが俺につかみかかってくる。

『なんだ? 不服か?』

『ったりめえだ! 面接もせず不合格なんて舐めたまねしやがって!』

『面接は行った。貴様らの過去は、俺が調べさせてもらった』

俺の鑑定眼【時王の目】は、過去から未來、全てを見通す。

こいつらの目を見て、過去を読み取ったのだ。

『ヴェリン、貴様【生え抜きの英雄】の所屬だな』

『なっ……!? ど、どうしてそれを……』

『俺の目に噓は通じない。ここに集まっているやつらもそうだ。貴様らには帰る場所がある』

俺は集まったやつらを見渡して言う。

『ここにれば無條件で潛在能力を引き出してもらえる。大方そんなウワサを耳にして來たんだろう。違うか?』

うっ……と言葉に詰まる加者たち。

『とは言え、確かにこれでは不満が殘るヤツらは多いだろう。そこで、簡単なテストを行おう』

『『『テスト?』』』

『ああ。見事合格すれば、天與の原石への加を許そう。前のギルドをやめるかどうかは貴様らに任せる』

フレデリカが、俺に耳打ちする。

『……マスター。それでは、潛在能力を引き出してもらうだけもらったら、出て行くものが後を絶ちませんよ?』

『心配するな。俺に任せろ』

俺はヴェリンたち希者達を見る。

『では、試験を開始する。全員、別會場へ移しろ』

『やってられるかぁああああああああ!』

數時間後、ギルド會館の裏にある、トレーニング施設にて。

大汗をかいたヴェリンが、手に持った木刀を、足下にたたきつける。

『いつまで素振りさせやがるんだよチクショウ!』

者達に出したテスト。

その容は、たった一つ。

【俺が止めろ、と言うまで、素振りを続けること】

『まだ止めろとは言ってないぞ』

『ざっけんじゃねえ! もう何千回素振りしたと思ってやがる!』

『知るか。テスト容は、俺が止めろというまで続けることだ。回數は合格條件じゃない』

すでに十何人の希者達が、その場にへたり込んでいる。

『この素振りに、何の意味があるっていうんだよ!』

『それを貴様が知る必要はない。俺がやれと言ったことをやれ。できなきゃ止めてもらって一向に構わんぞ』

『くそっ! 冗談じゃねえ! やめたやめたっ!』

ヴェリンは木刀を投げ出す。

『楽して強くなれるって聞いたから來てやったって言うのに、話しがちげーじゃねーか! こんな詐欺ギルドこっちから願い下げだ!』

ぺっ……とヴェリンがつばを吐いて、きびすを返す。

『良いのか? 後からりたいと言ってももう遅いぞ』

『ケッ……! うっせえ詐欺師! 周りに言いふらして評判下げてやる! 天與の原石のギルドマスターは、噓つきクソ野郎だってよ!』

ぞろぞろと……ヴェリン達が出て行く。

50名近くいた希者は、瞬く間にいなくなった。

『さすがマスター。見事な悪役っぷりでしたね』

フレデリカがタオルと飲みを持って、やってくる。

『これで同じような愚かな輩は來なくなるでしょう。殘るのは、本當に助けを求めてやってくる、原石だけ』

が見やる先には、ヒョロガリと馬鹿にされた金髪の年がいた。

さっきの騒ぎの最中も、彼は素振りを続けていた。

『おい貴様。最後の一人になったみたいだぞ。なぜ止めない?』

『ぜぇ……! はぁ……! だ、って……まだ止めろと、あなたに……言われて、ない……』

年は愚直に素振りを続ける。

回數を増すごとに、その一撃は鋭さを増している。

『フレデリカ。氷魔法をヤツに放て』

『え? し、しかし……』

『いいからやれ』

フレデリカは戸いつつも、初級氷魔法【氷結(アイシクル・ブレス)】を発

氷雪の風が年に押し寄せる。

『肩の力を抜き、振り下ろせ……今!』

彼は振り上げた木刀を、俺が指示したタイミングで振り下ろす。

凄まじい威力の斬撃は、フレデリカの魔法を真っ二つにした。

『すごい……手を抜いたとは言え、フェンリルの魔法を、木刀で切って見せたですって……』

驚愕するフレデリカを橫目に、俺は年を見やる。

『せい! はっ! せいっ!』

ヒョロガリの年は、あろうことか、まだ素振りを続けていた。

ただし、さっきよりも一撃の鋭さは増している。

木刀を振るたびに突風が巻き起こっていた。

『合格だ』

『せいっ! はっ! せいっ!』

『おい、合格だ』

『せやっ! はっ! せいっ!』

『……ま、まさかこの子、止めろって言わない限り、永遠に素振りを続けるんじゃないですか?』

フレデリカは、金髪の年を見て戦慄する。

『止めろ』

その瞬間……彼は正面から倒れ込んだ。

『ゼハッ! ゼハッ! ゼハッ! ゼハッ!』

がくがくと、筋をけいれんさせる。

汗みずくだった。

『なんという愚直な子供でしょう。それに……さっきの一撃。並の才能ではありません。マスター、この子は?』

『ああ、【勇者】になれる可能めている』

『ほ、ほんとうですかっ!?』

金髪の年が顔を上げて、目を輝かせて言う。

『貴様に噓を言って、俺に何のメリットがある?』

『た、たしかに! そのとおりですね!』

俺はしゃがみ込んで尋ねる。

『合格だ。名乗れ。まさかヒョロガリが名前じゃないだろ?』

『はいっ! おれは……』

「というのがおれとアクトさんの最初の出會いだぞ!」

ある日の、ギルド【天與の原石】にて。

勇者パーティ、魔族討伐お疲れ様會、という頭の痛くなるような名前の飲み會が開かれていた。

「ローレンスさん、昔ヒョロガリだったんですかっ? 意外です!」

魔法使いイーライが、心底驚いた風に、隣の金髪の大男を見て言う。

「うむ! 當時は良いものを食えていなかったからな! 背も低く、痩せていたんだぞ!」

ローレンスがガツガツガツ! と料理をしこたま腹に詰め込んでいく。

「……まったく。貴様ときたら、食費が掛かって仕方がなかったぞ」

俺は【當時】を思い出す。

フレデリカの魔法を斬って見せたのは、勇者になる前のローレンスだ。

「未だったおれを勇者にまで長させたのは、間違いなく! アクトさんの手腕があってこそだ! ありがとう、おれを拾ってくれて!」

ぎゅっ、とローレンスが俺にキツく抱きついてくる。

「勘違いするな。貴様を育てればいずれギルドに大きな利益をもたらすと思ったからだ。見込みのないヤツは切った」

現にヴェリンとか言うバカは、の丈に合わないクエストをけて、ギルドに大迷を何度もかけた後、勝手にどこかで野垂れ死んだらしい。

「さすがマスター。慧眼でいらっしゃいます」

【長い銀髪】のメイド・フレデリカが、俺にお酌する。

「うむ! アクトさんは、世界最高の見る目を持つ、最高の指導者だな!」

やれやれ、と俺はため息をついて立ち上がる。

「俺は寢る。あとは勝手に飲み食いしてろ」

金貨の詰まった袋を取り出し、ローレンスに放り投げる。

「上級魔族討伐、ご苦労だったな。貴様のおかげでギルドの名聲はうなぎ登りだ。それは謝禮だ。け取っとけ」

ニッ……! とローレンスは笑って言う。

「ありがとう! 皆! 今日はギルマスのおごりだ! じゃんじゃん食って飲んで騒ぐぞ!」

「「「さすがギルマス-! 太っ腹ー!」」」

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