《【書籍化】俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」》41. 悪徳ギルドマスターと集う「ざまぁ」された者たち2

その日、俺は【それ】を察知した。

「…………」

ギルマスの部屋にて、俺は打合せの最中だった。

「アクト様、どうしたんですか?」

「マスター?」

弟子のユイ、そしてメイドのフレデリカが、俺の前で不思議そうに首をかしげる。

「……すまない。なんでもない」

俺は左目を手でる。

目を閉じると、そこには【とあるビジョン】が見えたのだ。

「…………」

「マスター、顔が優れないようですが」

「だ、だいじょうぶですかっ?」

俺は首を振る。

「問題ない。続けるぞ」

その後、俺は打合せを終える。

ユイは書類を持って部屋を出て行った。

部屋には俺と、フレデリカだけが殘る。

「さて、マスター」

「なんだ?」

「何が見えたのですか?」

……こいつ、気づいていたのか。

「何のことだ?」

「とぼけても無駄です。何か深刻な問題を抱えているのでしょう。わたくしの観察眼をなめないでください」

一緒に長くいるからか、フレデリカは妙に勘のいいところがある。

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「未來が、見えたのですよね?」

俺の目、【時王の目】は、過去・現在・未來を見通す。

俺自が制できる面もあるし、そうでないものもある。

たとえば、自分や他者に、の危険が及ぶとき。

そのビジョンが、俺の目に映る。

今回、魔なる者の影が、街に襲ってくる未來が見えた。

目的は、俺への復讐。

「……これは俺個人の問題だ。貴様は関係ない」

「ふーん」

フレデリカがムスッ、と顔をしかめる。

そして俺のすぐ隣に立つ。

「なんだ、その顔は?」

「別に。ふんだ」

普段冷靜なこのにしては、珍しく拗ねている様子だった。

「何が不満なんだ?」

「……だって、わたくしをのけ者にするんですもの」

にゅっ、と彼が隠している犬耳としっぽが出て、ばっさばっさ、としっぽがく。

「しっぽが當たってる。やめろ」

「マスターにとってわたくしって家族じゃないんですか?」

「バカ言え」

しゅん、としっぽと耳が垂れる。

「それ以上だ」

ぱたたたっ、としっぽと耳がく。

「ならばわたくしを頼ればいいと思います」

「だが、これは俺個人の問題だ」

俺の目に映ったそいつは、俺に対して深い憎しみを向けていた。

原因となるのは俺である以上、他人を巻き込むわけにはいかない。

自分のは、自分で拭く。

「何をおっしゃいますか、マスター。わたくしはマスターのおを拭くことくらい喜んでやりますよ」

フレデリカは微笑んで、俺に言う。

「わたくしをぜひ巻き込んでくださいまし」

やはり他人を巻き込むことには躊躇してしまう。

だがこいつはこれ以上言っても、言うことを聞かないだろ。

……こちらの気も知らないで。まったく。

「……町長に連絡を取れ。大至急だ」

ぱたたっ、とフレデリカは耳をかすと、頭を下げる。

「それとフレデリカ。わかっていると思うが、このことは他言無用だ。絶対に誰にも言うなよ」

「かしこまりました。お任せください」

……だが。

その日の夜、俺が町長の元へ行き、街の結界の強化や、避難導について相談してきた。

そして、俺の屋敷へと戻ると……。

「アクトさーん!」「待ってましたよギルマスー!」「こんばんはギルマスー!」

屋敷の玄関ホールにて、ギルメンたちが大勢、俺を待ち構えていた。

かなりの數だ。

パッと見る限りだと、天與の原石に所屬する全員がいた。

「……おい、フレデリカ。どうなっているこれは? 他言無用だと言っただろう」

「え、あれは他人に言えという前振りだったのではないのですか?」

しれっと言う駄犬の頭を、ぺんっとはたく。

「貴様ら、何をしてるんだこんな夜中に」

するとギルメンたちが、笑顔で言う。

「人手がいるんすよね!」「おれら手伝いますよ!」「水臭いじゃないっすか! 黙ってるなんて!」

フレデリカは俺に言う。

「マスター。みなマスターが困っていると言ったら、事を聞かずに、快く手伝ってくれるとおっしゃってくださいました。彼らも……」

ギルメンじゃないやつも、そこにはいた。

「ヨーコ。おまえこんなとこで何してる……?」

宮廷魔導士となった、かつてのギルメンのだった。

「ギルマス、あたしも手伝います。ぜひ、手伝わせてください!」

「バカ言え。個人的な事に、宮廷魔導士を巻き込めるか」

「違います。宮廷魔導士のヨーコとしてではなく、アタシ個人として、お世話になったあなたのために、盡力したいんです!」

ヨーコ以外の元ギルメンもいた。

魔道師ギルドのリア等、街にいる元メンバーたちも。

『おれもいるぞー!』

を破るんじゃないか、というくらい大聲がする。

「ローレンス……?」

フレデリカの手には、通信用の魔法道が握られていた。

『黙っているなんてひどいぞ! 恩人であるアクトさんのためなら、地の果てからでも駆けつけるのに! というか駆けつけている途中だ』

「……バカ。勇者の仕事に戻れ」

『これは勇者の仕事でもあるぞ! あなたもおれの守るべき、するこの國の民ではないか! うぉおおお!』

通信が切れた。

おそらくあの金髪勇者は、こちらに向かって速で走っているのだろう。

「マスター」

フレデリカは微笑む。

「あなたの唯一の欠點は、一人で抱え込んで、なんでも勝手にやってしまうことです。それはみんなを守るためと存じ上げております。でも……」

俺の手を握って、彼が笑った。

「1人じゃどうにもならないと、本當に困った時くらいは、頼ってください」

ギルメンたちも、元ギルメンも、笑顔で同意する。

「そうだぜ!」「アクトさんには返しきれない恩が山ほどあるんだ!」「おれたちを頼って下さいよ!」「あなたのために頑張らせてください!」

わからん奴らだ。

俺は別にこいつらに何かしたつもりはない。

俺は俺のために、々やって來たつもりだ。

だというのに、なぜみんな俺のために行する。

「簡単な理屈ですよ。みんな、われらが最高のギルドマスターのことを、心からしているからです」

同意するように、その場にいたやつらがうなずいていた。

「さて、マスター。どうします?」

俺は主人の命令に背いた、犬の腕を引いて言う。

「……貴様。なぜしゃべってしまったのだ。個人的な事だから、他人を巻き込まんと言っただろうが」

フレデリカもまた小聲で返す。

「しかし街に魔のものが攻めてくるなら、人手はいるでしょう? ひとりでどうなさるおつもりだったのですか?」

「……なんとかするつもりだった」

敵のボスはわかっている。

街に騒ぎが起きる前に、そいつをどうにかするつもりだった。

最悪、【奧の手】を使えばいいと思っていた。

「……【アレ】は、使ってはいけません。……こんなところで、命を削るような真似はやめてくださいまし。みな悲しみます」

誰にも聞かれないように、フレデリカが懇願する。

は震えていた。

目から涙を流す。

それを見て、俺はため息をついた。……やれやれだ。

俺は彼らを見渡し、頭を下げる。

「みな、力を貸してくれ」

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