《【書籍化】俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」》57.悪徳ギルドマスター、本部長から打診される
ローレンス達が四天王の一人を倒してから、ひと月ほどが経過した。
俺はギルド本部長に呼ばれて、王都を再び訪れていた。
「アクト、今回はご苦労だったな」
ソファーセットの正面に座るのが、冒険者ギルド、ギルド協會本部長の【ダイゴ】だ。
現役を退いてかなり日にちが立つはずなのだが、衰えぬその鍛え抜かれたと、焦げたが特徴的だ。
「ローレンス達の活躍は、おれら冒険者のイメージアップにつながった。おまえのおかげだよアクト。さすがだぜ」
テーブルの上には、今日の朝刊が置いてあった。
ローレンス勇者パーティが四天王を撃破したニュースは、連日掲載されている。
「俺が四天王を倒した訳じゃないですよ」
「だが、みんなおまえの手柄だって言ってるよ。ほら」
ダイゴは新聞を開くと、勇者パーティのインタビュー記事が載っていた。
【冒険者ギルド・天與の原石のアクトさんに鍛えてもらって、極大魔法が無詠唱で使えるようになりました! 魔法使いイーライ】
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【アクトさんと出會って運命が変わりました。あの人に出會ってから毎日幸せな出來事が起きています。 回復師ルーナ】
【アクトさんは素晴らしい人だ! みんな、天與の原石にろう! 勇者ローレンス】
「どこぞの怪しい教団の勧広告みたいになってますね、これ」
「だがそのおかげで、アクトのギルドへの打診は山のように來てるぞ?」
他の冒険者ギルドだけでなく、商業や魔ギルド、魔道師ギルドなど、幅広いところから、天與の原石の人材をするという打診が來ている。
「困ったものです。みな、手放すにはまだまだ未すぎる」
「けれどロゼリアとかはもう十分なんじゃないか?」
「彼が出て行くことをんでいない以上、俺も無理に外に出す気はありません」
「そっかー……」
ダイゴは真剣な表で、俺を見て言う。
「ところでアクト。ちょっと頼まれてしいことがあるんだが」
「次期本部長に俺を指名の話なら、お斷りさせていただきます」
前々から打診はけていたのだ。
ダイゴの次の本部長に、俺を指名したいという話だ。
「やっぱ、だめか?」
「ええ、俺にはまだやるべきことがありますので」
「ううーん……どうしても、駄目?」
「ええ、どうしても」
困った顔で、ダイゴが首をひねる。
「正直言うぞ。おまえは、ただのギルドマスターにしておくには惜しすぎる逸材だ」
「買いかぶりすぎですよ」
「そんなことはない。おまえはすごいやつだよ。たった數年で、ギルドをここまで大きくしただけでなく、結果もちゃんと殘してきた。極めつけは、ローレンス達勇者パーティだ」
ローレンスをはじめとした、全員がうちの出であることは、周知の事実である。
「お前ほどの腕と目があれば、冒険者ギルド全を、良い方向に導いてくれると確信している。本部長の椅子に座ってくれ、アクト。そうすればおれは、安心して後を任せられる」
本部長は背筋を正し、深々と頭を下げる。
だが、俺の答えは決まっていた。
「お斷りします」
「……ギルド本部長の座だぞ? その若さで、本部長になったとなれば前代未聞の大事件。これは、非常に名譽な話だと思うんだが」
「だとしても、俺には俺の、やるべきことがあります。守りたい部下たちがいるんです。本部長の話は、栄だとは思うのですが、俺にはまだ早すぎます」
俺もまた頭を下げると、ダイゴ本部長はため息をつく。
「おまえの意思は理解したよ」
「ありがとうございます」
「しかし……ううーん、うう~~~~~ん、そうなると、次を任せられる奴がいないぞ」
はぁ、と深々とため息をつくダイゴ。
「ミリアはどうでしょう? S級1位のギルドマスターだ。申し分ないのでは?」
「ダメダメ。あいつ増長しやすいし、脇が甘い。やはりアクトじゃないとなぁ~……」
ちらちら、とダイゴが俺に目配せする。
「お斷りします」
「なぁ、駄目か? 本當に駄目?」
「駄目です」
「はぁ~~~~~……マジかぁ。引退できないじゃないか。どうしてくれる?」
「引退するにはまだ早すぎる、ということでは?」
「おれももういい加減引退したいんだよ! はぁ~……」
がっくり、とダイゴが肩を落とす。
「副本部長など、ほかに候補はいるんじゃないですか?」
「居るにはいるんだが、任せられるほどのじゃない。やはりアクト、おまえが本部長になるしかないな」
俺はため息をついて立ち上がる。
「用件は以上ですね。失禮します」
「あ、ちょっと! アクト! もうちょっと話し合わないか?」
「俺も忙しいんです」
「飯でもどうだ? おごるぞ最高級レストランでもなんでも!」
「結構です。では」
俺はその場を後にする。
「アクトぉ! ポストは空けておくからなぁ! いつでも本部長になっていいんだぞぉ!」
やれやれ、と俺はため息をついて部屋を出るのだった。
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