《【書籍化】俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」》80.悪徳ギルドマスター、超越者と再會する

俺は家出した駄犬こと、フレデリカを回収しに、地下深くに住む超越者の元を訪ねていた。

「はぇー……ダンジョンの中に立派なお屋敷があるなんて、すげーすわ」

俺の背後には、人間の姿になったヴィーヴルがついてきている。

では行き來できないからな。

足が必要なのである。

「地下だってのに、窓から日差しがってきているのはなんでなんすかね?」

「ここの屋敷のなかだけ異界化しているらしいぞ」

「なるほど、家主はやべーやつってことだけはわかったっす」

ヴィーヴルはそわそわしながら言う。

おそらくさっさと帰りたいのだろうな。

「そんなやべえ人とアクトさん、どういう知り合いなんすか?」

「ギルドを立ち上げる前に修行をつけてもらった。それと駄犬をもらいうけた」

「よ、よかったっす。顔見知りなら、安全っすよね!」

ふぅ、と彼が安堵の吐息をつく。

「なにを懸念しているのだ貴様」

「いや、ほら、急に襲ってくるみたいな。ただでは返さん! みたいなこと、まさかないっすよね!」

「さてな」

「怖いこと言わないでくださいよぉ! もぉ!」

ややあって。

長い廊下を抜けたあと、家主の扉の前にやってきた。

「自分、ここで待ってるんで!」

「そうか、待っている間に警備員に襲われるかもしれないが」

「ついていきまーす!」

俺は扉を開け、部屋の中にる。

「んなっ!? なんすかここぉ! マグマぁああああああ!?」

中は異界化していた。

地下深くのように、溶巖地帯になっていた。

「ひぃいい! 罠だったぁ! 侵者を返さないつもりっすよー! ふぎゃー!」

「うるさい黙れ」

俺はヴィーヴルの頭をはたく。

「グルゥウウウウウウウウウ!!!」

「ひぃいいいい! 三首の化けまで現れたぁあああああああ! きっと地獄の番犬ってやつっすよおおおお!」

三首の番犬が、溶巖地帯に立っていた。

その威容に気おされ、ヴィーヴルが震える。

「こ、こんなところにいられるか! 自分は帰るっすよ! 飛んで! ふんぬ!」

だが、気合をれたところで、ヴィーヴルは邪神竜の姿になれなかった。

「なんで!? なんで変できないんすかぁ!?」

泣きわめくこいつを放っておいて、俺は化けイヌのもとへと向かう。

確かにでかい犬だ。

なかなか強そうでもある。

邪神竜がおびえるくらいだから、それ以上の強さはありそうだ。

「アクトさん食われちゃうっすぅうううううう!」

犬の顔が3つ、俺のすぐ目の前までやってきた。

「あぁああああああああぶなぁあああああああい!」

だが、犬は俺の前に、ひざまずいた。

「ふぁ!?」

俺は犬の首の下をなでる。

すると3首の番犬は、気持ちよさそうに目を閉じて、鼻を鳴らす。

「す、すげえ……地獄の番犬を、アクトさんおじせず、しかも飼いならすなんて!」

「いい犬だな。うちの駄犬の代わりにもっていきたいくらいだ」

そのときだ。

『いやぁ、それは困るよ。その子ぼくんちの番犬なんだ。悪いけど自分の犬で我慢してよ』

どこからか聲が響く。

い男のようにも、のようにも聞こえる、不思議な聲だ。

「くだらない幻なんぞといて、さっさと姿を見せたらどうだ?」

「げ、幻? ここが? めっちゃ熱いっすよここ?」

「高度な幻だ。見た目だけでなく、暑さも現実だと、相手に錯覚させるほど、巧な幻だ」

「それ見破るとか、やべーっすねあなた……」

俺は部屋の一角を指さす。

「ヴィーヴル、あれが核だ。壊せ」

魔法を使って、ヴィーヴルが幻の核となる魔道を破壊。

すると、幻が消えて、元の部屋へと戻った。

「見破った上に、核まで破壊されちゃうなんて。強くなったね、アクトくん?」

部屋の奧に、本の山があった。

そのうえでけだるげに寢そべっている人が……超越者。

「久しぶりだね、10年ちょいぶり?」

「久しぶりだな、【天羽(あもう)】」

超越者【天羽(あもう)】は、嬉しそうに笑って、俺を見やるのだった。

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