しばらくの間、オークション會場の喧騒は靜まらなかった。

「……さすが阿吽。一撃で仕留めた」

「ありがとうございます、阿吽様！　必ず、使いこなしてみせます！！」

落札後、シンクはステージに上がり、俺から渡された金貨5000枚をマジックバッグから取り出し、機の上に置いた。

そして、ガラスケースにれられている変形巨斧（へんけいきょふ）を軽々と持ち上げ、マジックバッグへれるとルンルンとした足取りで客席に戻ってきた。

本來は會場を出るタイミングで支払いを行い、落札した品をけ取って帰るのだが、シンクはそんなことお構いなしだった。すぐにでも手元にしかったのだろう。

変形巨斧を落札した後もオークション會場には居たのだが、特にしいは出品されず3時間ほど後にオークション會場を出た。

會場を出るともう夕刻になっている。

結構時間はあったんだが、相手の報を集めてもいないどころか、明日の試合は誰が先鋒なのかも決めていない。

でもまぁ、大丈夫だろ。

ご機嫌なシンクとネルフィーを先頭にして5人で宿へ帰ろうとした時、後ろから聲を掛けられた。

「あなた方は【星覇】クランで間違いありませんか？」

振り向くと20歳くらいの男がニコやかに微笑みながらこちらを見ている。

高級そうななりで、一見商人に思えるが佇（たたず）まいに隙が無い。

……敵意は無さそうだな。

その男の一歩後ろには冒険者の格好をしたが居るが、立ち姿勢が妙に綺麗だ。それに、あの腰に下げている剣は……そういう事か。

「そうだが……何か用か？」

「っ！　貴様！　殿下にむか「レジェンダ」……申し訳ありません」

「やはりそうでしたか。ご無禮を失禮しました、殿下」

「今の一瞬で違和に気付いてカマをかけるか。武力だけでなく、観察力や知力も優れているのだな」

へぇ……わざと辛辣（しんらつ）な反応にしたのも観察していたのも、表と視線だけで気付いたか……やるなぁ。

予想だと……この男はアルト王國の第二王子、『ルザルク・アルト殿下』だろう。

殿下と呼ばれる人間はこの國に3人居るが、第一王子はもっと年上のはずだ。さらに、俺が王都に居た14年前に第三王子が生まれたというのが記事になっていた。

「いえ、そうでもございません。それで、どうして殿下がこのような場所に？」

「今は非公式で街に來ているのだ。済まないが、砕けた口調で話をしてくれると助かる」

「分かりました。それでは失禮して…………で？　なんか用か？」

「フハハハハ！　君は面白い男だな！

あー、用件についてなんだが、昨日の試合やさっきのオークションを見て、君と話がしてみたくなっただけなんだ。申し訳ない」

心底楽しそうに笑っている。分を隠したいのか隠す必要がないのか、どっちなんだ？

「いや、別に話すぐらいは全く構わない」

「殿下、そろそろお時間が……」

「分かったよ、レジェンダ。あ、そうだ阿吽君、ひとつ頼まれてくれないかな？」

「容によるが……」

「いや、変な意味じゃないから勘ぐらないでほしいんだが……今回の序列戦、何としてでも優勝してくれ」

「それは當然だ。俺たちはそれを目指している。

……それにしても含みがありそうな言い方だな」

「優勝したら教えてあげるよ。

あー、ダメだ。君と喋っていると素が出てしまうよ。それじゃあ僕はこれくらいで帰るとする。

次に會った時も非公式なら、口調はそのままにしてくれ。こうやって話をしてくれる同年代は、今まで居なかったんだ。それじゃあ序列戦楽しみに見させてもらうよ」

「あぁ。今まで見たことない強さを見せてやるよ」

ルザルク第二王子は微笑みながら後ろを向くと、レジェンダと共に王城の方へ向かって歩いていった。

あのレジェンダって奴も本気で怒っているわけではなかったな。

多分、あれもルザルク王子に言われての演技なんだろう。

それにあの剣……王國騎士団の紋章が付いていた。

本當に分を隠したいのなら、武はマジックバッグにれておけばいいだけだし、あえて帯剣しておき俺たちに分を悟らせるのって何の意図があるんだろうか。

まぁ厄介な事を頼まれたわけでもない。

序列戦で優勝するのに変わりはないし、優勝すれば第二王子の意図も分かるだろう。

それに、こちらも奴隷商や貴族の事で々世話にもなりそうだしな。

うん、気にしない事にしよう！

今晩もう一話投稿します！

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