《最弱な僕は<壁抜けバグ>でり上がる ~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~【書籍化】》―04― 壁抜け
ファッシルダンジョンが初心者用のダンジョンと言われているとはいえ、そのボス人狼(ウェアウルフ)が弱いということにはならない。
人狼(ウェアウルフ)を倒せる一般的な基準は、レベル8の冒険者が6人とされてる。
つまり、レベル1の僕が倒せる相手ではない。
「グォオオオオオオオッッッ!!」
人狼(ウェアウルフ)はうなり聲をあげなら僕に飛びかかる。
「ぎゃぁあああああ!!」
僕は絶しながらをかす。
すると、意外にも攻撃をかわすことができた。
それを見た人狼(ウェアウルフ)は長い爪をかして追撃を企てた。それを僕は必死でよける。
冷靜になれ、僕。
攻撃を目で追うことはできている。敏捷が高いおかげだ。これなら攻撃をよけ続けることは可能なはず!
だけど、肝心の攻撃手段がないため倒すことはできない!
それから僕は人狼(ウェアウルフ)の猛攻をひたすらさけ続けた。
僕の防力はたったの50。
こんな紙のような防力だと、一撃でも攻撃をければそれは死に直結する可能が高い。
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「はぁ、はぁ、はぁ……」
気がつけば、さっきから呼吸が荒い。
このまま攻撃を避ければ避けるほどジリジリと力は削られていく。
スタミナが切れたら、自慢の敏捷があっても〈回避〉しようがなくなる。
「うっ……」
力の限界がやってくるのはあっという間だった。
のきが鈍くなり、集中力が切れる。
その隙きを人狼(ウェアウルフ)が逃すはずがない。
僕を仕留めようと鋭利な爪を素早く振るう。
「〈回避〉」
スキルを発させた。
一瞬、が加速し振るった爪から逃れるようにが勝手にく。
人狼(ウェアウルフ)が僕の姿を見失ったのは表から察した。攻撃を外した直後の人狼(ウェアウルフ)は隙だらけで、いかにも攻撃してくれとばかりに僕にわき腹を見せている。
「だからって、なんの意味もないんだけどねっ!」
僕は全力でナイフを人狼(ウェアウルフ)のわき腹に突き刺したが、カツンという虛しい音が響くだけで人狼(ウェアウルフ)の剛な皮に刃が阻まれる。
ニタリ、と人狼(ウェアウルフ)が笑ったような気がした。
ひぐ……っ。
もしかして、僕がダメージを與えられないことを察したのかもしれない。
それからは、ひたすら死を先延ばししているかのようだった。
狹いエリアを駆け回り攻撃から逃れようとする。それを人狼(ウェアウルフ)が追い回す。時々、ただをかすだけでは避けられない攻撃があるため、その際は〈回避〉を使って、なんとかさける。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
戦い始めてからもう一時間以上経ったような気がする。
手足はしびれて力が限界だってことをさっきから訴えてくる。
こっちはもう限界だというのに人狼(ウェアウルフ)は力の衰えを見せなかった。攻撃のスピード落ちる気配がない。
時間が経つほど〈回避〉を使う頻度は増えていく。
〈回避〉のMP消費量は5。
僕の最大MPが90なため、18回は使えるという計算だ。
すでに15回は使っている気がする。
もう〈回避〉が使える回數が非常に限られている。
「グギョォオオオ!!」
と、人狼(ウェアウルフ)は唸り聲を上げる。その口からはヨダレが垂れており、だらしない表をしていた。油斷しきっているのだろう。
人狼(ウェアウルフ)側も僕が無限に〈回避〉が使えないことは把握しているはずだ。
人狼(ウェアウルフ)は著実に僕に〈回避〉を使わせるような攻撃を繰り返し、MPが切れるのを待てばいい。
まるで、僕は死刑囚のようだな。
死ぬことが決まっているのに、無様に生き延びようと必死こいているところが。
あ……。
人狼(ウェアウルフ)の攻撃を避けた瞬間、調に明確な変化が訪れていた。
視界がぼやけたのだ。
足をあげるたびに筋がビチビチッと悲鳴をあげる音が聞こえ、踏ん張るたびにギシギシと骨が軋む。
うまく呼吸ができない。
さっきから息を吸っても、吐くのが難しかった。
妹のために死ぬわけにいかないんだ……っ!
気合をいれようと、自分の使命を思い出すが脳みそにが行き屆いていないのか思考がうまくまとまらない。
ビュンッ! と、人狼(ウェアウルフ)が僕がフラフラなのをわかったうえで大振りの攻撃を加えた。
この攻撃なら〈回避〉を使わなくても避けられる。
そう考え、をかすが――。
それが、致命的なミスだった。
どう見ても今のの狀態ではこの攻撃をさけられるわけがなかった。
……ごめん、エレレート。お兄ちゃん、死ぬかも。
妹に心の中で謝罪する他なかった。
だって、僕にはもうどうしようもない――
ガキンッ!
と、割れるような音がした。
見ればナイフの刃が人狼(ウェアウルフ)の爪とかち合っていた。
瞬間、刃は々に砕ける。
おかげで人狼(ウェアウルフ)の爪がが食い込むことはなかったが、ただそれだけだ。
衝撃がなくなるわけではなく、僕のはフワッと宙に浮いていた。
あのナイフ、父さんの唯一の形見だったな。
ふと、戦闘とはどうでもいいことを思い出す。
あのナイフ以外の形見は全部売って生活費の足しにしたのだ。
あぁ、父さんも死んだときこんなじだったのかな……。
死ぬ瞬間だからだろうか。さっきからどうでもいい思考ばかりが頭の中を流れていく。これが走馬燈というやつなのかもしれない。
だから父さんの次は妹を思い出していた。
妹はずっとが弱かった。何度か回復薬を飲ませたことがあるが、それでも一時的に元気になるだけですぐ調子が悪くなった。
妹が昏睡狀態に陥ってからは聲をずっと聞いていないな。
どんな聲をしていたっけ――
「アンリお兄、生きてッッッ!!!」
え?
瞬間、思考が現実に戻される。
まるで妹が僕を呼びかけたかのような。
けど、妹は家で眠っているはず。だからただの幻聴だってことはすぐわかる。
それでも妹のおかげで、意識が覚醒したのは紛れもない事実。
まだ僕は死んでいなかった。
は吹き飛ばされ宙を舞っている。
コンマ一秒後には、僕のは勢いよく壁に叩きつけられて絶命する。
さっきまでの走馬燈は人狼(ウェアウルフ)に吹き飛ばされてから見たので、見ていた時間は一秒にも満たなかったわけだ。
妹のおかげで現実に引き戻されたが、こんな狀態の僕にできることなんてたかが知れている。
だから実直にそれを実行した。
「〈回避〉」
〈回避〉は敵の攻撃を避けるためのスキルだ。だから敵の攻撃をけていないときに〈回避〉を発させてもなにも起こらない。
例えば、何もしてこないモンスターを目の前にして〈回避〉を使っても、〈回避〉はキャンセルされてしまう。
だから壁にぶつかろうとしているこの瞬間、〈回避〉を使ってもキャンセルされるだろうと、僕は確信していた。
なぜなら、今の僕は敵から攻撃をけていないのだから――
スッ、とそんな音がしたような気がした。
來るはずだった衝撃がやってこない。
「え?」
が壁にめり込んでいる?
今の景を見て、僕はそう判斷した。
そう、壁にぶつかるはずのがなぜか壁にめり込んでいた。
そしてめり込んだは吹き飛ばされた勢いを失うわけではなく、スーッと壁の中を進んでいく。
そして気がついたときには、僕は壁の向こう側にいた。
本來、ボスエリアはボスを倒さないと部屋から出ることは許されない。
なのに、僕は部屋の向こう側にいる。
「壁をすり抜けた?」
そうとしか表現できない現象がたった今起きたのだった。
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「世界最初の超知能マシンが、人類最後の発明品になるだろう。ただしそのマシンは従順で、自らの制御方法を我々に教えてくれるものでなければならない」アーヴィング・J・グッド(1965年) 日本有數のとある大企業に、人工知能(AI)システムを開発する研究所があった。 ここの研究員たちには、ある重要な任務が課せられていた。 それは「人類を凌駕する汎用人工知能(AGI)を作る」こと。 進化したAIは人類にとって救世主となるのか、破壊神となるのか。 その答えは、まだ誰にもわからない。 ※本作品はアイザック・アシモフによる「ロボット工學ハンドブック」第56版『われはロボット(I, Robot )』內の、「人間への安全性、命令への服従、自己防衛」を目的とする3つの原則「ロボット工學三原則」を引用しています。 ※『暗殺一家のギフテッド』スピンオフ作品です。単體でも読めますが、ラストが物足りないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。 本作品のあとの世界を描いたものが本編です。ローファンタジージャンルで、SFに加え、魔法世界が出てきます。 ※この作品は、ノベプラにもほとんど同じ內容で投稿しています。
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