僕は巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》と対面していた。

ギルドの報が正しいなら、一般的な冒険者にとって巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》はあの黒の人喰鬼(ネグロ・オーク)より弱いらしい。

けど、僕にとって巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》のほうが厄介な可能が高いんだよな。

僕の目的は、倒すことでなく壁抜け。

そう考えたとき、目の前の巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》は非常に厄介な存在だ。

シュッッ！！

ギルドの報通り、巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》が糸を口から吐いた。

「うわっ」

僕は慌てて糸をかわす。

べったり、と糸が地面にくっついたのを見て、思わず震いをしてしまう。

糸は非常に厄介な粘著を持っていた。

もし、糸に絡まってしまえば僕はけなくなる。そんなことになったら、確実に僕は死ぬ。

シュッ！　シュッ！　シュッ！　シュッ！　シュッ！

僕に対して巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》は何度も口から糸を吐いた。

一度吐いた糸は地面へとへばりつき、そのまま殘る。

もちろん、それを踏んでしまえば僕はけなくなるため、地面にへばりついている糸にも警戒しなくてはならない。

だから、巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》が口から糸を吐けば吐くほど、足場がなくなってきいき、より避けるのが困難になっていく。

「なんで、糸以外の攻撃をしてくれないんだよぅ！？」

思わず絶する。

ギルドの報によれば、糸以外の攻撃もしてくれるって書いてあったのに！

僕が求めているのは、僕を壁に叩きつけてくれるような攻撃だ。

黒の人喰鬼(ネグロ・オーク)なら、簡単に棒を振り回してくれた。だから、僕はそれに當たりにいけばよかった。

だが、巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》は糸を吐くばかり。

このままだと、いつまで経っても壁に叩きつけられない。

「これじぁ、埒が明かない……っ」

そう思い、僕は「えいっ！」と巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》に近づき、ナイフを突き刺す素振りをする。

すると、警戒してか巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》は地面をるようにして、後ろに下がる。

ナイフは空を切る。

例えナイフが巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》に當たったとしても、僕の低い攻撃力では一切ダメージを與えることができないため、攻撃そのものには意味がない。

とはいえ、わざわざナイフを當てようとしたのには意味がある。

巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》はナイフを持って近づいた僕を見て、こう思うはずだ。

このまま糸を吐き続けていても、いつかは僕に近づかれてナイフで斬られる、と。まさか僕の自信満々にナイフの振るう姿を見て、実は、僕は一切ダメージを與えることができない、とは思わないだろう。

狙い通り、巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》は糸を吐くのをやめて考える素振りをした。

そして、答えを出したのか。

行パターンを変えた。

巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》がのほうから、白い球をポコポコと出し始めたのだ。

「なんだこれ……っ！？」

僕は唖然とする。

すると、白い球はパキパキとヒビがり、中からモンスターが産まれてきた。

「産卵かっ！」

そういえば、ギルドの報にもそんなことが書いてあったことを思い出す。

子供蟻(チャイルド・アント)。

卵から産まれたのは、そう呼ばれるモンスターたちだ。通常の巨大蟻(ジャイアント・アント)に比べると非常に小さいが、侮っていいわけではない。

なにより産まれた子供蟻(チャイルド・アント)の數が半端ない。

もちろん子供蟻(チャイルド・アント)から、僕を壁に叩きつけてくれるような攻撃は期待できない。

「余計ピンチになったじゃないかぁああああああ！」

ナイフによる攻撃が裏目に出た。

僕は自分のした行いに後悔していた。