「新しいスキルを試すなら、やっばりここしかないでしょ」

僕が向かったのは初心者用のダンジョンとして知られているファッシルダンジョンだ。

狼(コボルト)が多く生息しており、初回クリア報酬が〈旅立ちの剣〉で、僕が初めて〈回避〉を使って、壁抜けをしたダンジョンでもある。

今回試したいのは、新しいスキルでモンスターが倒せるようになったかどうかだ。

僕は今まで攻撃力のステータスが低すぎるのと、攻撃用のスキルを持っていないせいで弱いモンスターすら倒すことができなかった。

だが、今回念願の攻撃が強化されるスキルを手にれることができたわけだ。

そんなわけで、僕がモンスターを倒せるようになったか一番弱いとされている狼(コボルト)相手に試してみようと思った次第だ。

◇◇◇◇◇◇

〈理攻撃クリティカル率上昇・小〉

理攻撃をしたさい、まれにクリティカルヒットが発生する。

◇◇◇◇◇◇

僕はステータス畫面で〈理攻撃クリティカル率上昇・小〉の項目を確認していた。

〈理攻撃クリティカル率上昇・小〉は常時発型のスキルだ。なにもせずとも常に発しているため、MPを気にする必要はない。

「あとは、クリティカルヒットがどれだけモンスターにダメージを與えられるかだよね……」

今までモンスターに傷一つつけられなかった僕のことだ。クリティカルヒットさえもモンスターにダメージを與えられないなんてこともありうる。

と、悪い想像をしていたら震いがしてきた。

今から最悪なこと考えても仕方がない。

「グルル……ッ」

気がつけば、現れた狼(コボルト)が僕に威嚇していた。

「よしっ、いつでもかかってこい」

僕は気合いをいれつつ、そう口にする。

すると、狼(コボルト)が口を開けて飛びかかってくる。

遅い……っ！？

それが真っ先に思った想だった。

狼(コボルト)ってこんなに遅いモンスターだっけ？　いや、僕が速くなったのか。

思えば、以前狼(コボルト)と戦ったときに比べたら、敏捷のステータスがめちゃくちゃ上がっているはずだ。

だから、こんなにも遅くじるわけだ。

「橫ががら空きだぞ！」

攻撃をかわしつつ、ナイフで狼(コボルト)の首元を斬る。

だが、カキンッ！　という音で刃が弾かれた。

まぁ、いきなりクリティカルがるわけないよな。

再び、狼(コボルト)が僕に向かって攻撃を繰り出す。それを回避して、僕はナイフを前に突き出す。

僕がやるべきことはクリティカルがるまで攻撃し続けることだ。敏捷があがったおかげで、刃を振り回すスピードもあがっているはず。

だから一瞬のうちに、何十回もナイフで斬りつけることも可能なはずだ。

目にも止まらぬスピードで腕を振り回し、何度も何度もナイフで狼(コボルト)を斬りつける。

そして、15回目の攻撃にて手応えのようなものをじた。

ザスッ、と刃が狼(コボルト)の首を貫き、そのまま一直線に斬りつけたのだ。

「た、倒した……？」

を出しながら倒れる狼(コボルト)を見て、そう言葉をらす。

そして、狼(コボルト)がかなくなったのを見て初めてモンスターを倒したんだという実がわいてきた。

◇◇◇◇◇◇

レベルが上がりました。

◇◇◇◇◇◇

ピコン、と小さな畫面が目の前に表示される。

そうか、モンスターを倒したからレベルが上がったんだ。

僕は慌ててステータス畫面を表示した。

◇◇◇◇◇◇

アンリ・クリート　１３歳　男　レベル：１→２

ＭＰ：９０→９１（ＵＰ！）

攻撃力：１０→１３（ＵＰ！）

防力：５０→５２（ＵＰ！）

知　：６０→６１（ＵＰ！）

抵抗力：６０→６１（ＵＰ！）

敏　捷：１１５０→１１５３（ＵＰ！）

スキル：〈回避〉〈理攻撃クリティカル率上昇・小〉

◇◇◇◇◇◇

「ほ、本當にレベルが上がっている……ッ！」

んな冒険者に『永遠のレベル１』と呼ばれてバカにされていたことを思い出す。これで、やっと汚名返上できるんだ。

それに念願だった攻撃力もちゃんとあがっている！

僕にとって今日は初めてモンスターを倒した日であり、初めてレベルがあがった日でもあるわけで、これは記念すべき日だ。

「やったー！」

僕はその場で、両手を高く掲げては飽きるまではしゃいでいた。