《最弱な僕は<壁抜けバグ>でり上がる ~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~【書籍化】》―52― 不格好な巨人
「人類の殲滅……」
目の前のの言葉に僕は呆然としていた。
モンスターは例外なく、人類を襲ってくる。目の前のもモンスターだと自稱するならば、人類を殲滅しようとするのは、自然の摂理のような気もする。
「……シテ……コロシテ……」
はっ、と聲のした方を見上げる。
それは不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)が発している聲だった。
よく耳を傾けると「クルシイ……」やら「タスケテ……」やら、んな聲が聞こえてくる。
もしかしたら材料にされた一味たちの意識がまだ殘っているのかもしれない。
「キヒヒッ、魂の融合がうまくできなかったようです」
は不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)の様子を見て笑う。
「まぁ、名稱未定ちゃんの言うことをちゃんと聞いてくれるなら大した支障にはなりませんけど」
は僕の方を見ながら不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)に対し、なにか指示を出した。
「あ――」
気がついたときには、不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)の振るった腕が眼前に迫っていた。
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特に警戒していなかった僕は攻撃をもろにけてしまう。
「ガハッ」
僕はを吐きながら宙を舞っていた。
そして、ボロボロになりながら地面に墜落する。
かろうじて意識は保てるが、立つ気力はもうなかった。
「もっと抵抗してくださいよ。じゃないと、こっちもおもしろくないじゃないですか」
見上げると、目の前につまらなそうな顔をしている名稱未定がいた。
後ろからしっかり不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)がついてきている。見るからに、不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)はの言うことを聞くようになっているらしい。
目の前に、こうして自分を殺そうとするモンスターがいても、僕自はなにかをしようって気にはなれなかった。
今更抵抗したところで、なにがどうなるというんだろうか?
恨む対象は変なモンスターにされ、妹はおかしなやつに人格をのっとられた。
戦ったところで事態が解決するとは思えないし、そもそも戦ったところで勝てるような相手じゃない。
もう、なにもかもどうでもよかった。
僕の心はすでに本から折れていた。
「つまんな」
僕の心を見かしたのか、名稱未定はそう言葉を吐き捨てる。
「もういいや。早く、こいつ殺っちゃって」
投げやりな口調で、不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)に指示を出す。
僕は抵抗するでもなく、なすがままにけいれようと、ただじっとしていた。
「がはっ」
と、うめき聲が聞こえたが、それは僕のものではなかった。
「え――?」
目の前で起きた事態を把握するのに時間がかかる。
名稱未定が宙を舞っている。
なぜかわからないが、不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)が名稱未定に腕を振るったのだ。
當然、攻撃をもろにけた名稱未定はその場から吹き飛ぶ。
「エレレート!」
反的に僕はそうんで立ち上がっていた。
そして、の元まで僕は駆け寄っていた。
「大丈夫か……!」
自分の行が矛盾していることはわかっている。
だけど、目の前ののはエレレートのものである以上、心配しないわけにもいかない。
「テメェ……ッ、この期に及んで抵抗する気か……ッ!」
名稱未定は睨みをきかせた表で突然んでいた。
だけど、僕に対して言っている様子ではない。かといって、主人に反撃した不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)に言っている様子でもない。
誰と戦っているんだ……?
彼は僕に見えない存在となにか戦っているような、そんな印象をける。
「うっ、ガハ……ッ、クソッ! クソッ! クソッ! クソッ! クソッ! クソッ!」
名稱未定が吐き気を催したかと思うと、狂ったようになにかに対して悪態を吐き始める。
不安になった僕は思わず「大丈夫か……」と聲をかけようとした瞬間、名稱未定が僕のほうに目線をあわせて、
「5分だけだ」
と、口にした。
なんのことだか、さっぱりわからない。
ただ、次の瞬間、彼は、コテンと意識を失ったようにその場に倒れた。
「え……?」
僕はどうしたらいいかわからず慌てふためく。
彼を助けるべきなのか? 助けるとしても、なにをすればいいのか、さっばり見當がつかない。
「グガァアアアアアアアアアアアア!!」
後ろを振り向けば不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)がび聲をあげながら、こっちに迫ってきていた。
戦わないと。
僕は短剣を手にしながら、モンスターに対峙する。
さっき僕が無気力だったのは、モンスターがエレレートを襲うことはないと思っていたからだ。
だが、さっきの反抗を見て、もしかしたらモンスターはエレレートに再び危害を加えるんじゃないかと、不安が頭をよぎってしまう。
例え、人格を乗っ取られたとしてもエレレートのであることに変わりはない。だからこそ、守らなくてはいけない。
だけど、さっきから恐怖で足が竦んだままだ。
不格好な巨人(トルペ・ギカンテ)が一歩と、前に進むたびに、ズドンッ、と地面を揺るがすような音が鳴り響く。
圧倒的な重量。
そんな存在に、僕が歯向かっても勝てる気がしない。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
震えを抑えないと。
そう思えば思うほど、息苦しくなり悸もおかしくなる。
どうしよう?
なんとかしなきゃいけないのはわかっている。だけど、自分一人の力ではなにもできる気がしない。
「うぐ……っ」
いつの間にか目は涙で溢れていた。
もうなにかも投げ出したい。しんどい。僕はいつまで、頑張り続けなきゃいけないんだ……。
「た、すけて」
神に祈るようにそう呟く。
バカなのだろうか、と自分の行をあざ笑う。呟いたところで、それが誰かに屆くわけなんかないのに。
「うん、助ける」
「え……?」
「お兄ちゃんが私のためにたくさんがんばってきたのは、全部知っているよ。だから、今度は私が助ける番」
後ろから包み込むように彼は立っていた。
「エレレート?」
僕は困しながらもそう尋ねる。
「うん、そうだよ。私がエレレートだよ」
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