《最弱な僕は<壁抜けバグ>でり上がる ~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~【書籍化】》―58― 路地裏の攻防

「キャー、お兄さん方、こわいんですけどー」

路地裏にて名稱未定は複數の冒険者たちに囲まれていた。

狀況が狀況なだけに、名稱未定は怖がったふりをするが、あまりにも雑な演技なせいか、冒険者たちは余計苛立ちをつのらせていた。

「俺たち相手に舐めた態度とると、どうなるかわからせてやる」

冒険者の一人が名稱未定の肩を強く摑んだ。

「キヒッ」

名稱未定が不気味な笑みを浮かべた瞬間。

「ぐはッ」

肩を摑んだ男がうめき聲をあげながら、その場に倒れた。

「おいっ、どうした!?」

他の冒険者たちはなにが起きたのか全く理解できていなかった。

「キヒヒッ、ざんねーん、舐めた態度をとったらどうなるのか、わからせるのは名稱未定ちゃんのほうでしたー」

たった今、なにが起きたのか知っているのは、この場で彼ただ一人。

両腕を巨大な手へと変化させた、名稱未定だけだ。

「お、おいっ、どうなってるんだ、こいつは!」

「うわぁああああああ!」

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不気味な姿へと変容した彼を見て、冒険者たちはすぐパニックに陥る。

俺たちは、とんでもない化けに手を出してしまったんじゃないのか?

そんな後悔が彼らに押し寄せたが、もう遅い。

「誰か、助けてくれぇえええええ!」

「やめろ! やめろ! やめてくれぇええええ!」

路地裏からなんとかしようとする冒険者たちを名稱未定が逃すはずがない。

手で捕まえてはけなくなるよう、もう一方の手で強く叩いては冒険者たちを次々とけなくしていく。

「キヒヒッ、最高っなんですけど! はぁ、はぁ、人を一方的にぶちのめすのって、なんでこんなに気持ちいいんですかね!」

悲鳴をあげる冒険者たちとは対照的に名稱未定は甘び聲をあげていた。

「や、やめてくれ……」

目の前に恐怖のあまり立てなくなった男がいた。

「やーめない」

それを鼻歌でも歌っているような気な調子で、名稱未定は手を振るう。

「さて、仕上げに新しいモンスターを造っちゃいましょうか!」

そう言って、名稱未定は手の先端を獣の口のような形狀に変化させる。

そして、それを使って冒険者たちを飲み込もうとして――

「ぐはっ」

唐突に、名稱未定がその場でうずくまって吐き気を催す。

「クソがァ、エレレート! 正當防衛だからいいだろうが! クソッ! クソッ! クソッ!」

名稱未定は言葉を吐き捨てる。

の自由が効かなくなったのは、で眠っているはずのもう一つの人格、エレレートのせいだった。

「おい、今ならやれるんじゃね……」

様子がおかしくなった名稱未定を見て、冒険者たちは立ち上がる。事はよくわからないが、今の彼相手なら簡単に屈服させることができそうだ。

「てめぇ、よくも好き勝手やってくれたな!」

「今度は俺たちのばんだ!」

冒険者たちは次々と立ち上がり、未だにうずくまっている名稱未定に手をかけようとする。

「くそ……ッ」

冒険者たちが反撃しようとしていることに気がつくが、が思うようにかない。

終わった、そう名稱未定は思った。

「おい、なにをしている――」

ふと、黒い影が目にった。

冒険者たちも路地裏にってきた人間の存在に気がついたようで、後ろを振り向いた。

「おい、誰かと思ったら、アンリじゃないかよ!」

「『永遠のレベル1』のアンリだろ! こんなとこになにしに來たんだ?」

「正義のヒーロー気取りか? だったら、お家に帰ってやるんだな」

冒険者たちはアンリの存在を知っていたらしく、皆一様に彼のことを馬鹿にし始める。

「妹になにをしようとした?」

それでもアンリは臆せずそう問いかけていた。

「あん? あぁ、こいつお前の妹か? そうか、ならばお前をぶちのめした上で、こいつの前で妹相手にたっぷり楽しませてもらおうじゃねぇか!」

「死ね――」

目で追うのがやっとなぐらい速いきだった。

次の瞬間には、彼はを流して倒れていた。

「あん?」

他の者たちには、なにが起きたのか理解できなかったようで、呆然としている。

「おい、なにをやっている。相手はあのアンリだぞ。早く、やっちまえ!」

一人が慌てた様子でそう指示を出す。けれど、次の瞬間にはアンリの手によって斬り裂かれていた。

「どうなってやがる!?」

「なんで、こいつがこんなに強いんだよ!?」

誰もがパニックに陥っていた。

最弱のはずのアンリに好きなようにやられている。それが信じられない。

ただアンリだけは、躊躇なく次々と男たちをなぎ倒していく。

そして、気がついた時には戦闘は終わっていた。

助けられたみたいだな……。

そんなことを名稱未定は思った。

とはいえ、自分だけの力で解決することはできたはずなので、謝なんて絶対にしないが。

「ごめん……っ」

アンリがこっち近づいてきたと思ったら、背中に手をまわして抱きついてきた。

「僕のせいで、怖い思いをさせた。本當にごめん……っ」

耳元で謝罪するアンリを名稱未定はどこか他人事のように観察していた。

だって、こいつが守りたかったのは自分ではなく妹のほうだ。

だから、自分に向けられた言葉だと勘違いしてはならない。

それから、名稱未定はアンリに手を引かれながら宿屋まで向かった。

なぜ、アンリが路地裏まで助けに來たのか問うたところ、別れた後無に不安になって引き返したら偶然見つけたってことらしい。

ただの心配だ、と名稱未定は思った。

ちなみに、アンリが短剣を振るった冒険者たちはギリギリ殺さない程度に済ませておいたらしい。

名稱未定としては、殺したほうがよかったのでは? と思ったが、口には出さないでおいた。

「不安だ……」

部屋の中で、アンリはそう言葉をらす。

恐らく、自分を部屋に一人殘すのが不安なんだろう。

「だったら、ダンジョンに名稱未定ちゃんを連れていけばいいじゃないですか」

「いや、お前をダンジョンなんて危険な場所に行かせるわけにいかない」

なにを言ってんだ、こいつは、と心思う。

ダンジョンにいる低級のモンスターなんかより、自分のほうがずっと強いのだから、危険な目に合うはずがないのに。

「まぁ、強いのはわかっているけど、萬が一があるし」

名稱未定が心なにを思っているか気がついたらしく、アンリはそう言い訳をする。

「ふんっ、この部屋に大人しくしていればいいのでしょう。この辺りは人通りが多いですし、悪さをしたら、すぐ他の人たちに目撃されるでしょうから、大丈夫ですよ」

「だと、いいんだけどね……」

それでも煮えきらないアンリに苛立ちを覚える。

「だから人間、気にせず早く行くのです。最悪なにかあっても名稱未定ちゃんの力で解決できますので」

「わかったよ。わかったから、押さないで」

だから、強引にアンリを手で押して部屋の外に出す。

「では、いってらっしゃいませです」

そう言って、部屋の扉をしめて鍵までかける。

「はぁ」

部屋の中に誰もいないことを確認すると、名稱未定はため息をついた。

「ホントお前は、されていますね」

誰に言うでもなく名稱未定はそう呟き、ベッドにゴロンと寢転がる。

そして、數分後、暇だな、と思い始める。

これなら外を出たとき、なにか買ってもらえばよかった。

大変恐ですが、お願いがあります。

よろしければ、下の評価欄にて【★★★★★】をしていただけると助かります。

すでに、したよって方はありがとうございました。

引き続き更新していくのでよろしくお願いします。

二章でも、主人公は壁抜けを使ってより強くなっていきますので、楽しみにしてください。

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