《最弱な僕は<壁抜けバグ>でり上がる ~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~【書籍化】》―88― 新しいリーダー

「ロドリグの兄貴、アンリをやってしまぇえええ!」

「アンリを殺せぇええええええ!!」

「あのガキをぶちのめせぇええええ!!」

僕とロドリグさんを囲うように群集が集まっていた。中には、さっき僕が倒した冒険者たちも含まれている。

そのせいか聞こえてくる聲援は僕に対する、罵詈雑言ばかりだった。

「さっき聞いたのだが、お前は『永遠のレベル1』のアンリなんだってな」

「ええ、そうです」

「だが、さっきの戦いぶりレベル1ではあり得ない。今のレベルはなんぼなんだ?」

「最近、レベル50になったばかりです」

「ほう、その歳でレベル50か。すごいな、格上のモンスターばかりを倒した証拠だ」

「ええ、そうかもしれません」

「だが、悪いな。俺はレベルがあとしで100だ。お前の勝てる相手でないとわかっただろ」

「それはやってみないとわからないと思います」

「かはっ、なるほど、ならば、お互い死ぬ気でやろうじゃないか」

そう言って、ロドリグさんは背中の大剣を手にもった。

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遠慮なく武を使って、僕を倒すつもりらしい。

ならば、僕も短剣を鞘から引き抜く。

そして、數秒お互いに見つめ合った。

この場に、戦いの始めを教えてくれる審判なんていない。

だが、お互いに、いつ戦いを初めても問題ないことが呼吸からじ取れる。

だから、僕は地面を蹴った。

「〈巖撃波(がんげきは)〉!!」

ロドリグさんがスキル名をびながら、大剣を地面に叩きつける。

すると、地割れを発生させながら衝撃波が襲いかかってくる。

「――噓でしょ」

目の前の出來事に驚愕する。

基本、大剣使いは遠距離攻撃できないのが世間の常識だ。だというのに、衝撃波をもって遠距離から攻撃してくるなんて。

「〈回避〉」

僕は間一髪、スキルを使って衝撃から逃れる。

「ほう、これを避けるか」

心したようにロドリグさんは頷いていた。

「なら、これはどうだ?」

そう言って、ロドリグさんは構えの姿勢をとる。

橫方向に大剣をなぎ払うつもりだ。

「〈初月波(ういづきは)〉!!」

今度は橫に長い衝撃波だ。

恐らく衝撃をけたら、ひとたまりもないのは明白。

「〈回避〉」

だから、すかさずスキルを使用する。しかし、今度はただ攻撃をよけるだけではない。攻撃をよけながら、前へ飛びかかる。ロドリグさん相手に距離とりつづけながら戦うのは不利だと判斷したのだ。

スピードなら、誰にも負ける気はしない。

だから、一瞬で短剣の屆く範囲まで潛り込むことに功する。

「ずいぶんと早いな」

「――ッ!」

ロドリグさんが僕のことを見ていた。

今までなら、僕の速さを目で追うことすらできない相手ばかりだったのに、彼は違うようだ。

だが、見えたからといってこの攻撃をさけることをできるはずがない。

「え――ッ!?」

呆然としていた。

僕は遠慮なく、短剣を彼のに突き刺した。

それも彼は鎧をつけていたので、わざわざ鎧の隙間を狙ったうえで突き刺したのだ。だというのに、彼のは短剣を容易に弾いたのだ。

思い出す。攻撃力が低すぎて、モンスター相手に傷を負わすことができなかったときのことを。

あれから僕の攻撃力は長したというのに、この男に傷を負わせることはできないということか。

「ガハッ」

気がつけば、僕は肘打ちをくらっていた。

簡単に僕のは背後に吹き飛ぶ、地面に衝突にしてはゴロゴロとが転がっていく。

僕が吹き飛ばされたのを見て、観客たちは歓聲をあげていた。

「うぉおおおおおおお! ロドリグの兄貴、そのままやっちまぇえええ!!」

「アンリのやろ、そのまま死んじまぇええええ!!」

といったじの歓聲だ。

「なるほど、敏捷には目を見張るものがあるが、攻撃力は並以下のようだな。それでは、俺の耐久力を破ることはできないぞ」

勝ちを確信したとばかり、彼はそう呟いていた。

「ほう、だというのに、まだ戦う気か」

立ち上がった僕を見て、ロドリグさんはそう言った。

この男は知らないに違いない。

僕が今まで、何度も自分の攻撃が全く効かない敵に遭遇してきたことを。

それでも僕はこうして生きている。

だから、こんな出來事は絶するには全く値しない。

「おもしろいっ、だったら、とことん相手してやる」

ロドリグさんは笑みを浮かべながら、構えをとる。

殺すつもりで戦おう。

僕はそう決める。それほどの覚悟で戦わないとこいつには勝つことができない。

「〈初月波(ういづきは)〉!!」

再び、彼による橫方向の衝撃波が襲いかかってくる。

それを見て、僕はかすかに笑みを浮かべた。

一度でもこの目で見た攻撃が僕に當たるはずがないだろ。

これなら〈回避〉を使わなくても、よけるのは容易い。

「〈回避〉」

だが、あえて〈回避〉を使うことにする。〈回避〉を使用することで、発生する加速を利用して、一瞬で懐にってしまおうと判斷したのだ。

「〈必絶(ひつぜつ)ノ剣(つるぎ)〉」

そして、さっきは遠慮して使わなかったスキルを発させる。

これを使えば、どんな耐久力をもった相手でも問答無用でダメージを與えることができる。

だから、僕は勝利を確信した。

「やはり早いッ!」

ロドリグさんがそう言うってことは、僕のスピードを目で追うことができている証拠だ。

だが、この距離からの攻撃をよけられるはずがない。

――あれ?

想像とは違うに疑問を覚える。

短剣が手甲で防がれている。

僕の攻撃から逃れられないと判斷したロドリグさんは咄嗟の判斷で手甲でを守ることを選択したようだった。

スキル〈必絶ノ剣〉のおかげで、手甲を斬り裂くことに功しているが、に傷を負わせることができたかというと、そういうわけではなかった。

「〈回避〉」

この距離なら、大剣で攻撃するより拳のほうが早いと判斷したロドリグさんが僕に対し、拳で毆りかかろうとしていたのを〈回避〉をつかってのがれる。

もう一度、僕が攻撃をするチャンスを得ることができた。

だったら、今度は確実に仕留めよう。

「〈必絶ノ剣〉」

狙うは首。

首にはなんら防をつけていない。ここを掻っ切りさえすれば、勝利を得られる。

あ、待てよ。

レイドモンスターとこれから戦うんだった。そのためには彼の戦力は必要不可欠。

ここで彼を殺すのはまずい。

咄嗟の判斷で、刃の位置を変えていた。

すると、刃で突き刺していたのはにつけていた鎧だった。スキルのおかげで鎧を途中まで斬り裂くことはできたが、やはりにダメージを負わせることは葉わない。

まずいっ、大きな隙を作ってしまった。

鎧に刺さった短剣を引き抜きながらそんなことを思う。

次の攻撃を避けないと――。

「ガハッ」

ロドリグさんの拳が腹に叩き込まれていた。

攻撃がくることは予想できたが、さけることができなかった。

さっきの肘打ちと違い、今度は拳で全力で毆られていた。

僕のはあっけなく後方に吹き飛ばされては地面を転がっていく。

「うっ」

なんとか立ち上がろうとするが、が思うようにかない。

「勝負はついたな」

だから、あっけなくロドリグさんに近づかれて大剣の切っ先を首に當てられていた。

確かに、勝負はついた。

僕の負けだ。

僕の負けを確信した観客たちは喜びの聲をあげていた。

そんな中、ロドリグさんが口にした。

「俺の負けだな」

と。

「えっと……」

「お前、俺の首を刈ろうと思えば刈ることができただろ」

どうやら直前で、僕が短剣で斬ろうとした位置を変えたことに気がついていたらしい。

「なんで、そんなことをした?」

「殺してしまうと思ったから」

僕が理由を述べると、ロドリグさんは大口を開けて笑い出す。

そして、

「やはり、俺の負けだ」

再度、同じことを述べる。どうやら、負けを認めてくれたらしい。正直、勝った気分にはなれないけど、これでクランのリーダーになれるならよかった。

「だが、リングはもらっていく」

「――え?」

「悪いな。俺は強くなるのに、貪なんだ」

そう言いながら、ロドリグさんは僕の腕にはめていたリングを奪っていく。

「えっ、ちょ、ちょっと待って……」

僕はリングを取り返そうとするが、かすことができないでいた。

そして、リングを奪ったロドリグさんは手を高く掲げガッツポーズをする。

「新しいリーダーの誕生だぁああああ!」

誰かがそう口にすると、皆がロドリグさんの元に「うぉおおお」と歓聲をあげながら集まってくる。

そんな中、寢転がっていた僕は人々に踏み潰されるのだった。

今夜、もう1話投稿します

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