《最弱な僕は<壁抜けバグ>でり上がる ~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~【書籍化】》―89― 予

新しいリーダーの誕生と共に、大きな飲み屋でクランによる飲み會が始まった。

今まで通りのルールだと、クランの名前はリーダーの名前を冠して〈ロドリグのクラン〉と呼ぶことになるが、それはロドリグさんが斷った。

というのも、ロドリグさんはこの町の最難関ダンジョンを攻略し終えたら、町から出ていくつもりらしい。そのときには、クランのリーダーも退任するつもりでいるため、そんな心づもりなのにクランに自分の名前をつけられないということだった。

ということで、クランは引き続き〈名も無きクラン〉と呼ばれることになった。

まぁ、クランといっても組織として活している実態なんてほぼなかったし、レイドモンスターが現れるから、急遽クランとしてまとまろうとなっただけなので、〈名も無きクラン〉という呼稱は実態を現していて意外といいのかもしれない。

「ぎゃはははははっ、アンリー! リーダーに負けて殘念だったな。ぎゃははははっ!!」

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飲み會に參加していたら、ふと冒険者に煽られる。

見ると、僕が直接ぶちのめした冒険者の一人だ。よっぽど、僕がロドリグさんに負けたことが嬉しかったらしい。

ちなみに、こうして僕を煽ってくる冒険者は一人だけじゃなかった。何人もの冒険者が僕と顔を合わせるたびに、こんな風に煽ってくるのだ。

「喧嘩を売っているなら買いますけど」

ロドリグさんに叩きのめされた僕だが、すでに回復薬で戦える狀態まで回復している。

喧嘩しようっていうなら戦えないことはない。

「う、うるせぇ! 今は調子悪いから、お前の相手なんてできねぇんだよ!」

そう言いながら、冒険者は逃げるように離れていく。

ロドリグさんと戦ったおかげで、僕の強さは十分伝わったらしく、僕に立ち向かおうとしてくるものは一人もいなかった。

「あの、ロドリグさん」

隣で大酒を飲んでいるログリグさんに話しかける。

「おっ、なんだ?」

「なんで負けたと認めたのに、僕からリングを奪ったんですか?」

どうしてもそのことが不満で、僕は文句を口にする。

「ふむっ、仮にアンリに首を斬られたとしても俺なら気合いでお前をぶちのめすことができた」

「んな馬鹿なこと言わないでください」

「だったら、ここで試してみるか?」

そう言って、ロドリグさんは不敵に笑みを浮かべる。

恐らく冗談だと思うが、僕が真にけて「やります」なんて言ったら、どう返すつもりなのだろうか。

まぁ、ロドリグさんなら本気で言っている可能もわずかにありそうだが。

「お斷りさせていただきます。それに僕自、あの勝負はあなたの勝ちだと思っていますので、あなたがリーダーをやることに関して不満はないですし」

仮に、あれだけ僕が盛大に負けた様子を他の冒険者たちに見せつけたうえで、僕がリーダーをやることになったら、誰も賛同しないだろう。

そう考えると、やっぱりロドリグさんがリーダーをするべきに違いなかった。

「アンリには副リーダーの地位をやる」

「ありがとうございます」

まぁ、副リーダーになれるだけでもレイドバトルでは十分活躍できるだろうし、ありがたいことには違いない。

「せいぜい、レイドモンスターを頑張って倒すことだな。俺たちは仲間でもあるがライバルでもある。どちらが、貢獻度を上回れるか勝負しようじゃないか」

「わかりました。お互いがんばりましょう」

そう言って、僕は立ち上がる。

「もう帰るのか?」

「家で妹が一人で待っていますので」

僕は飲み會を途中で抜けて家に帰った。

「レイドモンスターが出現したら、非戦闘員は頑丈な建に避難することになっている。だから、お前もちゃんと避難しろよ」

夕飯を食べながら、名稱未定にそのことを伝えていた。

「はぁ~い、わかりましたぁ」

と、理解しているのか不安になるような、ふざけた返事をする。まぁ、伝わってはいることを信じるしかないのだけど。

「人間、お前はどうするんですかぁ?」

「僕はもちろんレイドモンスターと戦うよ」

「……そうなんですね」

名稱未定が意味深な表で頷いているように見えた。

自分もレイドモンスターであるから、僕が同族と戦おうとしていることを心嫌がっているのかもしれない。

「もしかして、僕がレイドモンスターと戦うことが嫌だったりする?」

「いえ、別に好きにしたらいいと思いますよ」

笑顔でそう返す名稱未定を見て、どうやら嫌なわけではないようだと判斷する。

んー、やっぱり彼がなにを考えているのか、僕にはよくわからない。

「そういえば、エレレートはどうしているの?」

勇気を出して、妹のことを聞いてみることにした。

名稱未定にとって、妹のことを聞かれるのは嫌なことかもしれないと思っているせいで、実はあまり聞けないでいる。

「元気にしていますよ。名稱未定ちゃんの中で」

そっけなく彼はそう口にする。

「それは、よかった」

妹が元気にしていることが聞けてひとまず安心する。

名稱未定の中で元気にしているってことが、的にどういうことなのか、僕にはよく理解できないけど。

まだ、レイドモンスターの戦いまで二週間ある。それまでに萬全な狀態で挑めるよう調子を整えないとな。

僕はかにそんな決意をしていた。

夜。

アンリがすでに寢靜まっている中。

名稱未定は窓から空に浮かぶ星空を眺めていた。

「きひっ、レイドバトル実に楽しみですねぇ」

まだ見ぬレイドモンスターに思いを馳せる。

彼、もしくは彼は名稱未定と同時期に創られた存在だ。その過程で、彼、もしくは彼は採用され、名稱未定は沒にされてしまったが。

だから、彼、もしくは彼は名稱未定にとって雙子の弟、もしくは妹のような存在だ。

「きひっ、あいつにこの町の冒険者が勝てるとは到底思えませんね」

遠くない未來のことを予想して、名稱未定は満足そうに笑っていた。

第二章 ―完―

ここまで、お読みいたたぎありがとうございます。

第二章はこれにて完結です。

第三章も引き続き誠意制作中ですので、よろしくお願いします。

大変恐ですが、下の評価欄にて『★★★★★』していただけると大変助かります。

今後の勵みなりますので、ぜひよろしくお願いします。

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