《最弱な僕は<壁抜けバグ>でり上がる ~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~【書籍化】》―93― 魔法の特訓

家に帰った僕は『魔法の教本』を開いて、魔法の鍛錬をすることにした。

「なにを読んでいるんですか?」

興味をもったらしい名稱未定が一度、僕に話しかけてきたので、「魔法の本だよ」と僕が返すと、

「あぁ、あの難しい本ですか」

と、口にした。

以前、〈魔導書〉を読もうとして、さっぱり容がわからなかったことを思い出したらしく、名稱未定は興味を失ったようで、僕から離れていく。

今手にしている本は〈魔導書〉に比べたら、大分わかりやすいんだけどね。

〈魔導書〉はそもそも魔力を流して、魔を會得するための本であり、中読するための本ではなかった。だから、読んで容を理解しようとすること自が間違いだったのだろう。

今読んでいる『魔法の教本』は初心者のための本ということで、大した教養がない僕でもなんとか読み進めることができる。

恐らく、すでに2つの〈魔導書〉で水と土の魔法を會得している事実も、本を読む助けにはなっている気がする。

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〈魔導書〉のおかげで、なんとなくについた魔法の知識が、『魔法の教本』を読むことで、はっきりと頭の中で現化されていくじ、といえば伝わるだろうか。

とはいえ、『魔法の教本』を読んだおかげで、初めて知った知識もいくつかあった。

例えば、この世界は、火、風、水、土と4つの元素が構されているわけだが、この中で火が最も単純な質で、続いて風、水になるにつれ複雑な質になっていき、土が最も複雑な質になるらしい。

ゆえに魔力の消費量も比較的単純な火や風はなく済むが、水や土になっていくと魔力の消費量も増えていくとのこと。

だから、魔法を覚える際も、比較的単純である火や風を、先に覚えたほうがいいとのことだった。

つまり、水と土を先に覚えた僕は特殊なんだろうか。

さらに読み進めていくと、さらなる発見があった。

魔法使いごとに得意不得意があるため、一般的には火が最も魔力の消費量がないのだが、その魔法使いが土に適正がある場合、土屬の魔法が最も魔力の消費量がなくなる場合もあるんだとか。

だから、自の魔法の適正を知ることが大事とのこと。

魔法の適正を知るには、水晶に魔力を流すと、水晶のが変化し、その変化したでわかる。

「この町に水晶って売っているかな?」

高価な寶石類は貴族たちに売られるため、この町の市場にはあまり出回らない。

ちなみに、僕が用している〈水晶亀(クリスタルタートル)の小盾〉は名前のせいで水晶でできていると勘違いされやすいが、明だからそういった名前がついているだけで、実際には水晶とは違うため、魔力の適正をはかるには使えないだろう。

だから、なんとかして水晶を手にれる必要があるが――

「巨大芋蟲(ジャイアント・ワーム)がいたじゃん」

思わず聲をあげていた。

巨大芋蟲(ジャイアント・ワーム)の胃の中には寶石が含まれることが多い。その中には水晶だって含まれているはずだ。

今日狩った巨大芋蟲(ジャイアント・ワーム)はまだ換金所に持っていっていないため、〈アイテムボックス〉の中に収納されたまま。

とはいえ、部屋の中で巨大芋蟲(ジャイアント・ワーム)の死骸を広げるわけにはいかない。

そんなわけで、僕は外に行き、誰にも見られないような場所を探す。

人がいない広場を見つけては〈アイテムボックス〉の中から、巨大芋蟲(ジャイアント・ワーム)の死骸を出す。

そして、胃の中を解すること數十分。

「あったー!」

僕は水晶を見つけることができたわけだった。

水晶というと明な球のものを思い浮かべることが多いかもしれないが、僕が巨大芋蟲(ジャイアント・ワーム)の胃から取り出した水晶は六角柱の形をしていた。

恐らく魔力の適正を調べるには、どんな形でも問題ないはず。

そんなわけで、僕は早速、水晶に魔力を流し込む。

すると、薄い青に輝いた。

ってことは、『魔法の教本』にはなんて書かれていたっけ?

持ってきた本のページをめくり、該當の箇所を探す。

すると、こう書かれていた。

「青った場合、その人は水の魔法に適正がある」

と。

どうやら、僕は水がもっとも適した魔法らしい。

まぁ、〈魔導書〉で最初に覚えた魔法が水だったから、なんとなくそんな気はしていたけど。

となれば、水の魔法を中心に鍛えていくのが良さそうだ。

それから水の項目を重點的に読み込んでいく。

以前、オーロイアさんも言っていたが水の魔法は攻撃に向かないのは本にも同様のことが書いてあった。

水の塊を放って魔にダメージを與えられるようになるには、相當な威力が必要で、そのためには長い鍛錬を積む必要があるんだとか。

となれば、レイドモンスターと戦うまでににつけるのは厳しそうだ。

やっぱり魔法を役に立てるのは難しいかな、と思いながら、読み進める。

「氷か」

ふと、氷に関するページで目をとめる。

水を鋭い氷にした上で放てば、比較的、楽にダメージを與えることができるとのこと。

水を氷にするのは、水に『冷』と『』の質を與える必要があるらしい。『冷』と『』の質は土の元素が持っているため、水の魔法に土の魔法を重ねることで、氷ができる。

だったら、最初から土の魔法で土の槍を作ったほうが楽なような気もする。

だが、本によると土の槍を一から作るより、水から氷の槍にしたほうが魔力の消費がなく済むらしい。

その上、僕の場合は水の適があるから、より向いているとのことだった。

なるほど、と思った僕は早速、両手から水を作り出す。

それを氷にしようと、力をれるが、水から変化する気配がない。

「これは簡単にはできそうにないな」

課題は殘ったが、今後の方針は決まった。

これからは氷の魔法を特訓していこう。

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