《最弱な僕は<壁抜けバグ>でり上がる ~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~【書籍化】》―98― 家でのやりとり

街に行くと住民たちは大騒ぎになっていた。

聞いてみると、どうやら、さきほどのレイドイベントの告知は僕だけではなく、この町に住む住民全員に行われたようだ。

あの告知のおかげで、レイドモンスターの襲來という災害が急に現実味を帯びたせいだろう、住民たちは街頭にでては不安を共有し合っていた。

他にも、普段は商人をやっていて戦いとは無縁そうな人が武を買い漁っていたり、急度に備えて食べを買い溜めしようと食材を売っているお店にたくさんの人が押し掛けていたりしていた。

その後、広場の中央に鎮座した塔の形狀をしたレイドダンジョンを眺めた。

他にも、3つのレイドダンジョンがそびえ立っており、どれも似たような形狀をしているが、この中央にあるレイドダンジョンが最も空高くそびえ立っていた。

このダンジョンの中にレイドボスがいるらしい。

「ねぇ、名稱未定。レイドイベントの告知は見た?」

「なんですか、それ? 名稱未定ちゃんは知らないですねぇ」

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「名稱未定には、屆いていないんだ……」

恐らく町の住民には冒険者でなくても屆いていたと思ったけど、これは、どういうことだろう?

「そんなことより、今日のご飯です。わざわざ夕飯を用意した名稱未定ちゃんに謝してください」

「あ、ありがとう」

そんな會話をしながら、夕食を始める。

「それで、レイドイベントの告知でしたっけ?」

「うん、さっき、急にメッセージが表示されて告知が行われたんだよね」

そう言いながら、僕はステータス畫面を開いて、レイドイベント専用のページを開く。

すると、対面で食事をとっていた名稱未定がわざわざ席を立ち、ステータス畫面を見るために隣までやってきた。

「ルールがたくさんありすぎて、よくわかりませんね」

名稱未定が顔をしかめてそう呟く。

確かに、パッと見でこれらのルールを理解するのは難しいに違いない。僕も、まだ把握しきれていないし。

「とにかく町にモンスターが溢れるのは間違いないみたいだから、名稱未定は安全なとこに避難してよね」

聞いた話だと、非戦闘民は一箇所に集めて、冒険者で護衛するらしい。

名稱未定もそこに避難してもらう予定だ。

「ふんっ、名稱未定ちゃんは最強だから、避難する必要なんてないと思いますが」

「強いのは事実かもしれないけど、人前に見せられる力じゃないでしょ、名稱未定のは」

「そうなんですか?」

と、彼は小首を傾げる。

名稱未定は戦うとき、腕を手にして戦う。そんな力、人前で見せたら、人に化けたモンスターじゃないかと誤解をけそうな気がする。

まぁ、事実、彼はモンスターなんだけど。

「とにかく、名稱未定は安全なとこにいてよね」

「はぁ~い」

と、名稱未定は人を小馬鹿にしたような返事をする。

本當にわかっているのか、と言いたくなったが、こればかりは彼を信じるしかないか。

翌日、今日もいつものごとくダンジョンに行こうと、町を出て――

「おい、アンリ。親分がお前のことを探していたぜ」

ふと、誰かに話しかけられた。

見たことある顔だが、名前までは知らない。恐らく〈名も無きクラン〉に所屬する冒険者だということはわかるけど。

「親分って?」

「ロドリグさんだよ。いつもの飲み屋に來いってさ」

あぁ、親分ってロドリグさんのことか。

「わかった、すぐ行くよ」

僕はそう答えて、いつもロドリグが飲んでいる飲み屋に急いで向かった。

「よぉ、アンリ。待っていたぜ」

「えっと、なんのようですか?」

「これから三巨頭會議があるらしくてよ。それにお前も付き添ってほしい」

「三巨頭會議ですか?」

三巨頭ってのは、この町にある3つのクランのそれぞれのリーダーのことだ。

三巨頭會議ってことは、ようはリーダーが集まってなにか話し合いをするってことなんだろう。

「あぁ、レイドイベントについて、話し合いをするらしいが、俺は頭を使うことが苦手だからな、代わりにお前がやれ」

そんなこと言われても……。

僕だって、そういうのが得意ってわけではない。

「まぁ、言われたからにはやりますけど」

一応、僕は〈名も無きクラン〉の副リーダーではあるので、リーダーの命令を聞く責任がある。

にしても三巨頭會議か。

そこでは、一どんなやり取りが行われるのだろうか。

書籍化とコミカライズ決定しました。

皆さんの応援のおかげです。ありがとうございます。

詳細についてはまた後日。

引き続きよろしくお願いします。

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