ガンッ……！

「……へ？　な、なんだ？」

額にれると、ぬるりとした赤いが手に付いていた。

「痛え……なんだ、が出てる……って、あれ？」

おかしい。

さっきまで指一本かせなかったはずだ。

「！？　ここ、どこ！？」

見渡すと、高級そうな部屋が広がっている。

知らない場所だ。

なくとも魔王城では、ない。

「なにが、起きてるんだ……？」

と、そのとき、出り口のドアが開いた。

「【ユリウス】様！　大丈夫ですかっ！？　凄い音がしましたけど……！」

ってきたのは、メイド服のだ。

ウェーブのかかった水の長い髪を、バレッタで束ねている。

メイドは俺を見ると、青い顔をしてぶ。

「大変！　ユリウス様がお怪我を！」

俺が呼び止める間もなく、メイドは部屋を出て行ってしまった。

「ユリウスって……誰だよ？」

ふと、まわりを見ると、壁に掛けてあった鏡が、俺の視界にった。

「なっ！？　なんだ、これ？」

鏡のなかにいる【自分】を見て、目をむいた。

俺（ユージーン）とは似ても似つかない……年だったからだ。

年齢は１５くらいか。

黒髪に黒い目。

つり上がった目つき。

「若返り？　いや、髪も目もが違う……これは、まさか……」

試しに手を上げてみると、鏡のなかの年も手を上げる。

「俺、なのか……？」

するとさっきのメイドが、また部屋にってくる。

その手には救急箱が握られていた。

「ユリウス様！　すぐに治療します。ベッドにお座りください！」

「え、ああ……どうもありがとう」

「！？」

ガタンッ！

と、メイドが手に持っていた救急箱を、足元に落とした。

「…………」

箱の中が散らばっている。

それを放置して、彼は、ぱくぱくと口を開いたり閉じたりする。

「どうした？」

「あ……いえ。その、すみません」

何度も目を泳がせながら、メイドが作業をする。

彼は止消毒し、俺の額に包帯を巻いてきた。

「なぁ、なんで治癒魔法使わないんだ？」

皮を切ったくらいだ。

魔法でパパッと治るレベルである。

「治癒なんて高度な魔法、この國最高峰の魔導師さまじゃないと使えませんよ」

「はぁ……？」

呆然としてる間に、俺の治療は終了したみたいだ。

「サンキュー。悪いね」

「！？」

持って帰ろうとした救急箱を、またしてもメイドは落っことした。

「お、お加減でも悪いのですか……？　お醫者様をお呼びしましょうか？」

「いや良いって大げさだってば。……ところで、あんただれ？」

ピシッ……！　と彼が固まる。

「えーっと、ど忘れ！　うん、頭打ったときにど忘れしちゃってさ！」

「……私はシャルロットです。ユリウス様の専屬メイドをしています」

「ユリウスって……俺？」

「やはりお醫者様を呼んで參ります！」

ダッ……！　とシャルロットは救急箱も片付けず、立ち去ってしまった。

「どうなってるんだ、これ。まあ、治療しとこ」

包帯を取り外す。

初歩の回復魔法【小回復（ヒール）】を発。

傷口はみるみるうちに塞がった。

「なんだ、使えるじゃん治癒魔法。こんなのが高度……？」

見知らぬ場所に姿。

メイドに常識。

「まさか転生のが、功した……ってことか？」

「お醫者様は1時間もしたら來るそうです！　……って、ユリウス様？　傷は、どうなされたのですか？」

「え、治したよ。魔法で」

「ま、魔法！？　ゆ、ユリウス様が魔法を使ったのですか！？」

彼は駆け足で、俺に近づく。

「治ってる？　まさか、こんな高度な魔法を、【魔無し】のユリウス様が使えるわけなど……」

キレイに治った額を見て、メイドは呆然とつぶやくのだった。

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