最初の授業は、グラウンドで執り行われることになった。

「本日は、【従魔召喚（サモン・サーヴァント）】の授業を行う」

魔法學の先生が、同級生たちを見渡して言う。

「サーヴァント？」

「使い魔のことだよ、ユリウス君」

エリーゼが笑顔で答えてくれる。

今朝助けて以降、彼から積極的に會話してくれるようになった。

「１年生になると自分の使い魔となるモンスターを呼び寄せる儀式を執り行うの」

「へえ、エリーゼは知りだな」

「えへへっ、そうかなっ♡」

髪を切ってから、彼は格だけでなく、見た目も１８０度変わった。

大きくぱっちりとした二重。

背筋をばすようになり、彼の大きな房が目立つようになった。

「従魔は己の素質や將來に見合った生が、古今東西より呼び出される。偉大な人の従魔は、それにふさわしい威容をもった生が召喚された」

なるほど、自分の強さや將來を現化したようなものなのだな。

「では儀式を行う。呼ばれたものは【従魔召喚陣】の前までくるように」

グラウンドには、魔法陣が敷かれてる。

２０００年前にはなかった式が使われているようだった。

生徒のひとりが、魔法陣の前に立ち、両手を前に出す。

「魔力をこの円に込めろ。従魔が召喚される」

生徒が魔力を流すと、魔法陣がカッ……！　と発する。

すると、そこに白い狼が出現した。

「【白狼（ホワイト・ウルフ）】。レベルは……１５か。平均的だな」

火蜥蜴のときもおもったけど、魔のレベルもなんか落ちてないか？

「先生！　次はこのボクに！　やらせてください！」

気合い十分で前に出たのは、我が弟だった。

「見てろよ出來損ないのクズ兄貴！　ボクが……すごい従魔を召喚し、おまえを見返してやるッ！」

バッ……！　とガイアスが魔法陣に手をばし、魔力を流す。

カッ……！

「おおっ！　これは素晴らしいッ！　鷲獅子（グリフォン）じゃないか！」

上半がワシ。

下半がライオンの従魔だ。

「天空の覇者とも言える存在！　レベル５０！」

「どうだ兄さん！　これが次期當主の真の実力だ！」

「え？　この程度が？」

レベル５０って、中堅冒険者がソロで余裕で倒せるくらいの強さだぞ？

「なら兄さん、ボクよりすごい従魔、もちろん召喚できるんだよねっ？」

「うーん、どうだろうな」

俺は魔法陣の前に立つ。

全集中を使って、魔力を流す。

ゴォオオオオオオオオオオ！

「なっ！？　なんだこのの柱はぁ……！」

グラウンド全を覆い隠すほどの、強烈ながあたりを照らす。

ややあって、俺の従魔が召喚された。

「りゅ、竜だぁ！！！」

先生は餅をついて、そいつを見上げる。

この広い校庭と同じくらいの格を持った、巨大な竜がいたのだ。

「そ、そんな……またボクは負けたのか……！　くそっ！　くそぉおおお！」

しかし誰も弟を見ていない。

彼らの注目は、俺の従魔に集まっている。

「れ、レベルの測定不能！？　いったいなんなのだ、この従魔は！」

「え？　おまえら【こいつ】知らないの？」

『無理もない。我の名を知ってはいても、実を見たものはないだろうからな』

「「「しゃ、しゃべったぁ！？」」」

先生も生徒も、いっせいに愕然とした表になる。

「そんな馬鹿な！？　知のある従魔なんて聞いたことがないぞ！」

「というかレベルが計れない時點でおかしいって！」

「それを呼び出したユリウスは……いったい何者なんだ！？」

大げさに騒ぐ生徒達を見て、竜は笑う。

『これは驚いた。世界を救った人間を知らぬとは！　のぅ、勇者よ？』

俺が従魔として召喚したのは、【魔王ヴェノムザード】だった。

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