《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》14.勇者、弟に従魔の格の違いを見せつける

グラウンドにて。

俺の従魔(サーヴァント)として呼び出されたのは、魔王ヴェノムザード。

【厄災邪竜帝(クリフォト)】の別稱にふさわしい威容を備えている。

から常に膨大な量の魔力が噴出していた。

その邪悪なる竜は、かつて勇者(おれ)が倒した魔王に相違なかった。

『そう構えるな。今の我に敵意はない』

ヴェノムザードがしゃべるだけで、膨大な量の魔力がほとばしる。

「ひぎぃいいいいいいい!」

一番近くに居たガイアスが、魔力に當てられて、へたり込んでしまう。

『我が魔力の波けても平然とするか。うむ、さすが勇者、転生してもなおその強さは顕在だなっ。よいよいっ』

「そりゃどうも。敵意がないなら、魔力量をし抑えてくれ」

『これは失禮した』

ヴェノムザードは翼を広げる。

カッ……! と黒く輝いた。

巨大な竜は、みるみるんでいき、やがて【人間の】へと変化した。

「これでどうだ?」

外見年齢は20代前半。

豪奢かつ華な漆黒のドレス。

長く艶やかな銀髪は夜空の星のようだ。

そして目を引くのは驚くほど大きな房。

「さて、せっかく時を経て再會したのだ。勇者よ、まずは約束を……」

と、そのときだった。

「なぁっ! にっ、人間に変化する従魔だとぉおおおおおおおお!」

弟が変化した魔王を見て、驚愕の表を浮かべる。

「莫大な魔力量……しゃべる知……ボクのとは、比べものにならない……いや! そんなことはない!」

ガイアスは立ち上がると、俺にビシッ! と指を突きつける。

「兄さん! どっちの従魔が優れてるか、この場で勝負しろ!」

「なんだ、決闘か? よい、相手してやろう」

好戦的な笑みを浮かべて、ヴェノムザードがガイアスの前に立つ。

「ほら、かかってこい羽蟲?」

「兄に似て、むかつく従魔だ! ゆけ鷲獅子(グリフォン)! 殺せぇ!」

だが、ガイアスの背後に立つ鷲獅子は、を震わせ一歩もけないでいた。

「どうしたんだよぉ! ボクの言うことを聞けよぉ!」

「主人よりも従者の方が賢いな」

「なんだとっ!? どういうことだっ!」

「分を弁えよ、癡れ者が」

魔王がひと睨みする。

ボシュウッ……!

「な、なにぃいいい!? ぼ、ボクの従魔が消し飛んだだとぉおおおお!?」

魔王は膨大な魔力をそのめている。

そのせいで、一挙手一投足に魔力が宿る。

にらむ、という行為が必殺の魔法へと変化するのだ。

「なんて規格外の従魔なんだ。これが、兄さんの將來……ボクなんかよりも、何萬倍も……すごいってことかよぉ~……」

膝をつき、悲嘆に暮れるガイアス。

「取るに足らぬ雑魚だな。……やはり、心躍るのはおまえとの対戦だけだ。なぁ、ユリウス?」

晴れやかな笑顔で、ヴェノムザードが俺に近づく。

「おまえ、本當に魔王なのか?」

「然り。ただ、我はどうやら本の魔王ではなく、ヴェノムザードの模造品(コピー)のようだ」

「コピー?」

魔王曰く、従魔召喚は、実を呼び寄せるのではないそうだ。

同じ能力と記憶を持ったコピー品を、時代を超えて者の前に顕現させるらしい。

「この世に顕現する際、従魔には者の命令には絶対従う【縛り】がもうけられている。この我は魔王であって魔王ではない。今はおまえの忠実なる下僕よ」

さて、とヴェノムザードが、楽しそうに笑う。

「なぁ勇者。我は今とても心が躍ってるよ」

魔王のからは、戦意とともに膨大な魔力と闘気の嵐が吹き荒れた。

「あひ……あひ〜……」

ガイアスはそれを直視して、口から泡を吹いて失神する。

他の同級生達や先生も同様だった。

「さぁ我が主人よ。再會を祝し、拳で語り合おうか!」

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