《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》16.わがまま王の破滅〜その1〜

転生勇者ユリウスが、魔王を召喚した、一方その頃。

學園を休んだ王ヒストリアは、父親である國王の前に居た。

「この愚か者がぁ!」

國王は顔を真っ赤にして、娘であるヒストリアをしかりつける。

「報告があったぞ! カーライル公爵の長男から婚約を解消されたそうだな! なぜ解消される羽目になった!?」

「そ、それはぁ……」

ヒストリアは押し黙る。

実は婚約者ではなく、その弟と浮気していた、なんて言えるわけがない。

「あ、アタシには一切の非がありません! 彼がただ理不盡に婚約解消を突き付けてきたのです! 信じてくださいお父様!」

あの男に責任を押し付けて、逃げてやろうとヒストリアは考えた。

「ほぅ……そなた、いま自らに非はないと言ったな」

「ええ、もちろん!」

「ではなぜ、カーライル家の次男と會していた?」

「え……?」

突然のことで、ヒストリアの頭は真っ白になった。

「娘が婚約解消されたのだ。その原因を調べさせないとでも思ったか、ヒストリアよ?」

「あ……あぁ……」

ぐにゃり、と視界がゆがむ。

「この……大バカ者がぁあああああああああ!」

父親は激高すると、立ち上がり、娘の頬を張り倒した。

「仮にも王の娘が浮気をするとはなんたることだ! しかも噓をついて責任を逃れようなど、言語道斷!」

「す、すみませんお父様! これには事が……!」

「言い訳など聞きたくない! いますぐユリウスの元へ行って土下座でもなんでもして、婚約解消を取り消してもらって來い!」

怒り心頭の國王は、ヒストリアに言い放つ。

「ユリウスとの関係が修復できなかった場合、そなたを城から追放する!」

さぁ、とヒストリアは顔を真っ青にする。

「そ、それだけはご勘弁ください!」

「ならば全全霊をかけて謝罪してくるのだ。ユリウスを連れてくるまでは城への出りを止する」

「そ、そんな! 無理よ!」

「無理でもなんでもやるのだ! やらねば即座に永久追放するが、それでいいのか!?」

ぐっ、とヒストリアは歯噛みして、悔しそうにつぶやく。

「わかり、ました……」

かくして、ユリウスとの関係を修復するために、必死になって彼の機嫌を取る羽目となった。

さて。

午前中の授業を休んだヒストリアは、午後から學園に登校した。

「なんでアタシが頭下げなきゃいけないのよ……悪いのはあんなのを婚約者に選んだお父様じゃない!」

ぶつぶつと文句を垂れ流しながら、ユリウスのいる教室を目指す。

「まあでもいいわ。関係修復ってようするにユリウスをまたメロメロにすればいいんでしょう?」

ヒストリアは自信たっぷりに笑う。

「あいつ、最近ちょっとおかしかったけど、アタシがちょおっとびてあげれば、すーぐコロッとアタシに惚れるわよね!」

教室の前までやってきた。

手鏡を取り出して、自分の貌を確認する。

「こんなにしいなんですもの、すぐアタシを好きになるはずよ絶対。なにせアタシに貌でかなうはいないからね!」

がらり、とヒストリアは教室の戸を開ける。

一番奧に、ユリウスが座っていた。

「あーん、ユリウスぅ~。會いたかったわぁ……って、だ、だれよ、あの【たち】!」

そこにいたのは、王なんて比べにならない、超絶がいたのだ。

それも、【2人も】である。

ひとりは、金髪のハーフエルフ。

もうひとりは、長い銀髪がしい、超絶人。

「アタシより顔、小さい。目もでかい。も……な、なんなの、あんな、教室で見たことなかったわ!」

たちは、ユリウスと楽しげに話している。

ヒストリアはしいたちを呆然と見つめる。

その脳裏には、破滅への足音がはっきりと聞こえたのだった。

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