俺が教室で、晝食を食べているときのこと。

「ミスタ・カーライル、いますか？」

魔法學の先生が、ドアを開けてってきた。

「學園長がお呼びです、至急、わたしと一緒に來てください」

「はい！　わかりました！」

弟は勢いよく立ち上がり、駆け足で先生の元へ向かう。

「學園のトップが、兄さんじゃなくて、ボクに何の用でしょう！」

「あ、いえ。あなたじゃないです」

「え……？　え、そ、そう、ですか……」

かぁ、っとガイアスが耳まで真っ赤にして、消えるようにしてつぶやく。

呼ばれた俺は立ち上がって、先生の元へ行く。

「くそっ！　また選ばれたのは兄さんの方だなんて！　畜生！」

「え、おまえ何悔しがってるんだ？　単に呼ばれただけで」

ガイアスは俺をにらむと、教室から出て行ってしまう。

「では、參りましょう」

先生に連れられ學園の廊下を歩く。

改めて校舎を歩くのは初めてだな。

「ん？　あれ？　なんかここ見覚えあるな」

「見覚えも何も、あなたここの生徒でしょう？」

中である俺は転生してまだ２日。

學園に詳しいわけがない。

「すごい既視があるんだよなぁ、この學園の構造」

ややあって。

俺はひときわ高い塔の上にある、部屋の前にやってきた。

「中にって待っていなさい。學園長をお呼びしてきます」

俺は言われた通り、ドアを開けて、中にる。

妙な裝の部屋だった。

山積みになった本だけでなく、遠鏡や、仰ぎ見る程度の大きさの【とかげ】の標本が飾ってある。

「ん？　誰かいる……子供？」

ソファにいの子が座っている。

ふわふわとした紫の長い髪に、あどけない表。

くりくりとした大きな目が、より一層さを際立たせる。

「學園長の親戚の子供か？」

は羊皮紙を広げて、熱心に読んでいる。

他に座って待つところもなかったので、俺は彼の隣に腰を下ろす。

「よっ」

「…………」

羊皮紙から顔をあげると、はきょとんと眼を丸くする。

だがすぐに、ふっ、と上品な微笑を浮かべる。

「こんにちは」

「何読んでるんだ？」

「これは【魔法巻(マジック・スクロール)】です。魔法陣をあらかじめ羊皮紙に書いておくことで、魔力を流すだけで魔法が使えるというものです」

「ふーん……ちょっと見せてくれよ」

「ええ、どうぞ」

俺は暇つぶしに、羊皮紙に描かれた魔法陣を見やる。

「え、なにこれ？」

「つい先日わたしが作った、新しい魔法の魔法陣です」

描かれていたのは、あまりにお末な出來の魔法陣だった。

「どうかしたのですか？」

「ちょっとペン貸してくれない？　添削してやるよ」

は素直に、羽ペンを手渡してきた。

俺は羊皮紙に描かれた無駄な部分を省き、より効率よく魔法が使えるよう、魔法陣に手を加える。

添削した魔法陣を見せると、は目をキラキラさせながら言う。

「なるほど！　この構文をし直すだけで威力が１０倍に、魔力変換効率を１００倍に変えることができるんですね！　すごいです！」

「おまえ、センスはなかなかいいな。けど末尾に無駄な構文を多用する癖がある。そこをなおせばより上手に魔法陣が描けると思うぞ」

「はい！　アドバイスありがとうございます、ミスタ・カーライル！」

が笑顔で、俺を見て言う。

「ん？　なんで俺の名前知ってるの？」

すると部屋のドアが開いて、魔法學の先生がって來る。

「學園長！　すでに部屋に來てるのでしたらおっしゃってくださいよ！」

「え、學園長？」

は背筋をばし、ほほえみながらいう。

「初めまして、わたしは【アリシア＝フォン＝メイザース】。この學園の長を務めております」

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