《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》26.魔神、復活するが勇者にワンパンされる
転生勇者ユリウスが、この世界に來て數日が経過したある日。
辺境のとある窟の中にて。
聖職者の集団が、ひとつの【像】の前で、必死になって神聖魔法を唱えてた。
「駄目です大司教! もう持ちません! 【邪神】の封印が解けてしまいます!」
部下のひとりが、泣きそうになりながら言う。
「持ちこたえるのじゃ! こやつは2000年前に生きていた最強の邪神【ガンデスブラッド】! 封印が解ければ人類に……勝ち目はない!」
大司教に発破をかけられ、聖職者達が神聖魔法を使う。
「お父様……わたくし、もう……」
彼の隣に立つのは、赤髪の。
純白の裝を來た彼が、汗をびっしょりにしてつぶやく。
「耐えるのじゃ、【メアリ】! おぬしは四聖【セイファート】様の聖の力をけ継いだ存在! おぬしが倒れたら終わりじゃ!」
邪神復活を阻んでいるのは、聖メアリの貢獻が大きかった。
彼がいなければ、邪神はもうし早く復活してしまっただろう。
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だが、どんな人間にも限界はある。
聖職者達がこの邪神像のもとへやってきて、3日。
寢ずに魔法を使い続けたが、ついに……。
ドサッ!
「メアリ! くっ……!」
「大司教! 邪神像が壊れます!」
バキィイイイイイイン!
像が々になった瞬間、凄まじい量の【瘴気】が噴出した。
「なんという瘴気! 年々なぜか瘴気の濃度が濃くなってきているとは學者達から聞いたが、ここまでのものは初めて見た!」
吹き上がった黒いガスは、やがて【人間】へと形を変えた。
【あーっはっはっは! やったぞ! 2000年ぶりの地上だ!】
邪神は高らかに笑う。
それだけで、周囲に衝撃波が走る。
數多いた聖職者達が吹っ飛び、壁にをぶつけ気を失う。
「邪神が復活しよった。終わりじゃ……もう……」
「まだですわ!」
メアリが果敢にも立ち上がり、世界最高峰の神聖魔法を発させる。
「【聖(フォトン)】!」
が、邪悪なる存在を焼き殺そうとする。
【なんだ、この弱な魔法は?】
「そんな……! 聖(わたくし)の力を、振り絞って使った魔法が……」
ガンデスブラッドは瞬間移。
メアリの首を摑み、持ち上げる。
「や、やめろぉ! 娘を離せぇ……!」
大司教が邪神の足に摑みかかる。
【れるな、ゴミが】
バシュッ……!
「ひっ! お、お父様ぁああああ!」
邪神の手から発されたのは、魔力でできた弾丸だ。
それは目にもとまらぬ早さで、大司教の上半を々にしたのである。
【そぉら! このおれさまが復活した祝砲だぁ!】
ガンデスブラッドは手を天井にかかげる。
そこから、雨あられのように、弾丸が発された。
ドガガガガガガガガガガガガッ!
聖職者達は今の攻撃で全員死亡。
天井にはぽっかりとが空いている。
「お父様……みんな……」
【おまえはおれさまの飯だ。のは味いからな】
邪神はメアリを持ったまま、ダンッ……! と飛び上がる。
窟から飛び出て、地上へと降り立つ。
【良いじに世界の瘴気が濃くなっているではないか! 邪神の復活を契機に、各地で眠っていた魔のたちが復活するだろう!】
メアリは絶の表を浮かべる。
魔王の生きていた時代とは違い、今は太平の世。
戦うすべを持つ者は非常にないのである。
【わが魔力をじとり、目を覚ませ同胞たちよ! 再び地上を阿鼻喚の……】
と、そのときだ。
「おーい、そこのあんた」
ガンデスブラッドの眼前に、黒髪の年が、突如現れたのだ。
【あぁ? なんだ貴様は……?】
小柄で、目つきの悪い男。
それ以外に特徴は無く、どう見ても弱そうだ。
「の子を暴に摑むのはよくないぞ?」
【人間ごときが命令するとは……萬死に値するぞ!】
邪神のからは、莫大な魔力が噴出される。
「お逃げくださいまし! この者はガンデスブラッド! 2000年前に猛威を振るった魔神の一柱ですわ!」
「へぇ、そう」
メアリは困した。
目の前の年が、この荒れ狂う魔力の嵐を前に、落ち著いていたからだ。
【死ねぇ!】
ガンデスブラッドは、魔力の銃弾を撃ち出す。
「よっと」
パシッ。
【なっ!? つ、摑んだだとぉおおおお!?】
邪神は、驚愕のあまり、メアリを落としてしまう。
【馬鹿な! 目で追える速さではなかった! それをどうやって!?】
「え、普通に見えてたぞ?」
【あ、あり得ぬ……何かの間違いだぁ!】
バッ……! と邪神は両手を前に出す。
ドガガガガガガガガガガガガッ!
弾丸が豪雨のように、年のもとへ降り注ぐ。
しかし彼は一瞬で、消える。
「おまえ、大丈夫か?」
メアリは、空の上にいた。
年が彼をお姫様抱っこしている。
「ちょっとここで待っててな」
年がメアリを離す。
「空を飛んでますわぁ!? いったいどうやって!?」
「え、空中浮遊の魔法だけど?」
対象を空中に浮かせておく、超高難易度の魔法だ。
メアリを殘して、地上へ降り立つ。
「よっ、続きやるか」
年の瞳にぞくりッ……! と悪寒をじた。
【こ、このおれさまが、こんなガキに怯えることなど! あってはならんのだぁあああ!】
邪神は超至近距離で、魔力の銃弾を速砲のごとく撃ち出す。
一撃で地形を変える威力のある弾丸。
無數のそれをけても……しかし、彼は平然としていた。
「もういいな。そんじゃ【聖(フォトン)】」
カッ……!
その瞬間、大陸全土を、聖なるが包み込んだ。
邪神は斷末魔のびをあげる暇もなく消滅。
小型の太かと錯覚するほど、強烈なは、數分間消えることはなかった。
ややあって。
年はメアリを回収し、地上へ下ろす。
「ケガはないか?」
「え、ええ……」
「ほかにケガ人、いるな」
年はから飛び降りる。
死となった聖職者達の前に立つ。
「お父様達は……もう……」
「【死者蘇生(レイズデッド)】」
その瞬間、純白の強烈なが、窟を包み込む。
「生きてる……生きてるぞ!」
「お父様ぁ……!」
メアリはの縁に手をかけて、中を見やる。
父だけでなく、他の聖職者達も復活していたのだ。
「失われた死者蘇生の……聖であるわたくしでも使えないそれを、大人數相手に使うなんて……」
メアリは年を見やる。
そこで、彼はこちらを見上げて、ニコッと笑った。
ドキッ。
「な、なんですの……この、の高鳴りは……?」
年は浮かび上がると、から飛び出てくる。
「ケガ無くてよかったよ。そんじゃ」
「あの! お待ちになられて!」
止めるまもなく、年は去ってしまった。
「メアリよ……今の彼は、いったい……」
「わかりませんわ……ただ、彼の著ていた制服は、わたくしと同じ【學園】のもの」
頬を紅させながら、メアリはつぶやく。
「わたくし、あの方に會って、お禮を言ってきますわ!」
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