《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》30.勇者、戦わずとも連勝してしまう

武闘大會。

1回戦はなぜか不戦勝だった。

2回戦を前に、飲みものを買いに、廊下に出たそのときだ。

「やいユリウス! おまえインチキしたんだろ!」

1年生が、俺に詰め寄ってきたのだ。

「え、してないぞ?」

「とぼけんな! 勇敢な【兄様】が棄権するわけ無いんだ!」

1回戦で戦うはずだった人の弟らしい。

「どうせ汚いマネしたんだろ! このぉ!」

俺のことを、毆ろうとしたそのときだ。

「おーっと、ストップ。そこまでだ」

パシッ。

「なっ!? 【ネルソン先輩】……」

彼を止めたのは、背の高い男子學生だった。

和な笑みを浮かべながら、1年生の手を背後から取った。

「ドミニク、兄ちゃんが棄権したからって決めつけは良くないぜ?」

「でも……ネルソン先輩。こいつ絶対インチキしてますよ! 代表選抜戦もでてなかったし!」

「それはユリウスが特待生だからだよ。選ばれるくらいに強いんだ、不正なんてする必要ない。それに現場を見たわけじゃないんだろ?」

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「そ、それは……」

うつむく1年生。

ネルソン先輩は笑って、彼の頭をなでる。

「兄ちゃんが負けて悔しいのはわかる。けど証拠も無しに相手を貶しちゃだめだ。兄の顔に泥を塗っちゃうぜ?」

「……ごめん」

ぺこり、と1年生が俺に頭を下げる。

が負けて気が転してたんだろう。大めに見てくれないか、ユリウス?」

「いいよ、別に気にしてない」

「サンキュー。ほら、行った行った」

ネルソン先輩は、立ち去っていく1年生に手を振る。

「ありがとな」

「なぁに、もめ事を解決するのは【風紀委員】の仕事だからな」

先輩の腕には、【風紀委員】と書かれた腕章があった。

「あらためて、【ネルソン・ハワード】だ。3年生で、君の2回戦の対戦相手【だった】」

差し出してきた手を握りながら、俺は首をかしげる。

「だった?」

「棄権させてもらうよ。私では、君に勝てない」

「え、俺何かしたっけ?」

苦笑しながら、ネルソン先輩はスッ……と目を細める。

「何もしてないさ。ただ、その完された、無駄のない見事な、平常時の重心の取り方をみればわかる。君が、とてつもない達人であることはね」

ふぅ、とため息をついて、先輩が首を振る。

「対戦相手が君みたいなバケモノ新人だとは。ついてないよ……ところで」

ぽんっ、とネルソン先輩が俺の肩をたたく。

「風紀委員に興味ないか?」

「え、ない」

「即答かよ。面白いヤツだな。ま、考えておいてくれよ。君みたいな強い男がいれば、この學園の風紀はより保たれるだろうなって思ってさ」

ニコッと笑って、ネルソン先輩は立ち去っていく。

「また戦う前に勝っちゃったな。って、ん? なんか落ちてる?」

足下に、【風紀委員の腕章】が落ちていた。

「先輩……って、いない。返しに行かないとな」

それはさておき。

3回戦。

ようやく俺は、闘技場(コロシアム)の、メインアリーナに來れた。

「うひゅーっ! 対戦相手が1年の魔無しが相手なんてなぁ! 僕ちんメガらっきぃ~!」

対戦相手は、4年生の男子生徒だった。

「ケガしてもしらねぇぜぇ~? 僕ちん、相手が雑魚でも手を抜かない主義なんだぜぇ~い?」

4年生は試合開始前から、長々と何かを囀っていた。

「ではこれより、ユリウスVSレスターの試合を始めます。試合……開始!」

「うひゅー! 殺戮ショーのはじまりだぜぇ!」

試合よりさっさと先輩に、腕章を返しに行かないとな。

大事なものだろうし。

「先輩は観客席に……お、いたいた」

観客席にいる先輩めがけて、聲を張る。

「おーい! ネルソンせんぱぁい!」

「うぎゅっ……!」

4年生は、妙な聲を上げて、固まる。

「腕章、おかえししまーす!」

俺は軽く腕章を持ち上げて、軽く腕章を投げる。

ひゅんっ……!

パシッ!

ネルソン先輩の手に、腕章が握られる。

「よく私が見つかったなぁ! この大勢の中から!」

「目はいいもんで!」

「そうかぁ! サンキューなぁ! あとでお禮するよー!」

さて、先輩に腕章を返せたな。

「ユリウスくん、試合中ですよ。私語は慎むように」

ドサッ……!

「え、なに? どうしたの、4年生の先輩?」

彼は泡を吹いて、前のめりに倒れていた。

「これは……気絶していますね」

「え、なんで?」

「あなたが張り上げた聲だけで、三半規管を狂わせ、相手を気絶させてしまったようです。さすがは、特待生。見事です」

審判の先生は、俺の腕を持ち上げて宣言する。

「勝者ユリウス! よって決勝戦は、ユリウスVSガイアスに決定しました!」

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