《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》31.勇者、大観衆の前で弟に圧勝する

武闘大會も、いよいよ決勝戦。

「これより、ユリウスVSガイアスの試合を行う!」

ワァアアアアアアアアアアア!

闘技場(コロシアム)には、大勢の観客が所狹しと座っている。

「ご覧よ。今日の最終試合ってことで、みんな注目してるんだ……兄さんの大敗北をね!」

數日前とは打って変わって、自信に満ちた表で、ガイアスが言う。

「今日ボクは絶好調さ! 全試合圧勝! あんたは絶対に、100%負ける!」

観客に聞こえるくらい、大きな聲でガイアスが言う。

「いいぞー! ガイアスー!」

「またさっきの試合みたいに華麗に決めてくれー!」

ワァアアアアアアアアアアアアア!

「聞いたこの聲援! ボクの勝利を期待し、後押ししてるんだ。あんたの勝ちは誰もんでないんだよ!」

「そろそろ時間です、私語は慎むように」

俺たちは距離を取って、相対する。

「ん? おまえ、二刀流だったか?」

弟の手には、カーライル家の寶剣。

そして逆の手には、雷速の剣が握られていた。

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「アンタに勝つために、寢る間も惜しんで會得したんだよ!」

「では……試合、開始!」

ガイアスはダンッ……! と素早く地面を蹴る。

「雷速剣の素早さに、魔力による強化か」

以前より格段に、ガイアスのスピードは上昇していた。

並の剣士なら、きについて行けず負けていただろう。

弟が間合いにってくる。

俺は相手の出方を見るため、軽く剣を振る。

「そこだぁ! くらえ!」

俺の剣を、ガイアスの剣が弾く。

パリィイイイイイイイイイイン!

「攻撃反(パリィ)じゃん」

「どぉだぁ! あんたの剣を見て盜ませて貰ったんだよぉ!」

がら空きになっためがけて、ガイアスが2本の剣を突き出す。

「終わりだ! クソ兄きぃいいいい!」

俺は左手に、2本目の剣を出現させる。

そして、ガイアスの雙剣を弾いた。

パリィイイイイイイイイイン!

「ぐわぁあああああああ!」

ガイアスは木の葉のように、宙を舞う。

滯空したあと、ぐしゃっ! と落ちる。

しぃーん……。

「……え? うそ」

「……あ、あの強いガイアスが、一撃で?」

ざわ……ざわ……。

「まだ……まだぁ……!」

ゆらり、とガイアスは立ち上がる。

雙剣を構えて、特攻をかけてきた。

「せやぁああああああ!」

すかっ……!

俺は足を払って、弟の勢を崩す。

「ぶべっ!」

「確かに速くなった。けどきがまだ単純すぎる。腕の立つ相手には通じないぞ」

「兄貴面、すんじゃねえっつってるだろぉ!」

ガイアスは立ち上がると、雷速剣で強化したスピードで、俺に連撃を放つ。

キンキンキンキンキン!

「うそ! ガイアスの高速の剣を、一歩もかずに全部捌いてるなんて!」

「あのきより速くいてるのに、息ひとつしてない!」

ガイアスの攻撃は、力を消耗するにつれて、度が落ちてくる。

キンッ……!

「ぐああああああああ!」

ガイアスは俺の剣に押されて、仰向けに倒れてしまう。

「やだぁ、だっさぁ~い」

「あんだけ調子乗ってたのに結果これかよ、ウケるわ」

「てかユリウスってあんなすごかったの……?」

ざわ……ざわざわ……。

「ぜぇ! はぁ! ハッ! ハッ! はぁ!」

ガイアスは汗だらけになって、肩で息をしている。

「そん……な……こんなに……頑張っても、兄さんには……勝てないのかよぉ……」

「もう十分だろ。ギブアップしな」

グッ! とガイアスは歯がみすると、よろよろと立ち上がる。

「まだ……だぁ! 奧の手が、殘ってる!」

ガイアスは従魔であるグリフィン、召喚獣であるサラマンダーを呼び出す。

「ボクはこのクズに打ち勝つ……力を寄越せぇ!」

鷲獅子は魔法で嵐を、火蜥蜴は炎を、それぞれガイアスの雷速の剣にぶつける。

ゴォオオオオオオオオオオオオオ!

「なっ、なんてすごい炎の嵐だ!」

「あんなの喰らったらひとたまりも無いぞ!」

闘技場のアリーナ全を覆うような、凄まじい炎の渦が巻き起こる。

「死ねぇ! 兄さぁああん!」

ガイアスは剣を、俺に向かって振り下ろそうとする。

「それは危ないな」

俺は剣を創生し、軽く振る。

スパンッ……!

斬撃は飛翔し、炎の渦とぶつかると、綺麗さっぱり消えてしまった。

「う、うそだろぉ!?」

「ユリウスのヤツ、あのすげえ炎を一撃で消し飛ばしやがった!?」

魔力切れで、ガイアスが膝をつく。

「い、いったい……なにがおきたんだよぉ……」

「え、魔力の中心を斬って、魔法をキャンセルしただけだぞ?」

魔法は、魔力を集中させて放つ。

その集中している點を破壊されると、魔力は霧散し、魔法が消えてしまうのだ。

「【反魔法】って技だ。覚えておくと良いぞ」

「くそ……こんな……はずじゃ……」

観客達は、揺していた。

「し、信じられない! カーライル家の長男が、優秀って言われてる弟に圧勝したぞ!」

「すげえ! いつの間にあんなにも強くなったんだ!?」

俺は弟の元へゆき、手を差しのべる。

「ナイスファイト」

「うるさぁああああい!」

バシッ!

「あんたのせいで、大勢の前で恥をかいたじゃないか! どう責任取ってくれるんだよぉ!」

弟は大粒の涙を流しながら、けない聲で言う。

「恥じることなんてないだろ」

「うるさい! このバケモノ! あんたがいるとこっちが慘めに見えるんだよ! ちくしょぉー!」

弟は剣を放り投げると、闘技場から走って出て行く。

「優勝は、ユリウス=フォン=カーライル!」

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