《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》39.魔族、弟を拐しようとして失敗する

転生勇者ユリウスが、武闘大會で魔神を倒した。

そのうわさは、隠れ潛んでいた魔族たちに、瞬く間に広がった。

魔族たちの意見は、3つに分かれた。

総力を挙げてユリウスを討伐する派閥。

ユリウスに全面降伏する派閥。

そして最後に、【ユリウスを利用して世界の覇権を奪う】派閥。

ここに魔族が一人いる。

名前は【ライカン】。

2足歩行するオオカミの魔族だ。

深夜。

ライカンは、カーライル公爵の邸宅の屋上にいた。

「そんじゃ【拐】しにいきますかぁ」

彼は能力(アビリティ)を発させる。

【完全隠】。

足音や呼吸音、そのほか生きているとどうしても立ててしまう音を、完璧に消し去ることができる。

「おれは隠に全振りしてるからよぉ、膂力は魔族最低だ。けどよぉ、人さらいには向いてるよなぁ」

ライカンは邸宅の窓ガラスをぶち破り、中にる。

彼の能力の発中は、破砕音すらも消すことができる。

闇に紛れ、音もなく走る。

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目指すのはユリウスの部屋……ではない。

別の部屋のドアを開け、ベッドで寢ている【彼】のもとへと、到著する。

布団の上から、爪を突き立てる。

ドスッ!

「あ? 手ごたえがねぇなぁ」

ザシュッ!

「いってぇ!」

振り返ると、そこには【金髪の年】が、2本の剣を持って立っていた。

「ほぉ、おれに気づくとはな。弟は雑魚ってもっぱらのウワサなのによぉ」

ライカンが挑発すると、ガイアスは顔を真っ赤にする。

「ボクは雑魚じゃない! 訂正しろ!」

「おー、こわいねぇい」

ライカンは余裕の表を崩さない。

ガイアスの攻撃を、ひらり、とかわす。

「くそ! この!」

すかっ。すかっ。

「技が雑だね、出來そこないの弟ちゃん?」

「黙れぇええええええ!」

ガッ!

「ぶべっ!」

ライカンに足を払われ、ガイアスは地面に転ぶ。

その背中に、爪を突き立てた。

「うぎゃああああ!」

「毒くらいで騒ぐなよ。致死毒じゃないんだからよぉ」

「なにが、目的だ……! ぼ、ボクが邪魔だから殺すのか!?」

「思いあがるなバーカ。用事があるのはてめえじゃねぇ、兄貴の方だよ」

「どういうことだ!?」

「お前の兄貴、ありゃ別格だ。この世の理から外れた正真正銘の化けだよ。敵対は死を意味する。なら降伏する? そんなもったいないことしねえよなぁ」

ライカンは地べたに這いつくばる人間を、見下ろして言う。

「せっかくここに、あの化けの制裝置が無防備に転がってるんだぁ。利用しない手はないだろぉ?」

「まさかおまえ、ボクを餌に、兄さんに言うことを聞かせようっていうのか?」

明察! ミジンコ程度の強さしかないのに、頭の回転は蟻んこ程度にはあるんだなぁ。えらいでちゅね~」

魔族にコケにされ、ガイアスは歯噛みする。

「くそ! この! け! けよぁ!」

「無駄だなぁ。こいつは1時間しか効き目が無いかわりに、絶対に解毒できない特別な呪いの毒だ。てめえ程度の実力じゃどうもできねえよ」

ライカンはガイアスを俵のように持ち上げて、ゲラゲラと笑う。

「しかし弱いな弟くぅん。魔族最弱のおれにすら勝てないとか! 弱いでちゅねぇ」

「くそ! あんだけ鍛えても、ボクはまだ、こんなに弱いなんて!」

「無駄なんだよ、しょせん才能のないてめえがいくら頑張ろうと技につけようと、出自のアドバンテージには絶対に勝てねえんだよぉ」

「う、うわぁああああああ!」

ガイアスは必死の抵抗を見せ、ライカンの耳に咬みつく。

「痛ぇ! てめえ調子乗んなよ!」

ガイアスを地面にたたきつける。

「むかついた。手足をもいじまうかぁ?」

「ひぃいいいい!」

「泣いて助けを呼んでみろよぉ、兄貴ぃってよぉ? まあ無駄だけどなぁ。死ねや――」

ドゴンッ!

……その瞬間、ガイアスの目の前で、ライカンは煙のように消えた。

「大丈夫だったか、ガイアス?」

弟をお姫様抱っこするのは、兄ユリウスだった。

「い、今何が起きたの……?」

「え、騒ぎを聞きつけここへきて、おまえの毒を解毒し、敵を毆っただけだぞ」

ライカンの形をしたが開いていた。

毆り飛ばされ、あそこを突き破って飛んで行ったのだろう。

兄が部屋にってきたことも、敵を毆った姿も、敵が吹っ飛んだところも。

何一つ、目で追うことはできなかった。

「ぐす……ちく、しょぉお!」

強くなったつもりだった。

けれど魔族には、自分は全く歯が立たなかった。

そんな相手(まぞく)すらも、兄の前では塵にも等しい。

「魔族にすら勝てないボクは、ゴミってことかよ! くそぉおお!」

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