《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》40.勇者、星を穿つ

俺の家に、魔族が襲撃してきた。

狙いは弟だった。

捕縛して俺に言うことを聞かせようって魂膽らしい。

「ぐすっ……ふぐっ……」

ガイアスは先程から、へたり込んで涙を流している。

よほど、魔族が怖かったのだろう。

「怖い思いさせてすまないな」

「ちがうよアホぉ~……」

そのときだった。

ドガァアアアアアアアアアアアアン!

屋敷を、巨大な何かが突如として襲った。

「う、うわぁあああああ! って、えぇえええ!? なにこれぇ!?」

ガイアスが腰を抜かしている。

「壁やガラスの破片が、く、空中に浮いてる。音も……しない。これ、どうなってるの……?」

「え、時間を止めただけだけど?」

【時間停止(タイム・ストップ)】

ほんの短い間だけ、時を止める魔法だ。

「もう……無茶苦茶だ……兄さんあんた、魔王の生まれ変わりなんじゃないの……?」

惜しい。

本當は勇者の生まれ変わりだ。

「さて、っと、襲ってきたのは隕石か」

10mほどの巨大な巖が、屋敷に衝突したようだ。

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「こんなでかいのが近づいているのに、まったく気配をじなかったのはどうして?」

「たぶんさっきの魔族が仕込んでいたんだろ。隠能力が付與してある」

彼の死後、隕石が落ちるように魔法がかかっていた。

「こんなの衝突したら、この國滅びちゃうよ……」

「え、滅びないぞ」

「は? いや、いくら時間停めてたとしても、もう衝突した事実は変わらないんだし、終わりだよ……」

俺は右手を前に出し、全集中を使って魔力を練り上げる。

「な、なんだよこの膨大な魔力量は!?」

「これから使う魔法、結構魔力食うからな。【時間遡行(タイム・リバース)】」

その瞬間、俺の周囲に無數の魔法陣が出現。

それは時計を模したデザインのものだ。

時計の針が逆に回りだす。

「こ、壊れたものが元に戻ってく!? い、隕石も!?」

衝突寸前だった隕石は、宙へ向かい戻っていく。

壁は元通り、そして隕石は、衝突する前の位置まで戻っていった。

「い、今の何なの……?」

「え、時間を魔法で10秒だけ戻しただけだぞ?」

弟はその場にへたり込む。

「さて、じゃあ後始末しますか」

俺はさっきの魔族が吹っ飛ばされて、開いたの前に立つ。

「なに、するのさ……?」

「隕石ぶっ壊す」

「は、はは……なにを、バカなこといってるの? そんなの、できるわけが……」

俺は剣を創生し、構える。

『勇者よ。これでは駄目だ。剣がもたぬ』

そういうと、俺のから従魔(サーヴァント)の魔王が出てくる。

は黒く輝くと、を変化させる。

それは1本の黒い剣となった。

『魔剣ヴェノムザード。魔王が自ら剣に変化して作った剣だ。これなら耐久は申し分ないだろ?』

「ああ、サンキュー」

裝飾のない、黒い刃の剣を、俺は構える。

膝を曲げ、重心を落とす。

左手を前に出し、刃に添える。

キィイイイイイイイイイイイン!

「すごい量の魔力が……剣先に一點集中してる……なんだあれ?」

次第に魔力が、黒く、輝いていく。

「魔力にがつくとこ、はじめてみた……」

「膨大な量の魔力を圧すると、黒く輝くようになるんだよ。……さて、いくか」

俺は前に踏み込む。

右手に持った魔剣を、超高速で突き出した。

カッ……!

落雷時のように、黒いが周囲に瞬く。

俺の剣先から一直線に、黒い線が放たれる。

ビゴォオオオオオオオオオオオオ!!

黒いは真っ直ぐ、落ちてくる隕石に衝突し、貫いた。

「だ、駄目だ……小さなを開けただけ。意味ないよ……!」

「え、そんなことないぞ。ほら見ろ」

「!? い、隕石が……を中心に【崩れてく】」

ボロボロと、濡れた紙のように巨大隕石は崩壊していった。

やがて、文字通り跡形もなくなった。

破壊による衝撃も余韻もない。

元から何もなかったかのように、穏やかな夜空が浮かんでいる。

「……い、いまの、は?」

「え、【崩壊剣(アルティマ・ソード)】だけど?」

魔力を超圧して打つ。

そのれたもの全てを崩壊させる、剣聖の持つ奧義の一つだ。

『魔王である我も、あの奧義には苦戦させられた。見事な技だぞ、さすが勇者だ』

全てを片付けた俺は、修復魔法で壊れた壁等を元通りにする。

「ん? どうした弟よ?」

ガイアスは魂が抜けたような表で、俺を見つめている。

「レベルが、違いすぎるよぉ……」

ポロポロと、弟が涙を流す。

「だ、大丈夫か? どこか痛いのか?」

「こんな人外のバケモノと、勝負するのが間違いなの……? ボクじゃ、一生勝てないのかよぉ……」

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