《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》43.勇者、親に比べられ凹む弟を勵ます

朝練開始から2日後。

早朝の庭にて。

弟は巖の上に、あぐらをかいて座っている。

「すぅー……はぁー……すぅー……」

「そうだ、魔力を大気から集める呼吸方法【全集中】。まずはこれで日常生活が送れるようになれ」

「……さらっと恐ろしく高いレベルを要求しないでよ」

「え、簡単だろ?」

「そりゃあんたはね! 天災級の化けだからね!」

聲を荒らげつつも、なんだかんだで、ガイアスは呼吸法をしていなかった。

と、そのときだ。

「やぁユリウス! こんな朝早くから鍛錬とは! いやぁ、心!」

「親父……」

俺たちの父、カーライル公爵が、ニコニコしながら近づいてくる。

「すでに規格外の力を持ちながらも、鍛錬を怠らない! さすがだ! ……そこの不良品と違ってな」

ギリッ、とガイアスが歯がみする。

「……父さん、ボクの修行の、邪魔しないでよ」

「はっ! 修行ぅ……? これはお笑い草だな。出來損ないが頑張ったところで、無意味だというのになぁ」

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フンッ! と親父が弟の努力を鼻で笑う。

「全く無駄な努力だ! この天才の兄に追いつけるなどと、戯言をほざいているのか? 無駄無駄、凡才はいくら頑張ったところで真の天才の前ではーー」

「お前もう黙っとけ」

俺は親父をにらみつける。

にらむ、というただそれだけの行為だが、俺の場合だとそこに魔力が乗り、衝撃波となる。

「ぬわぁああああああああああ!」

親父はけない聲を上げながら吹っ飛んでいく。

「ぐぇえ!」

屋敷の壁に激突し、そのまま気を失った。

「ガイアス、気にするな」

「…………」

この間も、弟は全集中の呼吸法をさなかった。

をぎゅっとかみしめ、をつつぅ……と流している。

馬鹿にされて、辛いのだろう。苦しいのだろう。

それでも、弟は修行に集中していた。

「たいしたヤツだよ、おまえは」

俺が言うと、ガイアスの目から涙がこぼれた。

「ユ、ユリウスよぉ~……」

ふらふらと、親父がおぼつかない足取りで、俺たちの元へやってくる。

「わ、わしは何かお前を怒らせることをしてしまったか? それならスマナイ! 許してくれぇ!」

親父は俺の前で跪いて、腰にしがみつく。

「おまえは我がカーライル家の期待の星だ! 我が家の柱と言っても過言ではない! こんな才能の無いクズの弟とちがってな!」

必死になって、親父が俺の機嫌を取ろうとしている。

淺はかだ。他者を貶すことで、俺を持ち上げようとするなんてな。

「だから、な? 機嫌を直して、わしと仲直りをしよう、な?」

「いやだよ。俺、あんたが嫌いだ」

バシッ! と俺は親父の手を振り払う。

「弟の修行の邪魔だ。とっとと消えてくれよ」

「こんなカスの無意味な修行の方が、父親であるわしよりも大事だというのか!?」

「え、當然だろ? 比べるまでもないよ」

ギリッ……と親父が歯がみする。

「出來損ないめ。おまえなんて消えればいいんだ! ユリウスはわしのものだぁあ!」

親父が杖を取り出し、ガイアスめがけて、魔法を放とうとする。

「炎よ! 我が手に集え!」

無駄な呪文詠唱を、親父が開始する。

俺は止めにらなかった。

「弟よ?教えたヤツ、やってみな」

「…………」

すぅ、っと弟は右手を親父に向ける。

その間に、親父は馬鹿みたいなポーズで、無駄に長い詠唱を終える。

「死ねえ出來損ない! 【火球】!」

ぽひっ……とけない音とともに、線香花火並の小さな炎が出る。

「…………」

ガイアスは、不安な表を俺に向ける。

「大丈夫だ。おまえならできる。俺を信じろ」

こくり、と弟はうなずく。

「我が必殺の業火に焼かれて、死ぬが良い不出來な弟よ!」

「……【火球】!」

カッ……!

ゴォオオオオオオオオオオオオ!

「なっ!? 無詠唱魔法!? それにこの威力……ぐわぁああああああああ!」

弟の放った人間大の炎の球が、親父にぶち當たる。

「あちぃ! 熱いよぉおおおおおおおお!」

親父はけない聲を上げて、地面にのたうち回る。

俺は適當に魔法で水をぶっかけて、治癒を施した。

弟を人殺しにするわけにはいかないからな。

「よし、無詠唱はバッチリだな。魔力の威力も全集中を使ってしっかり強化されてた。満點だ」

「……兄さん。その、あ」

「え、どうした?」

「なんでもないよ!」

ガイアスは巖から降り、屋敷へ向かってずんずんと歩く。

「おーい、待てよ。なんだよ、【あ】って」

「うるさい! ついてくるな!」

俺は弟の後を追いかける。

「ま、まってくれぇ~……わしを、置いてかないでくれぇ~……」

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