《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》53.勇者、天使すら凌駕する

弟と溫泉にった、翌日。

俺は學園長室を訪れていた。

「別についてこなくていいんだぞ、弟よ?」

隣のソファに座るのは、弟のガイアスだ。

「そうはいかないよ。兄さん……なんか隠してるんでしょ。昨日様子おかしかったし」

とそのときだ。

「おまたせしました、ユリウス君」

學園長のアリシアが、部屋にってきた。

小柄な彼が、俺たちの前に座る。

「それで、火急の用事とはなんでしょう?」

「単刀直に言う。生徒達の中に魔族がいた。誰かがこの學園に手引きしてる疑いがある」

「なっ!? ほ、ほんとうかい、兄さん」

驚くガイアスとは対照的に、學園長は沈んだ表をしていた。

「風紀委員のネルソン先輩に聞いた。最近、學園を無斷で休む生徒が増えてきてるらしい。家にも帰ってないそうだ」

「そ、それって……?」

「魔族が活発にき出し、人間(えさ)を食い散らかしてる……と俺は踏んでる」

弟が息をのむ。

一方で、學園長は目を閉じて、重々しくため息をついた。

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「……ユリウス君。悪いことは言いません。これ以上踏み込んではいけない」

「ということは、何か心當たりあるんだな?」

真剣な表で、アリシアは続ける。

「……ふたりは、數年前から、【理事長推薦枠】ができたことを知ってますか?」

「理事長、推薦枠?」

「確か、理事長自ら能力のある學生を全國から集めて、【S級特待生】として學園に特別に學させる」

ガイアスの言葉に、學園長がうなずく。

「……通常の特待生なら、學園學の決まった生徒の報は、學園長のもとに來きます。けど……」

「理事長が選んだS級の報は、手元に來ない?」

「……その通りです。さすがユリウス君ですね」

特待生が魔族と考えるなら、つじつまは合う。

「現にアルファー君は3年のS級特待生です。彼が魔族だったのならば、おそらくは……」

と、そのときだった。

「下がってろ」

俺は學園長と弟の首っこを摑み、後ろに投げる。

ドガァアアアアアアアアアアアアン!

「なっ、なんだよ!? 何が起きたんだ!?」

「巨大なクレーター……。なにかとてつもない高熱の線が、上空から降ってきた……?」

俺は見上げる。

そこにいたのは、【翼を生やした白いモンスター】だ。

巨大な人間のようである。

だが顔に目などのパーツはない。

白い石像のようなイメージだ。

「ま、まさか……【天使】!?」

學園長は目を見開く。

「そんな馬鹿な!? 神の使いである彼らは、2000年前の勇者神と魔王との戦い以降、姿を地上に現したことはないはず!」

「その天使がどうしてボクらを攻撃したのさ!?」

わからないことは多い。

だがこれだけは、わかる。

「どうやら、俺たち3人を抹消したいらしいな」

天使は両手を前に出す。

『下級天使だな。【天の矛】という極大魔法を超えるの魔法を使ってくるぞ、勇者よ』

ビゴォオオオオオオオオオオオオ!

「お、終わりだぁ! 天使に人間がかなうはず無いんだァ……!」

超高溫のレーザーが出される。

俺は剣を創生し、レーザーを攻撃反(パリィ)する。

パリィイイイイイイイイイイイン!

「「は……?」」

弾かれたレーザーは、そのまま天使の右腕を消し飛ばす。

「兄さん!? あんた今なにしたの!?」

「え、天の矛の軌道を見切って、剣で弾き返しただけだけど?」

「はぁああ!? あ、あんな超高速なレーザーを見切ったって言うの!?」

「……それに、あの高溫のを間近で、生で無事なはずがないですよ」

「え、あの程度の熱量じゃ、やけどすら負わないだろ? 熱知で耐熱魔法障壁って自展開されるようになってるよな?」

「そんなの兄さんだけだよ!」

片腕を失った下級天使は、左手を頭上に掲げる。

ブィイイイイイイイイイイイイイン!

『【天の剣】。超高熱のレーザーソードだな。れたものを瞬時に融解し、萬を切り裂くという』

「ゆ、ユリウス君! あの剣は耐熱魔法障壁でも防げません! 逃げてください!」

天使はレーザーソードで、俺に斬りかかってくる。

「よっと」

パシッ。

「摑んだぁあああああああ!?」

「え、魔力の鎧を手に一點集中すれば、こんなの普通に熱くないよね?」

天の剣を素手で摑むと、俺はそのまま引き寄せる。

「魔王、剣を」

『心得た』

魔剣ヴェノムザードが俺の手に握られる。

魔力を吸い込んだそれは黒く輝きだす。

俺に引っ張られ、頭から突っ込んでくる天使に向かって、俺は魔剣を振るう。

ズバンッ……!

『虛空剣……空間すら切り裂く最強の剣スキル。天使すらも切斷するのは道理だな。さすが勇者だ』

「て、天使が……神が作りし兵が、一撃ですって……?」

ぺたん、とへたり込む學園長。

「ぐす……うぐ……」

一方で弟は、なぜか泣いていた。

「え、なんで泣いてるんだ?」

「うるさい! 泣いてないよ! くそっ、修行だっ。もっともっと頑張らないと、兄さんに全然追いつけやしないじゃないか!」

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