《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》54.勇者、弟の悩みを聞く
天使を撃退した、その日の夜。
俺は弟の部屋の前にいた。
『勇者よ、何をしてるのだ、こんな夜中に?』
俺の中にいる魔王が問うてくる。
「ガイアスが學校帰ってきてから、元気なくてさ。なんかあったのかなって」
ドアをノックするが、返事がなかった。
「あれ? いない」
そのときだった。
『【ニーサン】! 【ニーサン】!』
屋敷の外、庭のあたりから、弟の聲が聞こえた。
なんだか焦っているようなじがした。
「まさか……また魔族?」
転移魔法を使って、聲のする方へと転移する。
「ちょっ! やめてってば【ニーサン】」
「ばうっ! ばうわうっ!」
「犬?」
ガイアスが犬に押し倒されている。
ベロベロ、と口の周りを舐められていた。
「やめてよニーサン、くすぐったいじゃないか」
「ばうわうっ!」
「ニーサン! お座り! ご飯あげないよ!」
「きゅーん……」
犬がガイアスから退く。
「よしよし、良い子良い子。安心して、ちゃんとご飯あげるから」
「ばうっ!」
またも、犬がガイアスに飛び乗って、ベロベロとなめる。
「あははっ! もう、ニーサンは甘えん坊だ………兄さん?」
犬とじゃれていた弟と、ふと目が合う。
「~~~~~~!」
ガイアスは顔を真っ赤にする。
「こ、これは違うから! 飼い犬の散歩してただけからな!」
「え、見りゃわかるよ」
ややあって。
俺たちはカーライル家の庭にいた。
ベンチに並んで座る。
足下には大型犬が、お皿に盛られた餌を食べている。
「しかしどうして名前が【ニーサン】なんだ?」
「……え?」
「どうした?」
「……いや、なんでも」
ガイアスは犬の頭をなでながら言う。
「この犬、小さな頃に【ユリウス】が拾ったんだ。犬は兄さんにもの凄くなついてて、四六時中一緒だったんだよ」
その後ガイアスが、俺を呼ぶたび、一緒に居た犬が反応するようになったそうだ。
「こいつ、自分の名前を【ニーサン】って勘違いするようになってさ」
「ふーん。おまえ、そんなに何度も俺を呼んでたってことか?
「はぁ!? なんでそうなるんだよ! 違うよばか兄さんっ!」
「きゅーん……」
「あ、違うよ。おまえじゃないほうを罵倒しただけだからね」
わしゃわしゃ、とガイアスがニーサンの頭をなでる。
犬は並みがよく、モフモフしていた。
うーむ、羨ましい。
「なあ、俺にもらせてくれないか?」
「いいよ、ほら、いきな」
ニーサンは俺を見やるが、プイッとそっぽを向いて、弟の顔をペロペロしだす。
「ははっ、ニーサンはボクの方が好きなんだねっ」
「なんでうれしそうなんだ?」
「ずっとあんたに負けっぱなしだっただろ? だからこんなちっぽけなことでも、勝ててうれしいんだ」
よしよし、とガイアスが飼い犬の頭をなでる。
「……でも本當は、これで勝ちたくなかったよ」
「え、なんだって?」
「ううん、なんでもないよ」
「そっか。なぁガイアス、ちょっと散歩しないか?」
「え、うん。いいけど」
俺たちは並んで、夜の庭を歩く。
弟は飼い犬ニーサンのリードを手に持っている。
「なぁ、おまえなんか悩みあるのか? 元気ないみたいだし」
ガイアスは立ち止まって、空に手をばす。
初夏にり、星が綺麗に瞬いていた。
「ちょっと、遠いなって思ってさ」
「遠い? なんのことだ?」
「兄さんとの、実力差のことだよ」
弟はしゃがみ込んで、飼い犬の頭をなでる。
「最近ボクさ、魔族と互角に戦えるようになったじゃん。まだまだ遠いけど、兄さんの背中がし見えていた気がして、うれしかったんだ」
けど……と弟。
「天使なんていう、尋常ならざる者の存在がいて、それすら兄さんは凌駕して見せた。だから、ちょっとめげそうになってさ」
ガイアスは飼い犬を抱きしめる。
ペロペロ、と目の周りを舐められていた。
「心配すんな。あんなの、おまえもすぐ倒せるようになるよ」
ガイアスは俺を見て、微笑んだ。
「……うん、【今の兄さん】なら、そう言ってくれるって信じてたよ」
弟の表が明るくなる。
だがその目元は、し愁いを帯びていた。
「ありがとう、兄さん」
「ばうっ!」
「おいおい、ガイアスは俺にお禮を言ってくれたんだぜ?」
「ばうわうっ!」
ニーサンが俺に、突進をかけてくる。
俺は飼い犬ニーサンに押し倒され、顔をペロペロされた。
「ちょっ、ガイアス助けてくれ」
「ははっ! やーだよ。困ってる兄さんなんて滅多に見れないんだから、助けてあげない」
ニーサンとじゃれている姿を、弟はしゃがみ込んで、楽しそうに見ているのだった。
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