《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》56.わがまま王の破滅~その3~

転生勇者ユリウスが、理事長室へ向かっている、一方その頃。

ヒストリアは、久方ぶりに、學園を訪れていた。

「……絶対功させるわ、絶対に」

走った目で何かをつぶやく彼は、遠目には幽鬼のように見える。

「……ヒストリア王だ、なんかひさしぶりじゃね?」

「……學校やめたってウワサだったんだけどな」

學生達の注目を浴びていても、ヒストリアは気にならない。

今の彼には、周りを見る余裕はないからだ。

「……これが、ラストチャンス。【ガイアス】をして手にれる。これが駄目なら、アタシは終わり……」

ヒストリアは、先日の父の言葉を思い出していた。

『良いかヒストリア。弟のガイアスを、なんとしても手にれるのだ』

そこは地下牢。

國王の拳からは、がポタポタと垂れている。

地べたに這いつくばるのは、顔中をボコボコにされた、ヒストリアだ。

『ユリウスの心を手にれることには失敗した。ならば、その弟を我がにしろ。さすればユリウスと親族関係でいられる』

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『で、でも……お父様。ガイアスとの関係も、破綻しております』

バキッ!

『きゃあ!』

『だれの! せいで! ユリウスを失ったと思っているのだこの馬鹿娘が!』

國王は娘を何度も何度も蹴り飛ばす。

『今すぐ弟を手にれろ。できなければ……わかっているな?』

回想終了。

ヒストリアは狂気の笑みを浮かべる。

「……大丈夫、アタシにはこの【魅了の魔眼】がある」

ヒストリアの左目のが、違った。

薄紫のそれは、瞳孔に魔法陣が仕込まれている。

見た異に、無理矢理心を抱かせる魔眼。

「王家が保管していた寶のひとつよぉ。ありがとうお父様ぁ」

ちなみに父親に、これを使えばユリウスが手にるのでは? と尋ねた。

だが魅了の魔眼を使ってしまうと、かけられた側は思考能力を失った、ただのり人形になってしまうらしい。

ユリウスという最高の人材を、木偶人形にしてしまうのは惜しい……とのこと。

さて。

ヒストリアがやってきたのは、弟とユリウスのいる教室だ。

「ガイアスぅ! どこぉ~!」

しーん……。

ヒストリアの登場に、同級生達は戸っている様子だ。

「ひ、ヒストリア王……?」

クラスメイトのひとりが、こちらを青ざめた表で見やる。

「ねえ、ガイアスはどこ? さっさと答えなさい! ねえ!」

「なんだよぉ! 怖いよあんたぁ!」

知りたいことをさっさとしゃべらない、愚鈍なこの生徒に、ヒストリアは魔眼を使う。

「こっちを見なさい!」

ヒストリアは怯えていた生徒のぐらを摑み、顔を近づける。

左目が、カッ……! と輝く。

紫の輝きを、至近距離で見た彼は……とろんとした表になる。

「ガイアスの居場所を言いなさい?」

「……地下ダンジョンに用事だそうです、ヒストリア様ぁ」

手を離すと、生徒はその場にぐにゃりとへたり込む。

焦點の合わない目で、えへえへ……と夢見心地の表になっていた。

「魅了の効き目は上々ね! よしっ!」

ヒストリアは生徒を放置して、地下へ向かう。

ちなみに彼が命令しない限り、一生彼はその場からこうとしない。

國寶級の魅了の魔眼は、それほどまでに強力なのだ。

ややあって。

地下ダンジョンのり口まで到著。

「ガイアスぅ!」

彼はなぜか、り口の前で、そわそわしていた。

まるで誰かの帰りを、待ちわびているかのようであった。

「……なに、ヒストリア? ボク忙しいんだけど?」

ガイアスの冷たい対応に、はらわたが煮えくり返る。

出來損ないの弟の分際で、この王にそんな態度を取って良いとでも?

「用事は一瞬よ。ちょっとツラ貸しなさい」

ヒストリアはぐいっ、とガイアスのぐらを摑む。

顔を近づけ、魔眼を発させる。

カッ……!

「あははっ! 勝った! これでアタシは國外追放を逃れたのよぉ!」

ガイアスを手放すと、ヒストリアは勝ち誇った邪悪な笑みを浮かべる。

「さぁ! ガイアス! アタシに忠誠を誓うと言いなさい!」

「は? 嫌だよ」

「んなっ!? なんで!?」

自分の魔眼は、確かに発した。

だが彼は言うことを聞く様子はない。

「どうして魅了の魔眼が発しないの!?」

「……ボクのは、常に魔力の鎧に覆われている。理攻撃だけでなく、スキルによる特殊な神攻撃も防ぐんだよ」

「魔力の鎧ですって!? そんなこと……どうしてあんたができるのよ!?」

「修行したからだよ。……ところで、魔眼を使って、何するつもりだったわけ?」

ゴミを見るような目で、ガイアスが見下ろしてくる。

「いや……これは……その……」

「もしかして、兄さんのときみたいに、ボクを無理矢理惚れさせて、自分のものにしようとしたわけ?」

「ち、違うわ! これは違うの! 話を聞いて」

「聞くかそんなもん!」

ガイアスが怒気を発する。

それは彼のから発する魔力の波となって、ヒストリアを吹っ飛ばした。

「うひぃいいいいい!」

は無様に転がって倒れる。

「……なんてクソなんだ。兄さんだけでなくボクまでも。見損なったぞ!」

「ち、ちがうのぉ~……これは、ちがうのよぉ~……信じてよぉ~……」

「うるさい! もうボクにも兄さんにも近寄るな! 二度とそのツラ見せるんじゃない!」

「そ、そんなぁ……」

そのときだ。

ギギ……。

グギギ……。

ダンジョンの奧底から、何かが聞こえたのだった。

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