《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》58.勇者、弟と共闘する

地下ダンジョンにある、理事長室にて。

俺の弟ガイアスが、天井を突き破り、俺たちの元へやってきた。

「そ、そんな馬鹿な!?」

実は魔族だった學園長が、驚愕の表を浮かべる。

「地上にはSランクモンスター【魔甲蟲】を、2000匹放っていたんですよ!? なぜ無事なんですか!?」

「え、わからないのか、おまえ?」

俺は笑って、弟の頭をなでる。

「弟が倒してきたに決まってるだろ?」

「あ、ありえない! Sランクですよ!? こんな初級の魔法すらまともに使えぬ出涸らしのクズが! わたしの生み出した使い魔を倒せるわけがない!」

アリシアは杖を取り出し、俺たちに向ける。

魔法陣が展開し、黒い巨大なカブトムシ【魔甲蟲】を生み出す。

その數は10。

蟲はガイアスめがけて、強烈な突進をかける。

ズバンッ!

ガイアスの雙剣は、10匹の蟲たちを、たやすく両斷した。

「そんなばかなぁ! 魔甲蟲の外皮は、Sランクのなかでも特に堅いのですよ!? それをこんな雑魚の人間(サル)が切れるわけがないんだ!」

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弟のからは、銀のオーラが立ち上がる。

「それは!? 魔力と闘気を融合させ、莫大なエネルギーを生み出す超高難度のテクニック! なぜたかが人間が使えるのだ!」

「學園長。あなたは人間(ボク)を舐めすぎだ。なんといっても」

ガイアスはを張って言う。

「ボクはユリウス=フォン=カーライルの弟なんだ。これくらいの敵に苦戦していたら、兄さんに申し訳が立たないよ」

俺は弟の頭をぽんとでる。

「學園長、あんたがなんか企んでいることはわかっていた。だから俺はワザと弟を地上に殘した。今のガイアスなら、たいていのことはなんとかできるって、信じてたからな」

愕然とする學園長に、俺は言う。

「ということで、あんたの自慢の使い魔は、俺の自慢の弟によって全滅させられたわけだ」

「ば、ばかっ。人前で変なこと言うなよっ」

顔を赤らめるガイアスの頭を、俺はよしよしとなでる。

ガイアスはおとなしくなる。

「そんな……計畫は見抜かれ、しかもこんな、ユリウスでもないただの雑魚につぶされるなんて……」

「學園の長の癖に、生徒たちの可能を信じないんだなおまえ。人間は強くなれる。どこまでも、それこそ無限にな」

俺の言葉に、學園長がギリっと歯噛みする。

「や、やはり素晴らしいですよ勇者神。あんな雑魚をここまでの逸材に育て上げるとは!」

學園長がにやりと笑う。

「勇者神……」

ガイアスが小さくつぶやく。

「そうです! ガイアス、あなたが兄と思い込んでいるそこの化けは! 赤の他人が憑依した存在なのですよぉ!」

アリシアは狂ったように笑う。

どうやら嫌がらせをしたいみたいだ。

「そんなの、とっくに気づいてるよ」

弟は微塵も揺していなかった。

「え、そうなの?」

「うん。とっくに。兄さん隠そうとしなさすぎだよ」

ガイアスは苦笑していた。

「許すのか!? そこの男はおまえをずっとだましていたのだぞ!?」

「だますも何も、この人自分から言ってたから」

やれやれ、とガイアスが呆れたように言う。

「今更正を告げられたところで、ボクは微塵も揺るがないよ」

ガイアスは剣を振り上げる。

スパパパンッ!

弟の周囲に、數本の手が細切れになって落ちる。

揺させて隙をつこうとしても、無駄だから」

「ってことだ。悪いな、うちの弟はお前が思う以上に強いんだよ」

ガイアスは嬉しそうに笑う。

一方でアリシアは悔しそうに歯噛みする。

「くそっ! 計算外だ! まさかここまで弟を強くするとは、勇者神おそるべし!」

「それでどうする? おとなしく降參するか?」

「……仕方ない。こうなったら奧の手を――」

アリシアが懐に手を忍ばせる。

スパンッ!

ガイアスが一瞬で踏み込み、アリシアの腕を切り飛ばす。

空中には右腕。

そして手には魔力のめた結晶が握られていた。

「兄さん!」

「おうよ」

俺は魔剣ヴェノムザードを顕現させ、剣聖の技能【虛空剣】を発

を切り割く剣で、俺は空間ごと削り取る。

ズバンッ!

結晶は、空間まるごと消し飛ばされた。

「ば、バカな……なぜ壊さなかった……あれには天使が封印された結晶、壊せば天使が出現し、殺戮の限りを盡くしたのに……! まさか見切っていたというのか!?」

「え、割ったら掃除が面倒かなって思っただけだけど?」

アリシアは呆然とした表で俺を見やると、力なくうなだれたのだった。

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