《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》71.勇者、姫騎士を連れ戻しにきた剣鬼を蹴散らす

俺が元聖騎士ヘンリエッタを助けてから、1週間ほどが経過した。

學園の教練室(トレーニングルーム)にて。

今日は期末テスト前の、最後の実技の授業だった。

「では君たち、打ち込んできなさい」

実技擔當の先生が、同級生達に剣先を向ける。

「そ、そんな……【ヘンリエッタ様】に打ち込みなんて……」

そう、元聖騎士が実技を教えているのである。

「今は君たちの実技兼【クラス擔任】だ。遠慮せずかかってきなさい」

クラスメイト達はうなずくと、木剣でいっせいに斬りかかる。

バキィン……!

「「「うわあああああ!」」」

ヘンリエッタが、吹っ飛ばされた同級生を見下ろしていう。

「まだまだなっていないな」

気取ったポーズで、彼が剣を鞘に収める。

「す、すげえ! やっぱり聖騎士さまは違うやっ!」

「強くてかっこよくて、素敵……!」

クラスメイト達の視線をけて、ヘンリエッタは「ふっ……」と長い金髪を手で払う。

「これから君たちを全力で強者に導いてあげよう。しっかりついてくるように」

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「「「はいっ!」」」

授業終了。

同級生達は、元聖騎士のもとにわっ……と集まる。

「ヘンリエッタ先生! このあと一緒にお茶しませんか!」

「ずりぃぞ! 先生はおれたちと話すんだよ! 聖騎士時代の武勇伝聞かせてください!」

わぁわぁ……! わぁわぁ……!

その様子を、俺は離れたところでボケッと見ていた。

特待生は授業免除なので、実技の授業では、基本的に見學している。

「なあ弟よ。ヘンリエッタってなんであんな人気あんの?」

「聖騎士って兄さんが來るまで魔族を倒せる唯一の存在だったんだ。強くて、人気が高いんだ」

「ふーん、まあそれに加えて人だもんな」

ぎゅぅううう……!

「え、なんで脇腹つねるんだ?」

「ふんっ! あんなのにデレデレしちゃってさ! 兄さんの馬鹿!」

眠りこけてる義弟を引きずり、ガイアスは離れていった。

一方ヘンリエッタは、生徒達を見回していう。

「せっかくのおい申し訳ないが、斷らせて貰おう」

「「「えー!? な、なんで!?」」」

「私は君たち生徒と過剰になれ合うつもりはない」

「そ、それってぼくらが嫌いってことですかぁ?」

「そうではない。生徒の長のためには、時に厳しく接する必要がある。なれ合いは目を曇らせ、君達の長の機會を奪いかねない」

ヘンリエッタが真剣な表で、同級生たちを見渡す。

「そういうわけで、生徒とは一線は引かせてくれ。君たちのためなんだ」

「「「そっかぁ~……殘念」」」

生徒達が、じゃあ仕方ないかと諦める。

「では諸君。解散」

は背筋をピン、っとばし、彼らの後を去る。

「ヘンリエッタ先生かっこいいなぁ!」

「ね! 生徒にすり寄ってきて、妙にベタベタしてくる教師なんかより斷然いい!」

「分別をわきまえてる、大人ってじがして最高だよね!」

ぴくぴくっ、とヘンリエッタは耳をかし、口元を緩ませているのがちょっと見えた。

「俺も教室戻るか」

そのときだった。

「カーライル。あなたは居殘りなさい」

ヘンリエッタがい表のまま、俺の前までやってきた。

「ユリウスが呼び出された? どうしたんだろう?」

「きっと実技を毎回サボってるから、お叱りになられるのでは?」

「確かに先生サボりとかゆるさないっぽいよね。怒ったら怖そう」

同級生達がなぜか同のまなざしを向けながら、教練室を出て行った。

さて。

俺とヘンリエッタだけが、その場に取り殘される。

い表を、ふにゃ……♡ と一転させる。

「ダーリ~~~~~~~ン♡」

ヘンリエッタは甘ったるい聲をあげながら、俺に正面から抱きついてくる。

「どうだったダーリン? 私ちゃあんとかっこよく授業できてた?」

「え、まあちゃんとやってたんじゃない?」

「やったぁあああああ♡ ダーリンに褒められたぁああああ♡ 幸(しゃーわ)せ~~~~~~~~♡」

緩みきった表で、ヘンリエッタがベタベタと俺にひっつく。

「生徒とは一線引くんじゃなかったのかおまえ?」

「ダーリンは生徒じゃないでしょぉ♡ 私のかっこいい旦那様……きゃっ♡ 言っちゃった♡」

さて、どうしてこうなっているのか。

話は1週間前。

ヘンリエッタは領地で魔族に襲われていた。

返りを浴びていたので、「うちに(お風呂にりに)こないか?」と言った。

そしたらなぜか、彼は俺の家に居著いてしまったのだ。

聞けば職場も帰る場所も失って途方に暮れていたところらしい。

不憫に思ったので、俺は屋敷に居候させることにした。

ちなみに仕事先はミカエル経由で、理事長に、彼をやとってしいと俺が提案した。

すると驚くほどあっさり申請が通り、現在は學園の教員として働いている次第。

「そのダーリンってヤツ、なんなの?」

「いちいち説明しなくてもわかるでしょぉ~♡ えへへへ~♡ 好き好きダーリン超してるぅ~♡」

【ダーリン】なんて呼稱は、2000年前になかった。

知りなガイアスに聞いたんだが『アホ兄さん死ね!』と怒られた。

最近あいつ、以前にも増して不機嫌なんだよな。

「さすがに生徒と教師の斷の関係を學園にばらすわけにはいかないの。だからみんなの前ではツンツンしちゃうけど、嫌いにならないで」

「え、まあ別に嫌いじゃないけど」

「えへへへ~~~♡ もうっ、ダーリン優しい好き好き好き好き~~~~~~~~♡」

と、ひとしきりなで回された、そのときだ。

「ヘンリエッタ様! ここにいましたか! 探しましたぞ!」

教練室のり口に、初老の男が立っていたのだ。

「じょ、【ジョゼ】……な、なんでここに……?」

どうやらヘンリエッタの知り合いのようだ。

初老の男は、ずんずんとこちらにやってくる。

「聖騎士をやめたあなた様を連れ戻すよう、お父上から命じられています。國に帰るようにと」

「ぜっっっっったい嫌!」

は俺の腕を、むぎゅーっと強く摑む。

「私はダーリンと結婚するんだもん!」

「あなた様には許嫁がおります。ご心配なされておりました」

「いやっ! 勝手に父上が決めた相手じゃなくて、私は白馬の王子さまと結婚するんだもん!」

「三十路にもなって……そのような稚な夢を……」

「29は三十路じゃないもん!」

なにやらめている様子だ。

俺にはあまり関係ないなぁと高をくくっていた。

「とにかく私は帰らない!」

「……なるほど、あなた様をわすのは、そこの王國貴族ですか」

初老の男ジョゼは、俺にショボい闘気(オーラ)を向けてくる。

「ほぅ……我が闘気をけ顔一つ変えませぬか。見事です、賛辭を送りましょう」

「え、そんなショボい闘気で褒められてもな」

ビキッ! とジョゼの額に青筋が浮かぶ。

「……帝のもとに仕えて40年。【剣鬼】と恐れられた我を……愚弄するとは」

「え、40年? ほんとに?」

「殺す!!!!!!!!」

ジョゼはあくびが出るほど遅い早さで、俺に向かって走ってくる。

闘気の練りも未だし、剣筋も素人同然だ。

初老の男は、俺に剣を振る。

ドサッ……!

「な、なにが……おきたんだ……?」

呆然と仰向けに倒れるジョゼ。

「え、剣を小指でけ止めて、手首を捻って剣を抜き取り、で関節技を決めただけだぞ?」

「は、早すぎて何一つ見えなかった……」

俺は彼から抜き取った剣を返す。

「剣を抜くのは勝手だけど、子供に刃を向けるのはよくないぜ?」

「くっ……!」

ジョゼは剣を仕舞って、立ち去る。

「今日は引き下がります! しかし諦めたわけではありませんからね!」

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