《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》72.勇者、弟たちとテスト勉強する
剣鬼を退けた、その日の夜。
カーライル家の屋敷。
弟ガイアスの部屋にて。
「ほら、テスト勉強するよ、ミカエル」
テーブルの上には、參考書や教科書が広げられている。
「えー! やだやだやだー!」
義弟は子供のように手足をじたばたさせる。
「なんで勉強しなきゃいけないです? あにうえと修行のほーがいいです!」
「駄目。明日から期末テスト。おまえ、一ミリも勉強してないだろ。授業中も全部寢てるし」
「いやです! べんきょーいやです!」
「うるさい。おまえはいちおうカーライルの人間になったんだ。無様な點數なんて取ったら許さないからな」
ぎろっ! とガイアスが義弟をにらみつける。
「あにうえー、ガイアスがいじめるです」
ミカエルは俺のに抱き著いてくる。
「まあまあガイアス、そうカリカリするな」
「兄さんは黙ってよ。ほら、ミカエル魔學からやるぞ。教科書はひらいて」
「やーだー! やーだー!」
「まあまあミカエル。俺も勉強教えるから」
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「じゃあやるです!」
ミカエルは俺の膝の上に乗っかる。
長い髪のが眼前にあって、いい匂いがした。
「ちょっと! なにベタベタしてるんだよ! 離れろばかっ!」
「ガイアスはうるさいです。自分の勉強でもしてればいいんです。あにうえ、教えてー」
ぎりぎり、とガイアスが歯噛みする。
「どうした弟よ?」
「別に!」
「きっとガイアスうらやましいと思ってるです」
「余計な事言うな!」
「「余計な事?」」
「~~~~~~! 違う! 思ってない! ばかにいさん!」
何はともあれ、俺は義弟に勉強を教えることにした。
俺たち3人は、ガイアスの部屋でテスト勉強をする。
「魔には魔力結晶を核にして魔素がくっつくことで形されるんだ」
「はえー、あにうえ知りです! なんでそんな詳しいです?」
「賢者の師匠に々教わったからな。それに魔とは戦いまくったから、生態も自然と詳しくなるわけよ」
「すごい! あにうえすごいですー!」
ミカエルがキラキラした目を向ける。
「……兄さん、勉強までできるのかよ。はぁ」
「ガイアス落ち込むのよくないです。あにうえちょーすごいです。仕方ないです」
ぽんぽん、とミカエルはガイアスの肩をたたく。
「あにうえに勉強おしえてもらえばいいです?」
「いい。ボクはひとりで勉強する」
ふんっ! と弟はそっぽ向いて、參考書に目を通す。
「なんでそんな勉強するです? 赤點取らなきゃいいです?」
「そんな低い次元の話はしてないよ。ボクは1位を取るんだ。兄さんを超えてね」
ガイアスが俺を見て、真剣な表で言う。
「ぷぷっ。ガイアスはあほです。かなうわけないです。あにうえに挑むなんて馬鹿です。勝負にすらならないです。無駄な努力です」
「こら」
ぽかっ。
「痛い! あ、あにうえ……? なんでぶつです?」
俺はミカエルの頭をなでながらいう。
「相手の努力を馬鹿にするな。失禮だろ」
「兄さん……」
ミカエルはしょぼん、と肩を落とす。
「ガイアス、ごめんです」
ぺこっ、と義弟が頭を下げる。
「こいつ許してやってくれ。まだ子供だからさ」
「ごめんね?」
「……もういいよ。ほら、勉強しよう。赤點取ったら兄さんに言って晩飯なしにしてもらうから」
「そんな!」
この世の終わりみたいな表を、ミカエルが浮かべる。
「そうだな、まじめにやらないともうハンバーグ作ってやらん」
「あにうえ~。ひどい~」
俺は義弟の頭をでて言う。
「じゃ勉強頑張ろうぜ」
「わかったです!」
そして、數時間俺たちは一緒に勉強した。
深夜。
「ぐぅ~……」
ミカエルは機に突っ伏して、安らかな寢息を立てている。
「これでお開きかな」
俺は參考書を閉じて、ミカエルをおんぶする。
「俺はこれで自分の部屋帰るけど、おまえはどうする?」
「ボクはもうし勉強するよ。あんたに勝ちたいからね」
ガイアスはノートに魔法円や式を書き込んでいる。
「あ、その魔法円まちがってるぞ。この部分」
「……ほんとだ、全く気付かなかった。……ありがとう」
ぐっ、と弟は歯噛みする。
「なぁ、弟よ。明日のテストだけど、俺」
「兄さん」
ガイアスは真剣な表で、首を振る。
「特待生はテスト免除だから、けないでおこうか? っとでもいうんでしょ。そうすればボクが1位取れるって」
「あー……まぁ」
はぁ、と深々とガイアスがため息をつく。
「怒らないのか? 前みたいに?」
前に家督を譲るぞといったとき、ガイアスは烈火のごとく怒った。
だが今は、怒りと言うよりは、呆れているようなじがする。
「怒らないよ。兄さんは、ボクのためをおもって、一位を取らしてやろうって善意で言ってるんでしょ」
「おう。よくわかったな」
「わかるよ、だって……兄さん、優しい人だって、知ってるから」
ガイアスは淡く微笑む。
「明日は手を抜かないでよね。全力で挑んで勝つから意味があるんだ」
「おうよ」
俺は弟にすっ、と手をばす。
ガイアスの頭を、手でぽんぽんとなでる。
「楽しみにしてるぜ、おまえとの勝負」
「ああ、負けないからね、兄さん」
「うんうん。あ、そうだ。これ使えよ」
「なにこれ?」
「【魔法學大辭典】この世の魔法陣が全部かかれてる」
ぱらぱら、とガイアスが參考書をめくる。
「全部に朱書きされてる……これは?」
「參考書に乗っている魔法陣、書き換えた。載っているやつ全部未で未完な部分があったからさ。効率が良くなるように手を加えたんだよ。參考にな」
辭典ほどあるその參考書を見て、ガイアスが絶句する。
「い、いつからこれやってたの?」
「え、ミカエルに教える傍らで、最初から最後まで」
ぐぐっ、と弟が歯噛みする。
「やっぱり……兄さんは、すごい。こんな高度な魔法陣を、この量を、全部書き換えるなんて……でも!」
まっすぐに俺を見て、ガイアスが高らかに言う。
「それでも、ボクはあんたの背中を、追いかけること、やめないからな!」
俺は、うれしかった。
弟は決して、勝つのは無理だとあきらめない。
対等になろうと、張り合ってくれる、この弟がいとおしいのだ。
「がんばれよ。応援してるぜ」
「ふん! ライバルに応援されても全然うれしくないんだからね!」
ガイアスは輝くような笑顔で、そういうのだった。
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