《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》75.それぞれが、勇者をしてき出す

転生勇者ユリウスが、実技テストのついでに、各國の軍隊を撃破した。

それから、10日後のこと。

マデューカス帝國。

謁見の間にて。

「ふむ……帝國、教會、王國。合計で1000いた兵士たちが、3発の極大魔法により戦意を喪失した……と」

「ええ、そのようですよ【父上】」

皇帝の前に跪くのは、皇帝の息子。

すなわち皇子だ。

「かの年の強さを測ると同時に、反分子2名を排除することに功する。すべてはあなたの筋書き通りですか、さすが父上だ」

皇帝と同じ髪のをした男は、尊敬のまなざしを、父親に向ける。

「【チェザーレ】よ。この年……ユリウスをどう見る?」

第2王子【チェザーレ】は、父である皇帝に言う。

「恐るべき武力をめた、この世の法則を完全に無視した、イレギュラーですね」

チェザーレは腕を組んで、神妙な顔つきで言う。

「そもそも極大魔法は、遙か昔に失われた究極の魔法。一撃で星を砕くこと容易いとまで言われ、平和な世では不要であると、賢者サリーが封印指定したはずです」

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「しかし極大魔法の使い手が現れた。サリーの関係者か」

「そう考えるのが妥當でしょうね、父上」

「ユリウス=フォン=カーライル……彼は一何者だ?」

「さぁ、そこまではわかりかねます」

気取ったポーズで、チェザーレが首を振る。

「それで、父上。彼はどうします? どこかの國王のように、無理矢理彼を我が國に引き込みますか?」

ふっ……と皇帝は笑って言う。

「そんなことはしない。前提條件が間違っている。彼は道ではない、人間だ。生きている以上意思がある。それを踏みにじって自分の手札に加えようとする。そして失敗する。馬鹿のすることだ」

「しかし遅かれ早かれ、いずれみなユリウスの存在に気づき、自國に引きれようとします。父上も彼をみすみす見逃すつもりはないのでしょう?」

「當たり前だ。彼は100年……否、2000年に一度の、逸材かもしれぬ」

「2000年……ですか。よもや父上は、彼が勇者神そのものだと言うのですか?」

まさか、と皇帝は首を振る。

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「だがしかし、かの勇者神に匹敵する強さを有しているのは事実。是が非でも彼は我が帝國に引きれたい」

「ではどうするおつもりですか?」

ふっ……と余裕のある笑みを浮かべて、皇帝が返す。

「幸運にも、ユリウスの懐には【不肖の家出娘】がいる。引きれる方法は幾通りも思いつく。焦らずともよい」

皇帝は深く椅子に腰掛けて、異國の地にいる娘ヘンリエッタ。

そして彼のそばに居る史上最強の男に向けて、つぶやく。

「ユリウス。貴様がしい。必ず、手にれてみせるぞ」

★☆★

一方その頃、天導教會本部では。

最高幹部4人が集まっていた。

「いったい聖騎士どもは何をやっているのだ!」

「神で武裝した聖騎士が、全員が戦う前に敵前逃亡だとッ!」

「なんたる失態! これでは聖騎士のブランドイメージが完全に、【悪魔を前に逃げ出した腰抜け】になってしまうではないか!」

幹部達はふがいない聖騎士達に、理不盡な怒りをぶつけていた。

「どうする……このままでは【上】がお怒りになるのは必定。いったいどうすれば……」

と、そのときだ。

「うん、その通りだよ」

幹部の頭の上に、スーツを著た【年】が、姿を現したのだ。

その背中には6枚の羽が生えている。

「て、天使様!!!」

「【ラファエル】様!」

ラファエルと呼ばれた年は、幹部の頭から降りて、機の上に著地する。

バッ……! と幹部達は膝をついて、天使の前に並ぶ。

「あれ? 頭が高いよ?」

パチンッ!

彼が指を鳴らすと、四人の最高幹部達のが……【なくなった】。

「なっ!?」

「ひぃいいいいいいいい! おれのがぁあああああああ!」

首だけになった幹部を、ラファエルは見下ろす。

「君らクビ。首だけに……ぷすすっ、なんちゃって! ほら笑えよ」

幹部達は、それどころではなかった。

を失い、今なお生きてることに困しきりである。

「笑えって言ってるだろ! 腹立つな!」

パチンッ!

ふたたびラファエルが指を鳴らすと、4つの首のうち3つが消えた。

「お助け! お助けおぉおおおおお!」

泣きさけぶ最後の幹部に、ラファエルはしゃがんで言う。

「君たちアホすぎて使えないって、【パパ】がもうカンカンだよ」

パパ、つまりこの大天使を創造せしめた人

すなわち……天上にいる神のことだ。

「これからは僕たち【七大天使】が聖騎士達を仕切るから。おまえは用済み」

「そ、そんな……! 待ってください! あなたがた天使と【主様】に必死になってわたくしは仕えました! それをあっさり切り捨てるおつもりですか!?」

「うん。だって君ら使えないし。ばいばい」

パチンッ! とラファエルが指を鳴らす。

最後の幹部も、いずこへと消え去った。

「さて……と。みんなっておいでよ」

幹部の座っていた席に、どかっと腰掛ける。

部屋には【6人】の大天使が集結した。

「さて、議題はわかってるね。パパの創ったこの世界の平和をす、【大悪魔ユリウス】の処遇について。みんな、意見は?」

6人全員が、【死刑】と主張した。

「だよね、僕もあいつは生きて居ちゃいけない存在だと思う。だからこの6人……いや、ここにはいない七人目も含めて、【七大天使】の力を結集し、あの悪魔を殺そうじゃないか」

ラファエルは、悪魔のような笑みを浮かべる。

「大悪魔ユリウス。君の首がしい。僕が、いただくよ」

★☆★

さて、最後に、王ヒストリアはというと……。

「くそ! くそ! 役立たずのゴミどもめ!」

ヒストリアは必死になって、大きなバッグにドレスや寶石を詰め込んでいた。

「あんなに數がいて全員がビビって逃げ出すとか、ほんっっと使えない屑ばっかりね!」

先日、ユリウス討伐のため、魅了の魔眼で衛兵達をった。

しかも運の良いことに、帝國軍や聖騎士たちも、ユリウスを殺すつもりだったらしい。

天は自分に味方した! と思っていたのだが、結果を聞いて愕然とした。

「もうだめ、わかった。あの男……ユリウスには一切関わっちゃいけないんだわ。あいつは……人間じゃない。正真正銘、化けよ」

聞けば、地上を焼き、星を貫き、さらには回復魔法でその全てを元通りにしたという。

魔眼で魅了されていた衛兵達は、ユリウスの使ったの極大魔法の治癒の力で、全員が正気を取り戻したらしい。

余談だが學園にいた、ヒストリアの魔眼によって魅了されていた男子生徒も、今回の極大魔法で元通りになったそうだ。

「お父様はユリウスにご執心だけど、アレはもう駄目。あいつに敵意を向けることが馬鹿なんだわ。もう逃げるのが一番ね」

寶石などの貴重品を、パンパンに詰め込んだ鞄のチャックを閉める。

「ふぅ……よし、あとは適當に衛兵を捕まえて魅了させ、荷持ちにして……城を出ましょう」

ヒストリアは、王という立場を諦めた。

「もうあの理外の化けにはうんざりよ! アタシはこの魔眼と財寶を持って、國外に逃亡するわ!」

にやり、とヒストリアは邪悪に笑う。

「この魔眼さえあれば、どんな男もアタシにメロメロになる。手始めに帝國にでも亡命して、イケメンで有名なチェザーレ皇子でも捕まえれば……」

ヒストリアは部屋に設えた鏡を見て嗤う。

その目は魅了の魔眼。

見た男を虜にする、特別な目。

と、彼が余裕でいられたのは、そこまでだった。

「え……? なに、これ……?」

鏡に映ったその姿を見て、ヒストリアは呆然とする。

「この【おばあちゃん】……だれ?」

今鏡に映っているのは、醜悪な姿の老婆だった。

「やだ……え、これ……アタシなの……?」

鏡に映る醜い姿の老婆は、ヒストリアが手を上げると、同じ手を上げる。

「ひっ……いやぁあああああ!!!」

半狂となって、ヒストリアがぶ。

鏡に両手をついて、何度も自分の顔をる。

「アタシの貌はどこにいったの!? いやっ、嫌ぁあああ! 返して! 返してよぉおおおおお!」

と、そのときだった。

「ウルサいわよ、貴

「だ、誰!?」

鏡の中から、黒い、蝙蝠のような羽を生やした、が現れた。

「わたくしは【フェレス】。【メフィスト・フェレス】」

「メフィスト……フェレス?」

は鏡の前に座り、足を組む。

「聞いたことないわ……」

「失禮しちゃうわね。【悪魔(わたくし)の目】を使っておいて」

フェレスは手をばし、ヒストリアの魔眼にれる。

「悪魔が何の用!?」

「もちろん回収よ。代償のね」

フェレスは邪悪に笑う。

「あなた、その魔眼が、よもや無制限に使い放題だとは思っていなかったわよね?」

「え……?」

「あらあら、お馬鹿さん。悪魔がただで、人間に力を貸すわけがないでしょう?」

クスクス、と哀れみの目を、フェレスが王に向ける。

「悪魔は魂を代価として、人間と契約をわし、力を授けるの」

魂のほぼ全てを取られた。

だから、魂が劣化し、がつられるように老婆になったのだという。

「返して! アタシの貌、返してよぉ!」

ヒストリアは悪魔の足にすがりついて、泣きぶ。

「だーめ。あなたは衛兵全員に対して魔眼を使いまくった。そのぶんの対価はちゃんともらわないと」

「いやよ! アタシの貌! アタシの魔眼! 誰にも渡さないわよぉおおおおお!」

その姿を見て、フェレスは笑う。

それこそ……悪魔のように。

「わたくしの言うことを聞いてくれるなら、考えてあげても良いわ」

「! 何でも言うことを聞くわ! 貌と魔眼が帰ってくるなら!」

にんまり……とフェレスは笑い、ぱちんと指を鳴らす。

するとヒストリアは、元の可憐なへと戻った。

「さて、返してあげたのだから、言うことをちゃんと聞いてよね」

「はぁ!? 嫌よ! 何で悪魔に従わないといけないのよ!」

「すがすがしいほど屑ね貴。嫌いじゃないわ、そういう子」

パチンッ、とまたフェレスが指を鳴らす。

するとみるみるうちに、ヒストリアは老婆の姿に戻った。

「いやぁああ! 戻してぇえええ!」

地べたにのたうち回るヒストリア。

その顔を、悪魔は容赦なく踏み潰す。

「どちらが上か理解した?」

ぐりっ、とフェレスはヒストリアの頭を強く踏み潰す。

「わかりました! 言うこと聞きます!」

「良い子ね。……さて、貴には、引き続き【ユリウス】に近づいて貰うわよ」

「ひっ……! な、なんでぇ?」

「だってあの子、とっても素敵なんですもの♡」

熱っぽい表を、悪魔が浮かべる。

「あの他者を圧倒する暴なる力……ああ! 思い出しただけで絶頂しちゃいそう!」

ヒストリアは頭を抱えたくなった。

こいつも、ユリウスに取り憑かれているのかと。

「貴はわたくしのお人形さんとなって、しの【大悪魔(ユリウス)】を手にれるお手伝いをしてもらうわよ」

ヒストリアは、取り返しのつかない選択をしてしまい、青白い顔になる。

「あぁ、ユリウス様。わたくしあなたがしい。しい、時代の悪魔王さま」

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