《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》79.勇者、幽霊屋敷を掃除する
冒険者登録を終えた俺たちは、合宿予定地へとやってきた。
「おお! あにうえ~、おっきなお屋敷ですー!」
俺たちがいるのは、カシクザキの街の端。
山の中にある、【洋館】だった。
「確かに立派だけど……こ、これちょっとお化け屋敷みたいじゃない?」
エリーゼが見上げる先にあるのは、なるほど、確かになかなか立派な洋館。
しかし庭先の草は荒れ放題。
館の壁には蔦やら葉っぱやらがびっしり張り付いている。
「趣あってええやろ?」
「おう、良いじだな」
「かっこいー!」
義弟は明るい表で答える。
「…………」
「どうした弟よ、暗い顔して?」
「へぇ!? べ、べべべべ別に!?」
いつもの不機嫌顔ではなかった。
思い詰めているような表だった。
「サクラちゃん、このお屋敷どうしたの? あ、レンタルかさすがに」
「んーん、買ったった♡ お小遣いで」
愕然とした表のエリーゼ。
「お前金持ちだな。さすがお姫様だ」
「ユリウスはんも公爵やから、お金持ちちゃうん?」
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「家はそうだろうけど、別に俺が持っている金じゃないしな」
お小遣いだってごく一般的な額しかもらっていない。
「で、でもなんで宿取るんじゃなくてお屋敷を買ったの?」
「おもろないやん。せっかくの合宿なんやで? 料理とか洗濯とか、みんなでやろうやぁ♡」
なるほど、宿を取ると全部サービスでやってもらえるからな。
「よし、じゃあ行くか」
「「「おー!」」」
みんなが荷を持って、屋敷の中へと向かっていく。
「弟よ、何ぼさっと突っ立ってるんだ? いくぞー」
「ま、待ってよ兄さん!」
ガイアスが青い顔をして、俺の腕にしがみついてきた。
「え、どうしたんだおまえ?」
「べ、別に! 置いて行かれたくなかったからだけど!」
「置いてかないって」
腕に弟をひっつけた狀態で、俺たちは屋敷の中へる。
「あははっ! 中もおんぼろ~。お化け屋敷みたいですー!」
「ひっ……!」
青い顔をして、弟が小さく悲鳴を上げる。
「へ、変なこと言うなよミカエル!」
「がいあすはどーしたです? ブルブル震えちゃって……あ、わかったです! 怖いんでしょ~?」
「ち、ちちちち、違う!」
今度は顔を真っ赤にして、ガイアスが義弟にぶ。
「じゃどーしてあにうえとずっと一緒です? 怖くて離れられないです?」
「え、そうなの?」
バシッ!
「違う!」
ふんっ! とガイアスはそっぽを向いて、俺から離れていう。
「ま、そんじゃサクッと部屋決めして、全員で分擔してお掃除な」
「「「はーい!」」」
部屋割りは男チームとチームに分かれることになった。
「わーい、あにうえと同じ部屋~」
創生魔法で出したベッドに、ミカエルが飛び乗って、ばうんばうんと飛び跳ねる。
「しかし弟よ、意外だった」
「なんだよ兄さん」
「いや、てっきり自分は一人で部屋使うからー、みたいに言うのかと思ってた」
ガイアスは単獨行しがちだからな。
「べ、別にいいだろ……?」
自分の荷を置いて、ガイアスがため息をつく。
「あにうえ、がいあす怖くて、一人じゃモガモガ……」
弟が義弟を後ろから羽い締めにしている。
「え、なんだって?」
「なんでもないよっ! さっさと著替えて掃除するんだろ!」
汚れても良いような服裝になり、俺たちはリビングルームへとやってきた。
「掃除道は適當に使ってくれ」
ドチャッ……!
「ナチュラルに魔法で掃除道作ってるわ。さすが旦那様やで~♡」
「うう~……でも、一人でお掃除こわいよぉ。何か出たらどうするのぉ~?」
ぶるぶる、とエリーゼが震えていう。
「そ、そうだよ! もし死霊系モンスターとか住み著いていたら、こいつらだけじゃ対処できないよ!」
弟がエリーゼに乗っかる形で言う。
「おう、そうだな。じゃ2-3に別れて掃除するか」
くわっ! とエリーゼ達が目を見開く。
「じゃあ俺と……」
「はいはいはーい! わたしユリウス君とがいい!」
「何言うてるん、うちもユリウスはんがええわ」
「もちろんあにうえとー!」
「ぼ、ボクも兄さんとがいい……」
結局じゃんけんすることになった。
「やったぁ♡ うちの勝ち~♡」
サクラが笑みを濃くして言う。
「あう~、またユリウス君と一緒になれなかったよぅ」
「エリちゃん大丈夫です。ぼくがいるです。なんかでたらやっつけるですっ」
「ありがと~ミカちゃん」
そんなわけで、俺はサクラとともに、窓の掃除から始める。
「そんじゃ、とっととやるか」
「ユリウスはん、雑巾つかわへんの?」
「おう、こうするからな」
俺は魔法で、水と風と火の球をそれぞれ生み出す。
3つの球を上手いこと調整し、俺は廊下めがけて放つ。
どぱぁああああああああん!
びょぉおおおおおお!
ごぉおおおおおお!
「あ、あっちゅーまに窓ぴっかぴかになってるやん……。なにしたん?」
「え、水で洗い流して、熱風で乾かしただけだけど?」
「完璧に窓ピッカピカになっとる。水も乾いてるし……見事な魔法のコントロールやな。さすが旦那様♡」
むぎゅーっとサクラが俺の腕に抱きついて言う。
「次はどないする?」
「そうだなぁ、とりあえず【浄化】するかな」
「へ? じょうか?」
俺は右手を挙げて魔法を発する。
「【ターン・アンデッド】」
カッ……!
手からまばゆいが発せられる。
【【【うぎゃぁあああああああ!!】】】
屋敷に居著いていたらしい、死霊系モンスター達のび聲が、どこからか聞こえる。
は一瞬で収まる。
「もうっ、びっくりしたわぁ。やるならやるって言うてや」
「すまんすまん。これで大半は片付いたと思うわ。あとは殘りを片付けるな」
俺たちは廊下を渡る。
「殘りって……ユリウスはん、その言い方やと他にもモンスター居るような口ぶりやな?」
そのときだった。
廊下に鎧の置があった。
突如としてき出し、サクラめがけて、持っていた剣を振り下ろす。
ブンッ!
パシッ!
「ひっ……!」
俺は振り下ろされた剣を、人差し指の先でけ止める。
「ケガないか?」
こくこくとへたり込んだサクラがうなずく。
「俺の友達、何いじめてるんだよ」
け止めている剣を、俺は指で弾く。
バリィイイイイイイイイイン!
「こ、鋼鉄の鎧が、跡形もなく々になったわ……い、いったいなにが?」
「え、別にただ指で弾いただけだぞ?」
さきほどのは【く鎧(リビング・アーマー)】というモンスターの一種だ。
その後も、俺は殘っていたモンスターをひたすら掃除しまくった。
パリィイイイイイイイイン!
ぼしゅぅううううう!
ズバンッ……!
「めっちゃ強そうなモンスターいっぱいおったのに、サクサク倒してくなぁ。さっすがユリウスはんやで~♡」
うっとりとした表で、彼が俺を見上げる。
「しかしやたらモンスター多いな」
「昔吸鬼が住んでたお屋敷らしいからな。その配下がうろついてるんちゃう?」
「ふーん、吸鬼ねぇ」
俺とサクラは、魔法を駆使して部屋を綺麗に掃除していく。
道中、俺たちはガイアスチームとすれ違った。
「ほらミカエル! サボるんじゃない!」
「えー、めんどいです~」
ベッドの上で寢そべるミカエルを、ガイアスが注意する。
ぱりーん!
「きゃっ、ごめん……お皿落としちゃった……」
「ああもう、どいて。ボクが拾うから。あっちでミカエルのやつとシーツ変えてて」
エリーゼの落とした食の破片を、ガイアスが拾い集める。
「う、うん……ありがとう」
「……別に。ケガしてない?」
「ううん、大丈夫……痛っ」
「あーもう、手貸しなよ。鈍くさいな……」
弟はエリーゼの手を取り、治癒の魔法をかける。
その様子を、俺たちは遠巻きに見ていた。
「いいぞガイアス。その調子で頑張るんだっ!」
「ユリウスはん、弟さん思いやなぁ」
くすくす、とサクラが笑う。
「そんなとこもうち、大好きやで♡」
俺たちはその場を離れ、今度は地下室へと向かう。
石造りの部屋は、ひんやりとしてて気持ちが良い。
「ただちょっとかび臭いなぁ」
【ぬははは! よくぞ來たな下等生! この我の屋敷に土足で踏みってただですむと】
「【浄化(ピュリフィケーション)】」
【これは浄化の魔法……ぬわぁああああああああ!!!】
ぼしゅぅううう……!
魔法により、消毒殺菌が完了。
「ゆ、ユリウスはん……今のって?」
「え、消毒しただけだぞ?」
「いやいやいや吸鬼! おったやん今! なんかめっちゃ強そうなヤツが!」
「そんなのいたか?」
ぽかんとした表のあと、サクラが苦笑する。
「あんたの差しじゃ、吸鬼程度じゃ小過ぎて計れんのやな。ほんま、さすがやで♡」
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