《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》86.邪神、復讐に魚人の大群を放つが失敗

転生勇者ユリウスが、古代獣(ヴェスティア)を撃破した、翌朝。

海上に、1柱の邪神がいた。

邪神アクアエレメント。

水の古代獣に憑依していた、黒幕だ。

『くそっ! あの忌々しい【暴の黒悪魔】め! よくも我ら【六邪神將】の邪魔をしやがって!』

ギリ……! と歯がみする。

アクアを含めた、6柱の邪神たち。

彼等は魔王ヴェノムザードに近しい力を持った存在だった。

勇者神なき世で、彼等は古代獣に憑依し、魔王に変わって世界の破壊を企んでいた。

『忌々しい守護神達に邪魔され2000年。封印が弱まり、ついに我らが打って出ようとした矢先! あの黒い悪魔め!』

ふらっと現れて、ユリウスに古代獣を消された。

バックアップを取っていなかったら、今頃自分も消えていただろう。

念話により、各地にいる六邪神將たちから、今世界に規格外の化けがいることは承知していた。

だがまさか、古代獣をまるごと消し飛ばす存在がいるとは。

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『正攻法ではダメだ。からめ手を使う。出でよ、我が眷屬達よ!』

パンッ! と柏手を打つ。

すると海上に、無數の魚卵が出現する。

それは孵化すると、數え切れないほどの魚人へと、急長した。

よく見ると、それは正確には魚人(サハギン)とは違うことに気付くだろう。

『S級モンスター魚人王(サハギン・ロード)。A級モンスター魚人將軍(サハギン・ジェネラル)。この無數のモンスターが、今から海辺の街を襲う!』

邪悪に笑う先には、人間達の街があった。

『あの黒悪魔が人魚(セイレーン)の街で滯在している間、隙を突いて人間の街を占拠。よもやこんなにも早く次のアクションを起こすとは思わぬだろう……街の人の命と引き換えに黒悪魔を殺す算段よ……ふっ、完璧な作戦ではないか』

その間にも魚人王、そして魚人將軍は生まれ続ける。

アクアが存在する限り、無限に魚人の大群を作り出す。

六邪神將の恐るべき権能【水軍(カンパニー)】だ。

『では、魚人ども。躙を開始せよ!』

海を埋め盡くすほどの魚人達が、いっせいに陸地めがけてき出す。

鳥のように見下ろせば、青銀の津波が押し寄せるようだ。

『ははー! 恐れおののけ人間どもぉおおおおおお!』

と、そのときだった。

「おー! がいあす、間に合ったですー!」

6枚の翼を生やした天使が、頭上に突如現れたのだ。

天使の隣には、不機嫌そうな顔の金髪の年が宙に浮いている。

『天使と人間が、この六邪神將の我にかなうわけがない! 殺せ、魚人どもぉお!』

魚人將軍たちは、持っていた長槍を、いっせいに金髪の年めがけて放つ。

「ぼくがやるです?」

「いや、ミカは下がってろ」

「かっこつけてあにうえに褒めてもらいたいんでしょー」

「ちがう! 斷じて!」

なごやかな會話をしている間にも、槍が豪雨の如く彼等に降り注ぐ。

『愚かな人間め! 下等生が邪神に楯突くからこうなるのだぁあああ!』

ガイアスは、手に持った雙剣を、勢い良く振り下ろす。

パリィイイイイイイイイイイイン!

不思議な音とともに、槍が全て……はじき返されたのだ。

『なっ!? ぱ、攻撃反(パリィ)だとぉおおおお!?』

攻撃反。それは剣の奧義の一つ。

あらゆる攻撃をはじき返すという妙技。

『そんな! あの數を一度に返すなんて! あり得ない!』

弾かれた槍は正確に、魚人たちの心臓を貫いていく。

「グギャッ!」「ぎゃぴっ!」「ぎゃぎーーーーーーーー!」

あっという間に、魚人將軍がバタバタ倒れていく。

『し、信じられない……なんだ! やつは暴の黒悪魔なのか!?』

「人違いだよ。……まあ、誰のこと言ってるのかはわかるけどね」

呆れたように、ガイアスがため息をつく。

「がいあすばっかり目立ってずるいです! ぼくやるでーす!」

天使ミカエルは、バッ……と手をばす。

収納の魔法陣が展開し、そこから……巨大な【砲(キャノン)】が出現した。

「あにうえにつくってもらった、ぼくオリジナルの魔法道(マジックアイテム)! ついに試すときがきたです!」

新しいオモチャを買ってもらった子供のように、ミカエルははしゃぐ。

「ミカ、わかってるな?」

「もっちろん! 跡形も殘らず……ぶっ飛ばす!」

「いや違うって! 加減しろって意味なのに! ああもうばかっ!」

ミカエルの構えた巨大な砲(キャノン)は、照準を魚人の群れにセットする。

『ふ、ふんっ! やってみろ! いくら強力な攻撃だろうと、わが魚人軍の圧倒的量の前では無力だ!』

「負けフラグ乙です。では……ロックオン!」

ミカエルはまず、砲(キャノン)についてる、一つ目のトリガーを引く。

すると、海上に超巨大な魔法陣が展開した。

『な、なんだこの海洋をひとつ飲み込むようなでかさの魔法陣は!?』

「1つめのトリガーで照準。で、2つめのトリガーで攻撃。うん、よーし、いくぞー!」

構える砲(キャノン)の銃口に、凄まじいエネルギーが集注していく。

それは天使の放つ、高エネルギーレーザー【天の矛】と同じ。

しかし威力が、何百、何千倍にも増幅されていく。

きぃいいいいいいいいいいん……!

「じゃ景気よく~……どーん!」

らしいかけ聲とは裏腹に、放たれるのは、超高エネルギーの破壊のだ。

海上に、同じ魔法陣が浮かび上がる。

遙か上空から、超強力なレーザーが照されたのだ。

ズッドオオオオオオオオオオンン!

範囲にあったもの全てを消し飛ばす。

魚人はもちろん、大海を、一瞬で蒸発させた。

『…………』

大海原が、一瞬で砂漠に変わる。

その変貌っぷりに、邪神アクアエレメントは驚愕の表を浮かべる。

『あ、悪魔だ……悪魔だぁあああ!』

怯えた目が捕らえるのは、たった今圧倒的な力を見せつけた2人だ。

『【金の悪魔】に【天使の悪魔】だ! いかん! 暴の黒悪魔とあわせ、この世には3大悪魔がいる! 同胞よ! 注意せよ!』

他の六邪神將たちに、念話を送る。

こうすればいずれ誰かが、あの化けどもを倒してくれるだろう。

「あはは! がいあす【金の悪魔】だって~。変なあだ名です~」

「いや【天使の悪魔】のほうがおかしいだろ……てゆーか! 威力を加減しろって兄さんに怒られただろ! このアホっ!」

ガイアスはミカエルの背後に回ると、ほっぺをぐにーっと引っ張る。

「痛い~! あにうえ~! がいあすがいじめるです~!」

と、そのときだった。

ポンッ、と。

邪神は、誰かに背後から肩を、叩かれた。

「よっ」

『ひぎゃぁあああああああああああ! く、黒悪魔ぁああああああああああ!』

泣きべそをかき、恐怖するその姿は、とても邪神とは思えなかった。

それもそのはずだ。

この黒悪魔の強さは、誰よりも自分が知っている。

卑怯な作戦をとったのは、この絶対的強者に勝てぬとわかっていたからだ。

「あにうえおっそーい!」

「すまんすまん、エリーゼ達を街に送り屆けていたら遅れたわ。さて……と」

ぎゅっ、とユリウスが邪神の肩を摑む。

『やだやだやだやだ助けてお願い死にたくない助けて助け……』

「そい」

ユリウスは、軽く邪神の頭を毆る。

その瞬間……。

ズッドォオオオオオオオオオオオオオン!

ミカエルの放った砲撃よりも強力な一撃。

それは海を、ぐるりと一周、縦に割ったのだ。

それだけに留まらない。

衝撃波は拡散し、この星の海水全てを、消し飛ばしたのだ。

「あ、やべ」

當然の如く、邪神は消滅。

海はなくなり、砂漠の星となったのも剎那。

ポンッ……!

ユリウスの【創生魔法】により、海水が創生され、先ほどまでと何ら変わらない水の星へと戻ったのだ。

「あははっ! あにうえマジすげー! 邪神みたーい!」

「おい! ミカ! 兄さんに酷いこと言うな! 怒るぞ!」

「あははっ! ごめんなさーい!」

かくして、六邪神將の一角は、規格外の化け【たち】によって討伐されたのだった。

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