《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》93.勇者、弟のために剣を作る
翌日。
俺は【素材】を集めて、いったん自宅に戻ってくる。
「あーにーうーえー!」
俺の部屋のベッドで寢転んでいた、義弟のミカエルが、俺に近づき抱きついてくる。
「もー! どこいってたです? さみしかったです!」
すりすり、と頬ずりするミカエルの頭を、俺はなでる。
「ちょっと必要なものをんなとこから集めてきてさ」
「ひつようなものー? なにのです?」
「ガイアスに作ってあげる剣の素材だよ」
ミカエルは、ぶくーっと頬を膨らませる。
「ずるいです! がいあすばっか大事です!」
「そんなことないよ。お前も大事だって」
「ならいいです♡」
そのときだった。
「兄さん、帰ったの? 朝早くから出かけたけど…………」
俺の部屋に、弟ガイアスがってくる。
「おう、ただいま」
ガイアスが俺に近づいてきて、ミカエルをベリッと引き剝がす。
「おまえは! どうしていっつも兄さんにくっつくんだよ!」
ぐにぐにと義弟の頬を引っ張る。
「がいあす嫉妬は醜いです。自分もあにうえに抱きつきたいなら、ペタペタすればいいです?」
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「そ、そんなこと1ミリたりとも思ってないよ! ばかっ!」
ぺんっ、とガイアスが義弟の頭をたたく。
「良いところに來た。ちょっと付き合ってくれないか?」
「いいけど……どこいくの?」
俺はガイアスの肩に手を乗せる。
「ちょっとデート」
「で、ででででデート!?」
顔を真っ赤にして、揺しまくる。
「ミカ、おとなしく留守番してるんだぞ」
「わかったです。ぼくは空気が読める弟です。あにうえとのランデブーを楽しむが良いです、がいあす」
義弟に手を振って、俺たちは【とある場所】へと転移する。
「寒っ……! なにこれ……夏なのに……吹雪いてる?」
ガイアスがをさする。
俺は亜空間から冬用のマントを取り出し、弟にかける。
「ありがとう兄さん。……ここどこ?」
「ここは【ドワーフの里】だ」
「ドワーフ? ……あの、手先が用で有名な?」
目の前に広がるのは、氷雪に包まれた、深い山間の里だ。
鋼鉄の外壁に包まれており、里の奧からカーン! カーン! と金屬が打ち付け合う音がする。
「すごいよ兄さん……ドワーフの隠れ里は決して見つからないって有名なんだ。どうしてこんなとこ知ってるんだよ」
「前世のときにちょっとな」
俺は弟を連れて、外壁に近づく。
『そこのお前! 止まれぇ!』
外壁の上に取り付けられた、拡聲から、怒鳴り聲がする。
『人間の立ちりを許可しておらぬ! 早々に立ち去れ! でなければ蜂の巣にしてやるぞ!』
外壁のあちこちに、機関銃が取り付けられている。
無數の銃口が俺たちに向けられていた。
「怪しいものじゃない。俺は【ガンドール】のじいさんに會いに行きたんだ」
「ガンドール?」
『なにぃ!? どうして【最長老】の名前を知っている! この2000年一歩も里の外に出たことがないというのに!?』
あいつっからの引きこもりだからなぁ。
『怪しいヤツだ! 撃ち殺せぇ!』
銃口から、激しい火花が散る。
ドガガガガガガガガガガガッ!
豪雨のごとき弾丸が、俺に向かって発される。
一斉掃を直撃しても、俺はケロッとしていた。
『む、無傷だとぉおおおお!?』
『ばかな!? この銃弾には貫通力を高めるルーンが刻まれているはず!』
『神竜すらも撃ち殺す銃弾をけて、なぜ無事なのだ!?』
ドワーフたちの揺が聲から伝わってくる。
「兄さん、なんで防なり弾くなりしなかったの?」
「敵意がないってことを示さないと駄目だろ? 反撃したら余計な爭いを産むだけだ」
ややあって。
固く閉ざされていた外壁の出り口が……開いた。
出てきたのは、年老いたドワーフだ。
その周囲には、護衛らしき、武裝したドワーフたちがいる。
老いたドワーフの、ガンドールが俺に近づいてくる。
「長老! いけません!」
「こいつは銃弾の雨を喰らっても平然としていた化けですよ!?」
気にせず彼はやってきて、ニッと笑う。
「久しいな、親友!」
バシッ! と俺たちは握手する。
「気難しいで有名な最長老さまが! あんなにも親しげに接するなんて!」
「すげえ! いったい、なんなんだあの黒髪の年は!?」
俺たちは再會のハグをする。
「よく俺だって気づいたな、ガンドール?」
「ハッ! このわしを誰と心得る。數多の武を作り出した最高の鍛冶職人じゃぞ? ものの真価を見抜く目には自信があるわい!」
ガンドールは深々とうなずく。
「その隠しきれぬ圧倒的な強者のオーラを出す人間なんぞ、勇者ユージーンを置いて、他におるまいよ」
こんなじで、あっさりと目的の人に合うことができた。
ややあって。
俺たちはガンドールの屋敷へと案された。
応接室にて。
「それでユージーン。わしに何用じゃ?」
「武を作りたい。作業場を貸してしいんだ」
「武? おぬしには聖剣があるであろう?」
「俺のじゃないよ。弟のだ」
ソファに座るガイアスの、頭をなでる。
バシッ、と弟が手を払う。
「なんとユージーン。おぬし弟がいたのか?」
「違う違う。転生先の弟。今俺はユリウス=フォン=カーライルっていうんだ」
じっ……とガンドールがガイアスを見やる。
「なるほど……ユージーンに劣らぬ、素晴らしい剣士だな。雙剣使いじゃな?」
「ど、どうも……えっと、なんでわかるの?」
ガイアスがおどおどしながら言う。
「おまえ何びびってるの?」
「ガンドールって言えば伝説の武職人じゃないか! 張して當然だろ!?」
そんなものだろうか?
「わしは目が良いからな。筋の付き方や手の【たこ】などでわかるんじゃよ。して、こやつの雙剣、作るとなると、素材はどうする?」
「もう素材は取ってきたよ」
俺は亜空間に収納していたアイテムを、ドサッ! と目の前に出す。
「なんと! 【世界樹の枝】に【灼竜帝の火玉】! 【永久凍土の氷】! どれも手困難な素材ばかりではないか!?」
ガンドールが目をむいてぶ。
「他にも最高の剣の素材がそろっておる! おぬし、どれほどの時間をかけて集めてきたのじゃ?」
「え、晝飯前にちょろっと」
愕然とした表で、ガンドールも、ガイアスも俺を見やる。
「いや……久しぶりじゃが、うむ。思い出したよ。おぬしがどれほど規格外な存在かをな。さすがは勇者じゃな!」
それはさておき。
俺たちは作業場へとやってきた。
剣を作るための道が全部そろっている。
「そんじゃちょっと時間くれな、パパッと作るからな」
「え、ガンドールさんが作ってくれるんじゃないの?」
ガンドールは苦笑していう。
「ユリウスは、わしなんかよりもよっぽど腕の立つ職人じゃよ」
「ええ!? で、伝説の武職人である……ガンドールさんよりもすごいんですか!?」
「おうとも。もとはヤツはわしの弟子じゃったのだが、すぐに追い抜いてしまってな」
ガイアスは目を丸くして、ため息をつく。
「兄さんって……本當に何でもできるんだね。逆に何ができないの?」
「なんだろうな? わからん。……ま、いいや。すぐ作るからさ。ちょっと待ってな。ガンドール、作業著借りるぞ」
「おうよ。ここにあるものは全部好きに使うがよい」
ふたりが作業場から出て行く。
俺は集めた素材を使って、弟のことを思いながら、剣を作る。
かーん!
かーん!
かーん!
ややあって。
「できたぞー」
「早くない!?」
応接室へと戻ると、ガイアスが驚いた表で言う。
「よく知らないけど、武って長い時間かけて作るものなんじゃないの? まだ作業場って5分も経ってないよ?」
「え、空間魔法で、作業場の1分を10日に変えただけだぞ?」
「もうなんでもありか!」
「うむ、さすがじゃユリウスよ。どれ、作った雙剣、さっそく見せてはくれぬか?」
わくわくした表で、ガンドールが俺に近づいてくる。
鞘にった2本の剣を、俺は渡す。
「こ、これは!? なんと……! なんと見事な剣じゃあああああああああ!」
刀を見てないというのに、ガンドールがその場で腰を抜かす。
「おぬし……この2000年まったく剣を打ってないというのに、前世のときよりも腕が上達してるとは!」
「まあ、弟のためにを込めて作ったからな」
「ば、ばかっ! 人前で変なこと言うなよ! もうっ!」
ガンドールは恐る恐る、剣をガイアスに手渡す。
「ガイアスよ。この剣は……とてつもない一品じゃ。斷言しよう。この世に並ぶもののない雙剣じゃ」
「そんなに……すごいの?」
「名付けるならば……そう、【無雙剣】じゃろう!」
「無雙剣……」
ガイアスが、ゆっくりと、剣を引き抜く。
紅玉の剣と、蒼玉の剣。
「綺麗……」
「そのにめた莫大な力、じ取れるじゃろう?」
赤い刀は、常に炎が寫っている。まるで燃え続けているようだ。
青い刀は、常に冷気を纏っている。
「兄さん……こんなに素晴らしい剣、ボクのために作ってくれて……ありがとう!」
剣をに抱いたガイアスが、笑顔で言う。
「おう、どういたしましてだ」
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【本編完結済】 2022年4月5日 ぶんか社BKブックスより書籍第1巻が発売になりました。続けて第2巻も9月5日に発売予定です。 また、コミカライズ企畫も進行中。 これもひとえに皆様の応援のおかげです。本當にありがとうございました。 低身長金髪ロリ魔女が暴れまくる成り上がりの物語。 元チート級魔女の生き殘りを賭けた戦いの記録。 212歳の最強魔女アニエスは、魔王討伐の最終決戦で深手を負って死にかける。 仲間を逃がすために自ら犠牲になったアニエスは転生魔法によって生き返りを図るが、なぜか転生先は三歳の幼女だった!? これまで魔法と王國のためだけに己の人生を捧げて來た、元最強魔女が歩む第二の人生とは。 見た目は幼女、中身は212歳。 ロリババアな魔女をめぐる様々な出來事と策略、陰謀、そして周囲の人間たちの思惑を描いていきます。 第一部「幼女期編」完結しました。 150話までお付き合いいただき、ありがとうございました。 第二部「少女期編」始まりました。 低身長童顔ロリ細身巨乳金髪ドリル縦ロールにクラスチェンジした、老害リタの橫暴ぶりを引き続きお楽しみください。 2021年9月28日 特集ページ「今日の一冊」に掲載されました。 書籍化&コミカライズ決まりました。 これもひとえに皆様の応援のおかげです。ありがとうございました。 2022年2月17日 書籍化に伴いまして、タイトルを変更しました。 舊タイトルは「ロリババアと愉快な仲間たち ――転生したら幼女だった!? 老害ロリ魔女無雙で生き殘る!! ぬぉー!!」です。 2022年2月23日 本編完結しました。 長らくのお付き合いに感謝いたします。ありがとうございました。 900萬PVありがとうございました。こうして書き続けられるのも、読者の皆様のおかげです。 この作品は「カクヨム」「ハーメルン」にも投稿しています。 ※本作品は「黒井ちくわ」の著作物であり、無斷転載、複製、改変等は禁止します。
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