《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》94.勇者、神の剣を作り出してしまう
ドワーフの隠れ里にて。
俺は長老ガンドールの家で、弟のために剣を作った。
話は數十分後。
里の外にて。
俺とガイアス、そしてドワーフのガンドールが揃っている。
「さっそく能を試させてもらうよ、兄さん」
弟のガイアスが、ウキウキしながら言う。
腰には2本の剣がさしてある。
「おう。ただその前に、名前付けてあげないとな」
「名前? なんの?」
「その雙剣の名前だよ」
「無雙剣でしょ?」
「それはガンドールが付けた通稱だろ? こいつはおまえの相棒になるんだから、おまえがかっこいいやつつけてやらないとな」
俺の言葉に、しかし、ガイアスは理解できていないようだ。
「そんなことに何の意味があるの? 剣は道だろ?」
「道でも、これから命を預ける相棒なんだからさ。大事にする意味でも名前いるだろ?」
「そんなのいらないよ。使えればそれでいいんだから。……さて、いくよ!」
ガイアスは、雙剣の柄を握る。
そして一気に、引き抜いた。
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シャラン……!
「すごい! やっぱり兄さんの剣は最高だ! みて、こんなに軽い……」
と、そのときだった。
ズシッ!
「なっ!? きゅ、急に重く……」
ガイアスが額に汗をかく。
両腕の筋が盛り上がる。
「な、んでこんな重くなって……持て……ない。ぐあああああ!」
ずしぃいいいいいいん……!
2本の剣は、地面に深く突き刺さった。
「ぜぇ……! はぁ……! お、おかしいで腕力を強化しても、重くて持てなかった……いったい、どうして?」
そのときだった。
『當たり前だ、この無禮者が』
「だ、だれだ!? 敵か!?」
『この私を敵と見間違うとは。まったく、愚かなる使い手ですね』
周囲を見渡すガイアス。
俺は雙剣に近づいていう。
「弟よ、落ちつけ。しゃべってるのはこの雙剣だ」
『さすがはわが作り手。慧眼でいらっしゃる』
脳に直接、男の聲が響く。
ガイアスは目を丸くして言う。
「うそ……剣が、どうしてしゃべるの?」
「それは當然じゃな」
俺の隣で一部始終を見ていた、ガンドールが、深々とうなずく。
「古來より、には意思が宿るという。最強の鍛冶師であるユリウスが真心こめて打った剣じゃ。自我を持つのは至極當然と言えよう。見事な腕前じゃ、ユリウスよ」
武職人の言葉を聞いて、ガイアスはいちおう、納得したようだ。
「道がしゃべるようになるなんて、知らなかった……」
『己の無知を即座に認める、その姿勢は評価してあげましょう。しかしその後も私への謝罪が無いことに憾の意を唱えます。謝りなさい』
「なっ!? 道のくせに偉そうに!」
『道ではありません。私は譽れ高き創造主ユリウスさまが生み出した無雙の剣。相応の敬意を払ってもらわねば困ります。ひざまずきなさい、雑魚よ』
「むかつく剣だな! 誰に似たんだよ!」
ややあって。
「まあまあガイアス。それにおまえも、そんな腹を立ててもしょうがないだろ」
ガイアスが憎々しげにつぶやく。
「兄さんに最高の剣を作ってもらったけど、こいつ格最悪で気にらないよ」
『創造主ユリウスさまには申し訳がありませんが、私はこの雑魚を使い手と認められません』
うーん、どうやらふたりとも、お互いが気にらないらしい。
『創造主よ。我があるじとなってはいただけないでしょうか? このものでは私を使えこなせませんゆえ』
「なにぃ!? ふざけんな! お前程度かんたんに使いこなせるよ!」
『大した自信ですね。では言葉でなく行で証明してもらいましょう。私を引き抜きなさい』
ガイアスはうなずいて、雙剣の柄を握る。
「ふんっ! ふんぅうううううううう!」
いくら全力を込めても、雙剣はびくともしない。
「無駄じゃ。ガイアス。今のお主では、一生かかっても引き抜けぬよ」
「なんでだよ! ふぐぅううううう!」
ガンドールはため息とともにいう。
「おぬし、人が武を選ぶと思っておるじゃろう?」
「當、然! 武は道だ! 使う人がいなければ始まらない! そうだろ!?」
「やれやれ、ユリウスよ。おぬしという傑の弟だというのに、ガイアスはまだまだ未じゃのう」
「その分、びしろがあるんだよ」
俺はガイアスに近づく。
タオルを創生し、手渡す。
「ちょっと休憩しな。汗を拭け。風邪ひくぜ?」
里の外は猛吹雪に包まれている。
ガイアスはおとなしくけ取って、汗をぬぐった。
「なぁ、ちょいと試し切りさせてくれないか?」
『もちろんでございます、わが創造主よ』
俺は無雙剣の許可を得てから、れる。
シャランっ!
「うそだ……びくともしなかった雙剣が、こんなにあっさりと抜けるなんて……」
両手には、紅玉(ルビー)の剣と、蒼玉(サファイア)の剣。
「人な剣だ。強さも申し分ない」
『もったいなきお言葉です。創造主よ。さぁ、存分に振るってください』
俺は雙剣を構えて、軽く素振りする。
赤い剣を振れば、炎の嵐が発生した。
ゴォオオオオオオオオオオオ!!!!
この吹雪に負けることなく、周囲の雪を、天を焼く。
青い剣を振れば、全てが凍り付いた。
業火は時間を止められたように、氷づいている。
きれいな氷の柱となって、天にびていた。
俺はその後もその場で剣舞をする。
突けば炎の竜が舞い、切り下せば地面が永久の凍土と化す。
氷雪に包まれたこの里は、何度も夏と冬を繰り返す。
炎が天をやいて雪雲を散らせ、氷はまた周囲に吹雪を発生させる。
ややあって。
「うっし、こんなもんだろ。付き合ってくれてサンキューな。良い剣だったぜ」
『過分なる評価、栄の至りでございます。さすがは創造主、見事私を使いこなせておりました』
俺は雙剣を鞘に納める。
「「…………」」
ガンドールと弟は、その場にもちをついて、呆然とした表をしていた。
「え、どうしたふたりとも?」
「いや……兄さんの剣舞が、すごすぎてさ……」
「軽く振るだけで天候をる剣か。無雙剣の名にふさわしい一品じゃ!」
「え、何言ってるんだ? こんなの、こいつにめた力の、一部に過ぎないじゃないか」
「「えっ!?」」
驚愕するふたりをよそに、無雙剣に言う。
「こいつは使い手と共に進化する力を持ってるよ。ガイアス、おまえにぴったりの剣だ」
「な、なんでそんなこと……わかるの?」
「え、武を持てば、その武が持つポテンシャルが見えるだろ?」
「見えないよ!」
憤慨するガイアスをよそに、ガンドールが神妙な顔つきで言う。
「一流の武職人ならば、完した武のめたる能を知ることは可能。常識じゃな。さすがはユリウス」
「そ、そうなの……? そういうものなの? なんかもうわからないよ……常識ってなんなの?」
一方で、無雙剣は弾んだ聲で言う。
『わが創造主よ。可能ならば私に名をいただけないでしょうか?』
「え、持ち主はガイアスだろ?」
『あなた様にぜひ、付けてほしいのです』
「……別にいいよ。兄さんが付けて。ボクはその方がいい」
弟に任されたので、俺はしばし考えて言う。
「じゃあ、【セイバー】。おまえは【無雙剣セイバー】だ」
そのときだった。
カッ……!
無雙剣が突如、神々しいを発したのだ。
そのはやがて、人の形へとなる。
ややあって。
「信じられない……剣が、人間になるなんて……」
そこにいたのは、無雙剣セイバーだ。
彼は長の男子になっていた。
執事服を著ている。
長めの髪はアメジストをしていた。
左右の瞳は、赤と青のオッドアイ。
「な、なんということじゃ! 剣が、神格を得たじゃとぉおお!?」
ガンドールはびっくり仰天して、再度腰を抜かす。
「ど、どういうことなの……?」
「ユリウスと言う上位存在が名前を付けたことで、剣がその存在を進化させたのじゃ。今の無雙剣は、神の気が宿っておる。つまり、こやつは……剣の神じゃ」
弟は目をむいてぶ。
「か、神を作り出すなんて! なんだよそれチートだ! チートすぎるよ!」
なんか名前付けただけで、大げさに驚いてるなみんな。
「わが創造主よ」
セイバーは俺の前にひざまずいて、俺の手を取る。
そして、俺の手の甲に、キスをした。
「わが忠誠、あなた様にささげます。この、この魂は、貴方のものです」
「ふざっけんなぁああああああああ!」
切れたガイアスが、セイバーを蹴りつけようとする。
しかしセイバーはひらりとそれをかわし、すました顔で言う。
「無禮なお人ですね。ユリウスさまの弟でなければ切り殺しておりましたよ?」
「うるさい! 勝手にボクの兄さんにキスするな! 剣のくせに! 道の分際で!」
「まったく、本當にあなたはおろかですね。教育が必要でしょうか?」
「上等だ! かかってこい!」
セイバーとガイアスが、俺たちをよそに、バトルを始める。
「うんうん、仲が良くっていいことだ」
「「よくない!」」
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